プログラミングのコードを書く作業をAIに任せる「バイブコーディング」。バイブコーディングがいかに革新的で重要なのか、どうすれば効果的に実施できるのか(個人はもとよりチームや会社全体でも)を実践者たちのベストプラクティスに基づいて指南する書籍『 バイブコーディング 』(日経BP)の読みどころを、起業家出身のベンチャーキャピタリスト福山太郎氏が読み解きます。

 シリコンバレーでスタートアップを見ていると、技術革新が広がる瞬間には独特の空気がある。インターネット、クラウド、モバイルの時もそうだった。そして今、その空気を最も強く感じる場所の一つがソフトウェア開発の現場だ。

 『バイブコーディング』は、その変化を単なる効率化として扱わない。著者たちが描いているのは、コードを書く行為そのものより、「誰が何を作れるか」が変わる世界だ。

 本書を読んでいて共感したのは、変化の本質は生産性ではなく挑戦可能性の拡大だという視点だった。作れなかったものが作れるようになる。専門家同士の調整コストが減る。試行回数が増える。その結果、個人も企業も戦略そのものが変わる。

 ただし、本書は楽観論では終わらない。AIは優秀な部下でもあり、危険な部下でもある。だからこそ、人間側には判断、設計、優先順位付けといった仕事が残る。

 この本は、開発者のための本というより、AI時代に競争するすべての人のための本だと思う。技術そのものより、その技術によって人間の役割がどう変わるかに興味がある人ほど楽しめるだろう。

<評者> 福山太郎(ふくやま・たろう)
2012年、Y Combinator初の日本人起業家として採択され、米国にて福利厚生SaaSのFondを創業。2023年に欧州のEdenred社へ売却。2024年、日米スタートアップに投資するRice Capitalを創業。現在はAI領域を中心に投資を行い、累計投資先は200社。カリフォルニア在住。