個人や法人に向けて本の要約サービス「flier」を提供するフライヤーは、リーダー研修で5冊の課題図書を設定しています。どのような本を選び、どのように研修で活用しているのでしょうか。研修を実施した同社執行役員CCOの久保彩さんと、研修を受講したカスタマーエンゲージメントDiv CS Opsリーダーの市原由佳さんに聞きました。前編は研修の内容と1冊目の課題図書を紹介します。
1カ月に1冊、課題図書を読み込む
日経BOOKプラス編集部(以下、──) フライヤーでは、リーダー研修で課題図書を設定しているそうですね。まずはお二人の仕事内容を教えてください。
フライヤー 執行役員CCO 久保彩さん(以下、久保) CCOの久保です。CCOはChief Customer Officerの略で、顧客接点の責任者をしています。フライヤーでは個人と法人に向けて本の要約サービスを提供していますが、私は個人向けと法人向け両方の顧客接点を見ています。
フライヤー カスタマーエンゲージメントDiv CS Opsリーダー 市原由佳さん(以下、市原) 市原です。私は2025年1月からフライヤーの要約サービスを導入してくださっている企業のサポート部門に異動しました。法人向けの研修プログラムも作っており、その企画運営も担当しています。今回、フライヤーのリーダー研修に参加しました。
自社で課題図書を使ったリーダー研修を行っているだけではなく、法人向けのサービスを展開しているんですね。それはやはり自社のリーダー研修で効果を感じたから、他社にも展開していこうとなったのですか。
久保 そうですね。社内でも手応えを感じましたし、他社様から「本を使った対話型の研修をしたい」というご要望をいただくことが多く、選書から講師の派遣まで行っています。
では、フライヤーのリーダー研修についてお聞きします。どのように研修を進めているのですか。
久保 課題図書が5冊あり、毎月1回のペースで行われる研修の1~5回目に課題図書を読みます。読む順番は以下のとおりです。
- 1冊目『 マネジャーの全仕事 いつの時代も変わらない「人の上に立つ人」の常識 』(ローレン・B・ベルカー、ジム・マコーミック、ゲイリー・S・トプチック著/佐々木寛子訳/ディスカヴァー・トゥエンティワン)
- 2冊目『 改訂4版 グロービスMBA アカウンティング 』(グロービス経営大学院編著/ダイヤモンド社)
- 3冊目『 最高の結果を出す KPIマネジメント 』(中尾隆一郎著/フォレスト出版)
- 4冊目『 THE CULTURE CODE 最強チームをつくる方法 』(ダニエル・コイル著/楠木建監訳/桜田直美訳/かんき出版)
- 5冊目『 リフレクティブ・マネジャー 一流はつねに内省する 』(中原淳、金井壽宏著/光文社新書)
そして、研修の6回目は課題図書から学んだことをもとに「この先、どんなリーダーになっていきたいか」という個人発表を行い、7回目は当社代表の大賀康史と1on1ミーティングを行います。
目線を合わせる「共通言語」を作る
半年間ほどかけて、じっくり研修をするんですね。そもそも、この研修はどういう経緯で始まったのですか。
久保 フライヤーは創業13年目になる会社です。これまで中途採用がメインで、多様なバックグラウンドを持った人材が、おのおののプロフェッショナルなスキルを生かすために入社しています。その人たちがリーダー層になったときには、経営陣と目線を合わせて対話ができる「共通言語」が必要だと考えました。
一方で、我々はスタートアップなので、仕事においてはスピード感が求められます。各リーダーが自分で次々に決定する場面も多く、そうした中で専門性は高められますが、横断的に物事を見たり、ふと立ち止まって自分自身を省みたりする時間は持ちにくいかもしれません。そこで、経営陣が課題図書を選び、本の内容をインプットするだけではなく、それぞれの知識や経験を掛け合わせて「自分のリーダーシップの軸をどう考えるか」を言葉にする対話型の研修を行うことにしました。
なぜ、課題図書を設定するかというと、プレゼンスキルのように短期間で身に付けられるビジネススキルなら動画など他の方法でもいいかもしれませんが、そもそもリーダー層になる人たちはすでにそれらを身に付けているのが前提です。さらに、自分たちの視野を広げ、良質なインプットとアウトプットをしたい。今のフライヤーに必要なマネジメントについて語り合いたい。そのためには本を使うのがふさわしいと考えました。ただ、本を活用した対話型の研修はインプットの時点でばらつきが出るので、「事前課題ワークシート」を用意しています。
フライヤー 執行役員CCO カスタマーエンゲージメントDiv ゼネラルマネジャー
ばらつきが出るというのは?
