2023年10月1日、Zホールディングスとその傘下のLINE、ヤフーは、これら3社を中心に合併し、シナジーを拡大させる方針です。2021年3月のZホールディングスとLINEの経営統合後、ヤフーとLINEは読書会を共同で開催してきました。そこで取り上げた本の中から5冊をピックアップし、ヤフー コーポレート企画室の大林健司さんとLINE広報室の斉藤幹晴さんが紹介します。

自分では選ばない本に出合える

日経BOOKプラス編集部(以下、──) 前回 「ヤフー、LINE 『満足度100%』の読書会で会話不足解消」 では、ヤフーとLINEで共催している読書会の内容とその効果について聞きました。今回は、読書会でどんな本を取り上げているか、教えてください。

ヤフー・大林健司さん(以下、大林) ヤフーだけで読書会をしていた時代も含めると、これまでに16回開催しています。そのうち2回は取り上げた本の著者が参加してくれて、質疑応答で盛り上がりました。

 本当は全部の本を紹介したいところですが、今回は5冊をピックアップします。まずは『 恐れのない組織 「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす 』(エイミー・C・エドモンドソン著/野津智子訳/英治出版)です。よく心理的安全性が重要といわれるけれども、実際にできているのか考えてみよう、ということで、管理職向けの読書会で取り上げました。

心理的安全性を取り上げた『恐れのない組織』(写真:小野さやか)
心理的安全性を取り上げた『恐れのない組織』(写真:小野さやか)
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 私自身も管理職ですが、読んでみてドキッとしました。昭和スタイルの中で育ってきたので、「もしかしたら、自分の判断基準は古いかも」と思うときがあるのですが、その辺りのモヤモヤが言語化されていて、非常に参考になりました。組織運営のノウハウもちりばめられていて、実践的です。

 他の参加者からも「心理的安全性という言葉は知っていたけれど、改めて認識した」「普段の自分だったら読まない本に出合えた」という感想を聞きました。

読書会が盛り上がった『冒険の書』

LINE・斉藤幹晴さん(以下、斉藤) LINEはまだこのときの読書会には参加していませんでしたが、面白そうですね。2冊目は『 冒険の書 AI時代のアンラーニング 』(孫泰蔵著/日経BP)です。これは私自身が社内報を書いている中で、「自分としてはクリエーティブな仕事をしているつもりだけど、いずれ生成AIに取って代わられるのでは?」「この先、どう自分の学びを深めていくか」と悩んでいた時期に出合いました。

斉藤さんが仕事に悩んでいたときに出合ったという『冒険の書』(写真:小野さやか)
斉藤さんが仕事に悩んでいたときに出合ったという『冒険の書』(写真:小野さやか)
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 著者の孫泰蔵さんは、「それぞれの人が好きなことをして、能力主義(メリトクラシー)を乗り越えていくことが幸せにつながっていく」といったことを書いていて、勇気づけられました。孫さんは「アプリシエーションあふれる学びの場をつくりたい」とも述べていて、それは自分たちのやっている読書会にもつながるな、とうれしかったですね。

「才能や能力は意味がない」など刺激的な内容もありますが、読んだときに反発はありませんでしたか。

斉藤 読み始めたときはめちゃくちゃありました(笑)。私個人としては、会社の中で能力のある人が評価されるのは当然だと思っていたのですが、孫さんが「メリトクラシーを突き詰めると不幸になる」ということをさまざまな理由で説明しているのを読んでいくうちに、なるほどと納得しました。読書会に参加した人たちからも、「考えさせられた」「すぐには腑(ふ)に落ちない」などと反響が大きかったですね。

大林 『冒険の書』は、特に盛り上がった回でしたね。3冊目は『 天才を育てた親はどんな言葉をかけていたのか? 』(真山知幸、親野智可等著/サンマーク出版)です。これはヤフーとLINEが初めて一緒に読書会をしたときの1冊です。

