あと数日で冬休み。仕事を忘れ、読書に没頭できる絶好の時期がやってきます。読みそびれていた小説や漫画もいいですが、リスキリングも兼ねて「AI本」はいかがでしょうか。2025年に日経BPが出版した数多くの書籍から、クロステックIT編集長の小笠原啓がお薦めする3冊を紹介します。

生成AIを「文房具」にしてはもったいない

 最初に紹介したいのは、『 2030 次世代AI 日本の勝ち筋 』(佐藤一郎・著)です。国立情報学研究所で教授を務める佐藤氏が2025年の生成AI(人工知能)動向を整理した上で、「日本の勝ち筋」を論じます。

『2030 次世代AI 日本の勝ち筋』(佐藤一郎・著)
『2030 次世代AI 日本の勝ち筋』(佐藤一郎・著)

 興味深いのは「生成AIは『文房具』ではない、AI利活用の勘所」と題した第2章です。文書作成業務に生成AIを活用するようになったことで、「企業内で扱う文書の総量は爆発的に増えた」と佐藤氏は指摘します。生成コストが下がった結果、内容が似通った価値が乏しい文書が増え、読み手の負担が増して生産性を下げているというのです。「個別作業ではなく、業務全体、さらに組織全体」(佐藤氏)を考えないと、生成AI導入が逆効果になりかねません。

 佐藤氏が一貫して訴えているのは「AIを生かして新しい業務の仕組みを作る」こと。優れた業務プロセスは企業の競争力に直結します。製造や物流などの業種に特化した生成AIを開発するとともに、「そのAIを活用した業務の仕方そのものを輸出する」(佐藤氏)ことが日本の勝ち筋になると論じます。「AIエージェント時代の企業ブランディング」や「クジラや鳥と話すAI」など、様々な視点のコラムが掲載されているのも特徴です。

バブル崩壊後に「生き残る」のは誰か

 続いては『 AIバブルの不都合な真実 』(クロサカタツヤ・著)です。日経平均株価が一時5万円を突破し、米国株式市場も高値圏で推移しています。クロサカ氏は生成AIがもたらした熱狂を「バブル」だとし、次のように断言します。「歴史上、崩壊しなかったバブルは、ない」。

『AIバブルの不都合な真実』(クロサカタツヤ・著)
『AIバブルの不都合な真実』(クロサカタツヤ・著)

 崩壊がいつ、どんな形で訪れるかは分かりません。ただ、リスクが高まっているのは間違いなさそうです。12月4日付の日本経済新聞電子版は、「AIバブル」の検索数が今年の8月頃から急上昇していると報じました。「グーグルトレンド」では11月半ば、年初と比べて20倍の水準になったようです。個人も含む多くの投資家が、警戒を強めていることがうかがえます。

 本書の真骨頂は「AIバブル崩壊後の生存戦略」を論じた第4章でしょう。バブル崩壊後には、誤解に基づく「AI否定論」が台頭すると予測。反動で投資や人材育成が滞ると、セキュリティーリスクが高まると警鐘を鳴らします。ブームに踊らされて「基礎をおろそかにする」企業が苦境に直面する一方で、「生き残る」AIユーザー企業の条件を示した論考は必見です。

人工知能の「頭の中」をのぞいてみよう

 最後に紹介するのは『 生成AI「思考」の裏側 なぜ賢いのか? なぜ間違うのか? 』(立山秀利・著)です。ChatGPTやGeminiなどの生成AIがどのように質問を理解し、考え、回答を生成しているのか。そのカラクリを分かりやすく解説した一冊です。

『生成AI「思考」の裏側 なぜ賢いのか? なぜ間違うのか?』(立山秀利・著)
『生成AI「思考」の裏側 なぜ賢いのか? なぜ間違うのか?』(立山秀利・著)

 最大の特徴は、難しい数式が一切登場しないこと。中学生レベルの数学知識があれば読み通せるよう、図表を使って生成AIの仕組みを説明しています。「なぜ人間のように会話できるのか」「時折ウソが混じるのはなぜか」といった素朴な疑問に答えてくれます。

画像のクリックで拡大表示

 本書は6章構成ですが、2章まで読めば生成AIの「基礎の基礎」を理解できるでしょう。AIが文章や画像を分割して数値化した上で、新しい回答を生み出す流れを把握できます。3章以降では人間の脳を模した「ニューラルネットワーク」や、現在の生成AIの中核である「Transformer」の仕組みも解説。エンジニアが手に取っても後悔しない内容になっています。

 「手前みそ」ではありますが、こちらで紹介した3冊は編集長として太鼓判を押せるものばかりです。冬休みにじっくりお読みいただければと思います。

日経クロステック 2025年12月24日付の記事を転載・改題]

【関連記事】