自分はこのままでいいのかと悩むことは、我慢するのが当たり前だった人生から、自分で開拓していく人生に転換するための第一歩です。勝間和代さんの書籍『 40歳からの「仕事の壁」を越える勝間式思考 』から、2011年から始めた勝間塾で実践してきた「5年後、なりたい自分になるために必要な考え方」を伝えるとともに、40歳から直面する具体的な働き方、生き方の悩みをロジカルに解決するアドバイスとおすすめの一冊をお届けします。

人前で話すのが苦手、どうしたらうまくなる?
チームのメンバーや外部の人たちの前で話す機会が増えました。もともと人前で話すことが苦手なので、事前に話す内容を整理して準備していくのですが、なかなかうまく伝わらず、途中で飽きられている気がして手応えを感じません。人を引き付けてうまく伝えるには、どういうメンタルで話せばいいのでしょうか。よく講演されている勝間さんが気を付けていることや話がうまくなるコツを教えてください。

不動産業・Oさん(42歳)

人前で話すのが苦手な人は自分に視点が向いている

きっと多くのビジネスパーソンが同じような悩みを抱えていて、プレゼンやスピーチで苦労していると思います。

勝間 今回の相談者さんをはじめ、人前で話をするのが苦手な人というのは、自分にしか視点がないんですよね。どういうことかというと、自分が話す内容や順序、スピードに気を取られすぎて、聞き手が理解しやすい内容や順序、スピードかどうか、という視点が抜けているんです。

 その結果、あれもこれもと話題がてんこ盛りになり、それを時間内に話し切ろうとして早口になるため、聞き手を置いてきぼりにしてしまう、と。典型的な例が、下を向いてスピーチ原稿を読み上げるパターン。はっきり言って、聞き手にとっては“地獄の時間”です。

 講演やプレゼンは、話し手が一方的に話す場ではなく、普段の会話の延長にあるものだと考えてください。なぜなら、聞き手は相づちを打ったり、「へ~、そうなの?」「知らなかったー」と心の中でリアクションをしながら聞いているからです。

講演は普段の会話の延長なんですか! でも、普段の会話はできても大勢の人の前で話すとなると緊張してしまう人もいますよね。

勝間 緊張するのは、等身大の自分より、よく見せようとするからです。いつもの自分を見せられればいい、と思えば大して緊張しないはずです。また、数をこなせば、緊張しないで上手に話せるようになるか、といったら違います。何回やっても、スピーチ原稿を読み上げ続けるようでは上達しません。

 もし聞き手が下を向いたら、話を聞くことを拒否し始めているサインですから要注意です。

それは大変! どうしたら講演やスピーチで相手を引き付けられるのでしょう。勝間さんは何に気を付けていますか?

実際に話すのは持ち時間の半分ぐらいでいい

勝間 聞き手のことをどれだけ思いやれるかが肝です。何百人を前にした講演会でも、前列の人たちの反応は見えるので、彼らの表情を見ながら話します。相づちや表情、メモを取るようなしぐさなど言葉にされない非言語情報を読み取って、聞き手の理解度に合わせて話を調整できる人が、上手な話し手だと言えます。

 私の場合も恐らく、話している時間は持ち時間の半分ぐらいでしょう。持ち時間が30分としたら、15分。残りの半分は間を置いたりアイコンタクトを取ったりしながら、聞き手が話を受け取って、理解し、リアクションする時間に充てています。

たった半分ですか!