ヤフーとLINEが初めて一緒に読書会をしたときに取り上げた『天才を育てた親はどんな言葉をかけていたのか?』(写真:小野さやか)
ヤフーとLINEが初めて一緒に読書会をしたときに取り上げた『天才を育てた親はどんな言葉をかけていたのか?』(写真:小野さやか)
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 最初に役員が推薦してくれたときは「なぜ子育ての本?」と思ったのですが、読んでみると「親の言葉で才能を伸ばした天才たち」「親に背中を押されて挑戦できた天才たち」など、14のシチュエーションに分かれていて面白かったです。子どもへの声かけは、上司から部下や、同僚同士のコミュニケーションと通じるものがあり、「誰かが困っているときに、どんな声かけをするか」が分かる本だと思います。

斉藤 読書会の感想でも、「子育てという完全プライベートな話と、マネジメントという仕事の話がリンクして、話しやすかった。かつ、仕事でどう生かせるかという気づきも得られた」「人の経験を聞いたり、自分の経験をアウトプットしたりして、新たな視点が生まれた」といった声が寄せられていましたね。

自分の仕事を振り返るきっかけとなる本

斉藤 4冊目は『 自分の仕事をつくる 』(西村佳哲著/ちくま文庫)です。「働き方研究家」である西村佳哲さんが、働き方についてさまざまな人に聞いたインタビュー集です。個人的には、前書きで述べている、「この世界は一人一人の小さな『仕事』の累積なのだから、世界が変わる方法はどこか余所(よそ)にではなく、じつは一人一人の手元にある」という部分が特に心に刺さりました。

さまざまな人に働き方を聞いた『自分の仕事をつくる』(写真:小野さやか)
さまざまな人に働き方を聞いた『自分の仕事をつくる』(写真:小野さやか)
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 本の中にはデザイナーの八木保さんの話が出てきます。八木さんがメンバーに色を説明するときは、色見本をそのまま使うのではなく、実際に森の中にあった木の葉などを持ってきて、その質感までも伝えていたそうです。そこまでして共通認識を深めていたのか、と驚かされるとともに、自分が社内報を作るときも言葉だけではなく、多くの事例を示すことで共通イメージができあがるんだな、と参考になりました。

大林 仕事に直結する内容だったので、グループワークのときに、みな「まだまだ話し足りない」と言っていましたね。

斉藤 みなさん、自分の仕事を振り返る良い機会になったと思います。最後は『 TRUST 世界最先端の企業はいかに〈信頼〉を攻略したか 』(レイチェル・ボッツマン著/関美和訳/日経BP)です。

「信頼の3原則」を説明した『TRUST』(写真:スタジオキャスパー)
「信頼の3原則」を説明した『TRUST』(写真:スタジオキャスパー)
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 「信頼」って漠然としていますよね。それがどういった構造で成り立っているかを「信頼の積み木」という言葉で説明していて、すごく勉強になります。例えば、ある行動から新しい行動に移るとき、信頼が足りないと新しいことには移れません。そのときに「今の自分には3段階の積み木のうち何が足りないんだろう?」と自問自答するようになりました。

大林 このときのグループワークも盛り上がりましたよね。ヤフーとLINE、Zホールディングスが統合すると、さらに読書会の参加人数も増えると思います。準備に時間がかかりますが、せっかくのコミュニケーション活性化の場なので、これからも続けていきたいですね。

ヤフーの大林健司さん(左)とLINEの斉藤幹晴さん
ヤフーの大林健司さん(左)とLINEの斉藤幹晴さん
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取材・文/三浦香代子

君が気づけば、世界は変わる。

起業家・孫泰蔵が最先端AIにふれて抱いた80の問いから生まれる「そうか!なるほど」の連続。読み終えたあと、いつしか迷いが晴れ、新しい自分と世界がはじまります。

孫泰蔵著/日経BP/1760円(税込み)