久保 どこまで本を読み込んでいるか、誰かにアウトプットするつもりで読んでいるか、といった点で差が出ます。そのため、それぞれの課題図書に対して事前課題ワークシートを用意して、「Why この本から学びたいこと・課題意識」「What 印象に残った箇所」「本書の学びを自分の仕事に活かすとしたら」という欄に書き込むようにしています。
事前に要点を整理しておくのですね。今回の研修には何人ぐらい参加したのですか。
久保 今回は受講者が12人、講師は経営陣の3人です。受講者は勤続2~4年、年齢は30代が中心でした。
リーダー層ですが、みなさんお若いですね。実際の研修はどのように進めるのですか。
久保 研修の前日までにクラウドシステム上に事前課題ワークシートを提出しておき、まずはみんなで感想をシェアします。それから3~4人のグループに分かれ、事前課題ワークシートの「Why この本から学びたいこと・課題意識」「What 印象に残った箇所」「本書の学びを自分の仕事に活かすとしたら」などを参考にして問いを1つ立て、ディスカッションします。そして、出た答えを発表し、シートの「今日の学び」「次回までに取り組みたいこと」を記入します。
課題図書の読み込み、内容についてのディスカッション、感想の記入と密度が濃いですね。
久保 本に書いてあることって、結局「すごくいいこと」なんですよね。でも、実際に自分の現状に向き合ったときに、ジレンマというか「そんなにうまくはいかないよ」ということが出てきます。それをみんなでディスカッションし、解決策を考えることで、本の内容が腹落ちしていきます。
それが計5冊、5回分となると学びが多いですね。そして6回目には個人発表があると。
市原 「実際にどういうリーダーになりたいのか」を発表するのですが、やはり誰かに話すことで自分の思い描くリーダー像が明確になりました。
フライヤー カスタマーエンゲージメントDiv CS Opsリーダー
マネジャーの心得を書いた名著
では、それぞれの本の内容についても聞かせてください。1冊目は『マネジャーの全仕事 いつの時代も変わらない「人の上に立つ人」の常識』ですね。
久保 こちらは「マネジャーとはどうあるべきか」という心構えを説いた名著です。チーム作りやメンバーのモチベーションを上げる方法、マネジャー自身がEQ(心の知能指数)を高めてどう成長していくかといったことまで触れられています。まだマネジャーになっていない人にとっても、「あのとき上司はこういう立場だったから、あのようなアドバイスをくれたのかな」と考えるきっかけになります。40年近く読み継がれていますが、時代に応じてアップデートされているので古さを感じさせません。
市原 この本は「マネジャーはこういうことを考えているんだ」と分かる教科書的な1冊でした。ただ、自分1人だけで読んでいたら「確かにそうだよね」で終わっていたかもしれません。今回、研修で読むことによって、「実際に自分がやるとなると難しいな」という部分が分かり、人によって難しいと思うポイントが違うと分かったのも興味深かったです。普段の業務ではなかなか考える時間がありませんでしたが、「これから自分はどういうリーダーになりたいのか」を考えるきっかけができて良かったです。
みんなでディスカッションするからこそ、内容が実際の仕事に落とし込めるわけですね。次回は残りの4冊について教えてください。
(後編に続く)
取材・文/三浦香代子 写真/品田裕美




