前回 「【マンガ】メディチ家による国際為替・決済システムの構築」 では、メディチ家による国際的な為替・決済システムの構築について解説しました。その約500年後の19世紀末、アメリカン・エキスプレスが「トラベラーズ・チェック」を発明し、為替決済の顧客を個人旅行客にまで広げました。その業績を『 マンガ ビジネスモデル全史〔新装合本版〕 』(三谷宏治・著/星井博文・シナリオ/飛高翔・画)から抜粋してお届けします。
アメックス社長、旅先で散々な目にあう
500年後の19世紀末、前回紹介したメディチ家による国際的な為替・決済システムは、トーマス・クック、そしてアメリカン・エキスプレス(アメックス)によって初めて、個人にまで広げられました。「トラベラーズ・チェック」の発明です。
それまでも個人が使える小切手はありましたが、旅行先では非常に不便なものでした。当時のアメックスの社長ですら、旅先でひどい目にあったほどです。彼は休暇のためにヨーロッパに滞在しましたが、なんとアメリカの大手銀行が発行した小切手が店先では使えないのです。では現地通貨を入手しようと銀行に出向きましたが、海外銀行発行の小切手を処理するのに手間取り、銀行内でたらい回しにされることになりました。
憤慨した彼は、帰国後すぐに商品開発を命じ、1891年、アメックスはトラベラーズ・チェック(旅行小切手)事業に参入します。
関わるみんなが得する仕組み
トラベラーズ・チェックは、(1)為替決済の顧客を個人旅行客に広げたのですが、その実現にはいろいろな壁がありました。(2)偽造困難な小切手の開発も不可欠でしたが、各レベルに関わる多くのプレイヤーへの対応が大切でした。(3)換金した商店・レストランへの損失補償、(4)紛失・盗難時におけるユーザーの損失肩代わり・即時再発行などです。
アメックスは、「誠意と十分な注意を払った者たちには、決して損をさせない」という仕組みをつくり上げました。しかも、(5)トラベラーズ・チェックの購入は前払いなので、資金繰りがプラスで、かつ使用までの金利も稼げるという新しい収益モデルの創造でもありました。
シナリオ/星井博文 画/飛高翔 編集協力/トレンド・プロ
シリーズ累計33万部のベストセラー『経営戦略全史』『ビジネスモデル全史』シリーズの新装マンガ版が発売! 14世紀イタリア・メディチ家から21世紀のテック企業まで世界の歴史を変えたビジネスモデルを一気読み。
三谷宏治・著/星井博文・シナリオ/飛高翔・画/日本経済新聞出版/2090円(税込み)