自分はこのままでいいのかと悩むことは、我慢するのが当たり前だった人生から、自分で開拓していく人生に転換するための第一歩です。勝間和代さんの書籍『 40歳からの「仕事の壁」を越える勝間式思考 』から、2011年から始めた勝間塾で実践してきた「5年後、なりたい自分になるために必要な考え方」を伝えるとともに、40歳から直面する具体的な働き方、生き方の悩みをロジカルに解決するアドバイスとおすすめの一冊をお届けします。

5年後に役職定年で減給、今の会社で働き続けるべき?
5年後、54歳で役職定年になります。その先は、マネジメント職を離れて働くことになり、60歳で定年。再雇用で65歳までは働けそうですが、段階的に給料が大幅ダウンし、現在とは部署も変わりそうです。それなら今から転職して、新しい道を見つけたいとも思いますが、総務職歴10年の自分が他の会社でどんな仕事ができるのか、分かりません。どう考えればいいのか、ヒントを教えてください。

運輸業・Mさん(49歳)

年齢を理由に役職を外され、減給される

5年後の役職定年、10年後の定年後再雇用を見通して、今後の働き方に悩んでいます。役職定年になれば、昨日の部下が今日の上司になる可能性が高く、定年に向けて減給されていく。新しいことに挑戦しようにも、いいアイデアが浮かばない、と。ネックになっているのは“年齢の壁”なのでしょうか。

勝間 総務職であれば、40代でも転職先にはそう困らないと思います。大企業では人材が豊富ですが、中小企業やベンチャーなどでは総務職を熟知している人が足りないと聞きます。雇ってくれるところはあるはずです。まずは転職エージェントに登録して、どんな転職先があるかリサーチしてみてください。

 ベンチャーの場合は経営陣もスタッフも若い世代が中心なので、新しいシステムや若い人たちになじむことも条件に含まれますが、初めから「年下の上司」が存在する分には問題ありませんよね。役職定年になるときのように、昨日と今日で立場が逆転するわけではありませんから。悔しさや虚無感などのストレスを感じにくく、受け入れやすいと思います。

確かに、転職したら自分は新人で、いろんなことを教えてもらう立場になるので、年下とか年上とか気にしている場合じゃなくなりますね。

役職定年がある会社に勤めるリスク

勝間 ぜひ考えてほしいのは、役職定年という制度がある会社に勤め続けていていいのか、ということです。

 役職定年制は人材の新陳代謝を促して、人件費を削減するためにできた制度ですが、それはあくまで会社側の都合。米国では年齢差別に当たるので法律違反です。そもそも米国は、雇用時に年齢を条件にしてはいけないし、年を取ったから役職を解きます、なんてことを言ったら間違いなく訴えられます。米国だけでなく、グローバルに考えたら役職定年制度はコンプライアンス違反となる可能性もあるわけです。

 日本でも、数年前から役職定年制度を廃止する企業が出始めています。ジョブ型を取り入れ、年齢による給与の引き下げをなくすなど、年齢にとらわれない人材活用を進めています。

 人手不足かつ、人生100年時代で労働年数が延びている現状から、今後も制度を見直す企業が増えることが考えられます。こうした時流を読めない企業は、評価も業績も下がる可能性があるでしょう。そういう会社に勤め続けるリスクを考えてほしいのです。

不本意な状態で働き続けると心身に負担がかかる

相談者さんの気持ちを察するに、54歳で役職を解かれて減給されても、65歳まで雇ってもらえるなら我慢したほうがよさそう、という考えもあるのかもしれません。が、それは安定を選んでいるようで、実はリスクだということですね。

勝間 我慢って中長期的に続けられることではありませんよね。不本意な状態で働き続けたとしても心身に負担がかかって、体調を崩す可能性もあります。それで休職や離職を余儀なくされたら本末転倒です。

5年後を目標達成のポイントにする

勝間 相談者さんは、今から5年後のことを考えられる、中長期的視点を持っている方です。今の会社にいて年を重ねていくと損をすることは、私が言うまでもなく、分かっているでしょう。損をすると分かっているなら、損をしないように行動したほうがいいことも分かっていると思います。

 私は勝間塾という、なりたい自分になれる学びの場と仲間を提供するコミュニティーを運営していますが、そこでも「5年後」を目標達成のポイントにしていて、塾生の皆さんには、中長期的に続けられることをしましょう、と話しています。それを積み重ねることが、目標を達成するということだからです。逆に、中長期的に続けられない我慢は、目標達成の邪魔をするもの、ということ。まずは転職の道を探ってみることをお勧めします。

 もしリサーチした結果、今よりいい転職先がなかったら、会社に残ってもいいんです。それは、ただ不満を抱えながら我慢して会社に居続けるのとは違います。他社と比較検討した結果、今の会社が最適だと分かって納得できる。その納得感って大事なんですよ。

 常に、内側からだけでなく外側から見ることが重要。そうすれば自然に選択肢が増えます。その上で納得して行動したのであれば、我慢ではありません。自分が選んだ選択肢を大切にしようと思えて、前向きになれるのです。

やめること、諦めることも能力の1つ

なるほど。では最後に、相談者さんの行動力を後押しする一冊を教えてください。

勝間  『QUITTINGやめる力 最良の人生戦略』(ジュリア・ケラー著、児島修訳/日本経済新聞出版) です。著者はピュリツァー賞を受賞したジャーナリスト兼小説家で、自然界では「やめる」ことが最良の結果に結びつく、という行動原則について教えてくれます。

『LISTEN 知性豊かで創造力がある人になれる』
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QUITTING やめる力 最良の人生戦略
(ジュリア・ケラー著、児島修訳/日本経済新聞出版)
自然界では「やめる」ことが最良の結果に結びつくという行動原則から、やめることへの罪悪感を解消し、後悔なくやめる方法を説く

 私たち人間は「やめる」ことに対して躊躇(ちゅうちょ)しがちですよね。やめるのは我慢や根性が足りないからと、負け犬や落伍者の烙らくいん印も押されかねません。しかし、生物は種の保存のために積極的に退避行動をとることがあります。

 私の印象に強く残っているのは、やめることも諦めることも能力の1つで、高度なスキルである、という点です。人って、現状に不満があって不幸であると感じていても、実は何も行動しない人のほうが多いんですよね。なぜなら、現状のままでいる=何もしないでいるほうがラクだからです。

 会社を辞めることはもちろん、人間関係の整理や離婚、引っ越しや生活習慣をやめることだって簡単ではなく、喪失感という痛みを伴う場合もあります。それも躊躇する一因ですが、より成長して幸せになるには、やめるスキルを磨くべきだ、と。人間も動物で、自然界の一部ですから、やめることが生存戦略になり得るわけです。

【今回のヒント】
我慢は続けられない。安定を選んだつもりがリスクに
2011年から始めた勝間塾で実践してきた、「5年後、なりたい自分になるために必要な考え方」をベースに、40歳から直面する具体的な働き方、生き方の悩みをロジカルに解決。1つ1つの悩みに対する回答を読むことで、刷り込まれていた常識の壁を乗り越える思考法が身につく。キャリアに停滞感を感じている人、人生後半の生き方に悩む人に役立つ1冊。

勝間和代著、日経BP、1870円(税込み)

編集協力/茅島奈緒深、磯部麻衣 編集/竹下順子、大屋奈緒子(日経クロスウーマン編集部)