勝間 そうです。人前で話すこともコミュニケーションの一種なんです。コミュニケーションが上手な人は相手のことを考えて、理解するペースに合わせて話すものですよね。それを大勢の人前ですると講演やスピーチ、プレゼンが上手な人になるわけです。

普段の会話でもスピーチの訓練はできる

勝間 普段の会話でも、どういう話し方をすると相手が理解しやすいかと考えて話すと、いい訓練になります。例えば、面白い映画を見たら、どう話したら見たいと思ってもらえるか。おいしいレストランに行ったら、そのお店を知らない人に行きたいと思わせるにはどう話せばいいか。相手の興味をそそるポイントを押さえることが重要です。自分の話に対して、相手が「いつまで公開してるの?」「予約必須?」などと聞いてくれたら、上手に話せていると思ってOK。

 聞き手を意識した話し方を普段からしていると、プレゼンやスピーチ、商談でも相手のリアクションを読み取ることができて、それに合わせて話を調整できるようになります。

 話す練習をしたいなら、人と会話するに限ります。特に見ず知らずの人との会話。バス停で前後になった人と「バスが遅れていますね」「だいぶ涼しくなりましたね」と、できるだけ話を広げてみてください。

とはいえ何も準備がなく、人前に立つのは不安です。スピーチ原稿を書くのがよくないとしたら、何を準備すればいいですか?

重要なポイントは3回繰り返して伝える

勝間 私は講演をするとき、ポイントを箇条書きにしたメモを手元に置いておきます。聞き手のリアクションを見ながら話していると、たまにテーマから外れることがあるので、途中で見て思い出すためです。メモだけだと不安かもしれませんが、スピーチ原稿を用意しても、うまく話せるかという不安は消えないんです。まず、話す内容を整理して、優先順位をつけて、ポイントを3つに絞りましょう。

 そして、大事なポイントは話の中で3回繰り返して話してください。3回繰り返しても、自分が望む通りに理解してもらえないものですが、重要であることを印象づけられます。

1回では理解されないんですね。他にも、こうするといいという方法はありますか?

勝間 話し始めのアイスブレーク(緊張をほぐす手段)として、聞き手の人たちと共有できる話題を入れることをお勧めします。内容は他愛もない天気の話や時事ネタの他、社内の話題で「決算期で忙しいですね」とか「新製品の売れ行きが好調のようでボーナスが楽しみですね」ということでもいいでしょう。

 みんなで共有できる話題を冒頭にもってくることによって、話し手と聞き手の距離を縮め、場の一体感を高めます。講演会の冒頭でよく「本日はお足元の悪い中、ようこそお越しくださいました」などと言いますが、あれも狙いは同じ。話し手は聞き手を思いやりながら、距離を縮めようと思って言っているんです。

「聞く」を知ると「話す」がうまくなる

アイスブレークによって、聞き手のリアクションの良しあしも分かりますね。では、今回のお薦めの一冊を教えてください。

勝間  『LISTEN 知性豊かで創造力がある人になれる』(ケイト・マーフィ著、篠田真貴子監訳、松丸さとみ訳/日経BP) です。

『LISTEN 知性豊かで創造力がある人になれる』
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 今回の相談は話し方なのに「Speak(話す)」でなく、なぜ「Listen(聞く)」? と思うかもしれませんが、この本を読むと、ほとんどの人が「話を聞くスキル」を学んでいなくて、聞くことが苦手なのが分かります。

 そういう人を相手に話していることを念頭に置いてほしいのです。いい話し手は聞き手に合わせることができる人です。だから、「聞く」を知ると「話す」がうまくなるわけです。

LISTEN 知性豊かで創造力がある人になれる
(ケイト・マーフィ著、篠田真貴子監訳、松丸さとみ訳/日経BP)
たいていの人は「話を聞くスキル」を学べていないことがよく理解できる。「聞く」を知ると、「話す」がうまくなる
【今回のヒント】
スピーチは会話の延長。日常生活で訓練できる
2011年から始めた勝間塾で実践してきた、「5年後、なりたい自分になるために必要な考え方」をベースに、40歳から直面する具体的な働き方、生き方の悩みをロジカルに解決。1つ1つの悩みに対する回答を読むことで、刷り込まれていた常識の壁を乗り越える思考法が身につく。キャリアに停滞感を感じている人、人生後半の生き方に悩む人に役立つ1冊。

勝間和代著、日経BP、1870円(税込み)

編集協力/茅島奈緒深、磯部麻衣 編集/竹下順子、大屋奈緒子(日経クロスウーマン編集部)