春夏秋冬、季節ごとにお届けしております「手前みそ」企画。2024年春も、ぜひお読みいただきたい「日経の本」を全力でご紹介してまいります。推し担当は、「日経の本」の作り手が30人以上も所属する日経BOOKSユニット第1編集部を率いる赤木裕介部長。聞き手は今回から、日経BOOKプラスの常陸佐矢佳編集長が務めます。

一段上のビジネススキルを学ぶ
常陸佐矢佳(以下、常陸):寒い寒いと思っていたら、あっという間に桜が咲いていて暖かい日が続きますね。気がついたら新年度に入っていました。新しい職場や環境で奮闘している方も多いのではないでしょうか。今日は部長の赤木さんに、春のスタートダッシュにお薦めの「日経の本」をご紹介いただきます。
赤木裕介(以下、赤木):暖かくなってくると何か始めたい、とやる気が満ちあふれてくる一方で、花粉のせいで頭がボーッとして集中できない、という人もいるでしょう。まずは、そんな「集中力」を扱った本からご紹介していきましょう。
資料を作るためにパソコンに向かったはずなのに、メールやチャットにコメントが次々と飛んでくる。10分くらいかけてやっと返信をして、ようやく資料に取りかかろうとしたら、またメッセージが……。こんな経験、多いのではないでしょうか。
『 ATTENTION SPAN(アテンション・スパン) デジタル時代の「集中力」の科学 』は心理学・情報科学のエキスパートが、独自の研究と最新の学説を基に集中力の謎を解き明かします。「デジタル機器への集中は47秒しか続かない」「一度中断した仕事に再び集中するには25分かかる」なんて聞いたら、びっくりしますよね。集中のメカニズムを改めて見直すことで、仕事の充実度と人生の幸福度を高める方法を教えてくれる1冊です。
常陸:私もメールやチャットの受信通知や返信に追われていて、集中できる時間がどんどん短くなっている実感はありました。この本を読んで、その理由が分かりました。人生の幸福度にまで影響するなんてびっくりです! なぜかいつも忙しいと感じている人に読んでほしいですね。
赤木:続いてご紹介するのが、日経ビジネス人文庫『 「よい説明」には型がある。 』です。
人に説明しているときに、「あ、この人、上(うわ)の空だな、伝わってないな~」と感じることってありませんか。私はしょっちゅうです。そんな人にお薦めなのがこの本。駿台予備学校の元・カリスマ講師で、2万人を超えるビジネスパーソンに話し方を指導してきた著者が見いだした11の型を教えてくれます。「聞き手の常識を破壊する」なんてドキッとさせられるスタイルや、いまはやりの「伏線回収」まで、すぐに使ってみたくなる型が紹介されています。
常陸:上の空……よく見る光景です。あれは伝え方がうまくなかったからなんですね。この記事「悪用厳禁!『興味がない』相手を前のめりにさせる話し方」を読むと、どうしたらよいか、具体的なイメージが湧きます。
常陸:そして次の2冊は数字と会計、これも苦手意識を持つ人が多いのではないでしょうか。もれなく私もその一人です。
赤木:数字が苦手な人って、多いですよね。実は、いかにも数字に強そうなコンサルタントも、最初は苦手意識を持っている人が少なくないそうです。『 ビジネス数字思考トレーニング コンサルタントが必ず身につける定番スキル 』は、長年、若手コンサルタントの育成にあたってきた著者が「数字思考」を学ぶ方法を体系的にまとめて解説。コンパクトな本ですが、ビジネスモデルの見方から決算書の読み方、経営分析まで一通りのスキルが身につくという、とってもお得な1冊です。ケースを使った「数字クイズ」なんかも挟みつつ、楽しく読める構成になっています。
続いては700ページを超える大著『 新・現代会計入門 第6版 』です。前身の『ゼミナール現代会計入門』から数えて30年、今回で14回目の改訂となる超定番書です。私も約四半世紀前にこの本で勉強しました。一見、分厚くて尻込みしてしまうのですが、読み出すといろんな企業行動のウラに会計があったことが分かってきて、だんだんハマってきます。1日20ページ読んでも1カ月以上かかるわけですが、頑張ってこの本を読み通せば「一生モノ」のスキルが身につくこと請け合いです。
常陸:『ビジネス数字思考トレーニング』は168ページにまとめられていて、クイズもあって読みやすいですよね。若かりし頃の部長も手にしたという『新・現代会計入門』の改訂版は何と700ページ超え! ゴールデンウイークなどまとめて休める時期に、じっくり読み進めるのもお勧めですよね。
現場リーダーの「困った」を解決
赤木:さて、この春から管理職や職場のリーダー的役割になったみなさんにお薦めの2冊です。
『 CLEAR THINKING(クリア・シンキング) 大事なところで間違えない「決める」ための戦略的思考法 』は、“決断すべきとき”をきちんと見極めて、人間の本能に惑わされずに、正しく判断するための手法を解説した本です。著者は、60万ユーザーを超えるアメリカの著名サイト「ファーナム・ストリート」の設立者で、世界のトップ著名人にファンがいます。「成果を出す人の一番大事な資質、ウォール街で人気起業家が語る」の記事にもありますが、自分が間違っていることを潔く認めて一度決めたことを変える、というのは、責任ある立場にある人ほど難しいもの。部下や後輩を困らせないためにも、理解しておきたい内容です。
