新しいことにチャレンジするのにぴったりの季節。年齢やキャリアにふさわしい大人の教養を身に付けたいという思いを抱いている人も多いのでは? どんな人に教養を感じるか、どんなときに教養が欲しいと感じるか、思いはさまざま。アンケートで分かった、みんながもっと教養を身に付けたいと思っているテーマを中心に、おすすめの47冊をご紹介! 集中すれば3カ月ほどで読破できる数なので、興味のあるものから読み進めてみて。今回は作家の佐藤 優さんおすすめの本を紹介します。
歴史は人生に役立つ。1日1章読むのもおすすめ
受験勉強した歴史を覚えていない――そんな悩みに作家の佐藤優さんは、「当時はどうせ役に立たないと思っていたからです。歴史を知ることが自分の人生にプラスになるという意識で読むと、意外に記憶に残ります」と答えてくれた。
おすすめは通勤時に1章など時間を決めて読むことだ。今回の選書には、ひとりひとりがつくっていく小さな歴史の本もある。
「近い過去を学び、自分を変えていくことで、未来の歴史を変えていける。その重要性に気づいてもらえたらと思います」

作家。1960年、東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了。元外務省主任分析官。『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。『宗教改革の物語』(角川ソフィア文庫)ほか歴史をひもとく著書も多数。
読みやすく書かれた大人のための教科書で、通史をおさらい
高校の歴史の教科書で知られる山川出版社が一般読者向けに書き改めた通史。さまざまな最新学説のコラムを、世界史は「ポピュリズム」など98点、日本史は「親鸞の結婚」など83点掲載。歴史のうんちくとしても面白い。「教科書をベースにしているので校閲的な確認がしっかりできています。歴史の全体像をつかむ入門書として、偏りや史実への誤りがなく、読みやすい分量です」
同時代史から現在地を知る。なぜ失われた30年になったのか
“昭和な感じ”にはある共通のイメージがあるが、より近い過去の平成にはそうした共通イメージが持ちにくい。「失われた30年とほぼ重なる平成に日本はどう変わったのか、さまざまな事象から丁寧に書かれた本です。双極性障害でうつを発症し、どん底を経験された作者とともに、同時代の過去を振り返り、浮き彫りになる歴史から未来を生きるヒントを得ることができます」
タイムリープミステリーで、複数の歴史の選択肢を考える
事件や事故をきっかけに時間が巻き戻り、自分の人生を再度体験する青年マンガ家。違う選択をしていたら何を得て、何を失ったのかが描かれる。「実験的なマンガとして面白いだけでなく、歴史は常に複数考えられ、これからの選択1つ1つが歴史の分岐点になっていくことを考えさせられます」
もしかしてうちの会社も? 合理性で判断して失敗する組織とは
個人は優秀なのに、組織としてはダメな判断をしてしまうのはなぜか? 「このままではまずいと思っても、止めるコストが大きすぎると限定的な合理性によって判断し、途中で止められない構図を解説。身近な組織で起きている不条理も、理屈があり、失敗の理由があることを歴史から学べます」
昭和生まれで令和を生きる主人公とともに、自分史を振り返る
昭和に生まれ平成を過ごし令和の今、30歳をすぎて女子会を繰り返す主人公が、目標のない人生から脱出すべくもがきながら奮闘するマンガ。「作者の時代を見る力が秀逸。平成を振り返り、時代の社会構造をしっかり反映しています。主人公のように30年の自分の歴史を振り返るきっかけに」
[日経xwoman 2022年4月11日付の記事を転載]
構成・文/中城邦子 写真/スタジオキャスパー、小野さやか(佐藤優さん)