続いては、職場にいるちょっと困った人たちの生態を分析した本です。職場では人当たりがいいのに顧客とのトラブルが絶えない。指示をすぐ忘れる。評価してもらえないとヤケになる。こんな「普通の理屈が通じない」部下や同僚に困惑している人はたくさんいると思います。そのとき、もっと分かりやすく、丁寧に説明したら分かってもらえるのでは……と考えがちですが、必ずしもそうではないのです。
こうした理屈が通じない人たちを心理学的に分析し、その頭の中身を理解し、どう対処すればいいかを教えてくれるのが、日経プレミアシリーズ『 「指示通り」ができない人たち 』です。イラッとしたり、思わずきついことを言ってしまったりする前にこの本を読んで、困った人たちとの付き合い方を身につけておきましょう。
常陸:マネジメントに役立つ2冊ですね。管理職はもちろん、そうではない人たちが読んでもチームビルディングを考える上で参考になりそうです。
日本企業もバージョンアップ
赤木:続いて、読むとやる気が湧いてくる熱い企業モノ2タイトルをご紹介します。
「鉄は国家なり」なんていう言葉もある通り、重厚長大で伝統的な大企業のイメージが強い鉄鋼メーカー。何となく時代遅れなイメージすら漂う超巨大企業が、巨額の赤字からV字回復を果たした現場を追った、迫真のドキュメンタリーが『 日本製鉄の転生 巨艦はいかに甦ったか 』です。動きの重い企業風土を変えて、まさしく転生と呼べるほどの変革を果たした裏側には何があったのか。その葛藤、苦しみ、熱い闘いを余すところなく描き出します。「日本企業もここまで変われるのか」という新鮮な驚きとともに、閉塞感漂う多くの日本のビジネスパーソンを勇気づけてくれる1冊です。
柳井正さんといえば、「失われた30年」の中でもユニクロをグローバル企業に成長させた、辣腕の経営者という印象が強いと思います。でも、この本を読むと、そのイメージが一変します。友人のアパートに居候してマージャンやパチンコに明け暮れた大学時代。卒業後、コネ入社した会社をわずか9カ月で辞め、実家の紳士服店を継いだものの、鳴かず飛ばず。古参社員にも見限られ、くすぶり続ける日々……。こんなさえない青年が、いかにして覚醒し、カリスマ経営者になったのか。
『 ユニクロ 』は、数々の挫折を乗り越えた柳井さんの成功物語であり、共に戦う同志たちとの群像劇であり、読み始めたら止まらない一級のエンターテインメントです。日経の人気記者による、膨大な取材に裏打ちされた圧倒的な語り口。私もページをめくる手が止まりませんでした。ぜひ、みなさんにもこの興奮を味わっていただきたいと思います。
常陸:日本製鉄とユニクロ、どちらも注目の企業の本でワクワクしますよね。若手もベテランも、描かれるドラマにモチベーションが刺激されそうです。赤木さんも仕事のやる気がぐーんと上がったのではないでしょうか。
赤木:日本の会社だってちゃんと進化しているな、と感じられて、ロスジェネ世代の私も感慨深いものがあります。続いては、また別の切り口から日本企業の進化について分析した日経プレミアシリーズ『 シン・日本の経営 悲観バイアスを排す 』です。
1990年代~2010年代は「失われた30年」と呼ばれていますが、本当にそうでしょうか。『両利きの組織をつくる』の共著者である知日派の米学者が、まん延する悲観論に切り込みます。この30年は産業構造と企業システムの大転換期であり、「遅い」のは社会システムの安定と引き換えに日本が払っている代償である。転換を終えた日本企業はこれから再浮上するはずだ、というのが本書の主張です。これから日本企業が取るべき戦略を「技のデパート=舞の海戦略」と名付けています。とかく欧米礼賛に傾きがちな風潮に一石を投じる1冊です。
常陸:小柄な相撲巧者で大人気だった舞の海関、著者のウリケ・シェーデさんは彼の大ファンだと聞きました。ダメだダメだと言われがちな日本の経営ですが、この本の新しい視点にはハッとさせられます。
最後に、やっぱり大切、お金の知識
赤木:今回のラストを飾るのは、やっぱり大切にしたいお金の知識についての本です。2024年から新NISA制度が始まり、日経平均が過去最高値を更新するなど、かつてないほど投資熱が高まっています。こういうときこそブームに浮かれず、きちんとした基本を押さえておくことが大切。SNSや各種メディアで大人気の元日経記者・後藤達也さんの初の著作が『 転換の時代を生き抜く投資の教科書 』です。発売早々増刷を重ねて、早くも13万部のベストセラーになりました。単にお金を増やすだけではなく、投資を通じて視野を広げ、経済と世の中の仕組みを理解し、自分の人生を豊かにするための「教養」を丁寧に語ります。
常陸:13万部はすごいですね~。景気もいいですし、勢いが止まらないですね。この記事「後藤達也『投資を始める環境が整う今、知っておきたい“守り”の観点』」も後藤さんの個人的なエピソードが満載で、株価上昇の理由の解説も分かりやすかったです。
赤木:バブルの頃もそうでしたが、アゲアゲの時期には怪しげなもうけ話がいろいろ出てきます。後藤さんの本にもありますが、みなさん「おいしすぎる話」には気をつけながら、賢くお金を運用しましょう!











