データセンターなど法人分野に強みを持つNTTコミュニケーションズは、2022年度から「ドコモグループ」の一員として新しい領域への事業拡大を進めています。そうしたなか、同社では、社員が自律的に学ぶために本を活用しているといいます。同社ヒューマンリソース部の三村正法さん、栗澤友菜さん、櫻田駿さんに取り組み内容を聞きました。前編では「みんなの学びシェア」という仕組みについて、主に三村さんに教えてもらいました。

本を活用して社員が自律的に学ぶ仕組み

日経BOOKプラス編集部(以下、──) NTTコミュニケーションズでは、社員が自律的に学ぶための「みんなの学びシェア」という仕組みがあるそうですね。担当業務と「みんなの学びシェア」について教えてください。

ヒューマンリソース部 人材・組織開発部門 栗澤友菜さん(以下、栗澤) 2022年度からNTTコミュニケーションズ、NTTコムウェアはNTTドコモと法人事業を統合し、「ドコモグループ」として始動しました。もともと3社の中でもNTTコミュニケーションズは法人領域に強く、ネットワークやクラウド、データセンターを提供していましたが、これからはNTTドコモが強みとしていた高速通信規格5GやIoT(あらゆるモノがネットにつながること)、NTTコムウェアが強みとしているソフトウェア開発力も合わせ、お客様にトータルソリューションを提供することがミッションだと考えています。

 その中で私は、櫻田と一緒に、主に新入社員や入社3年目までの若手社員の研修などを担当しています。

新入社員や若手社員の研修などを担当している栗澤さん
新入社員や若手社員の研修などを担当している栗澤さん
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栗澤友菜(くりさわ・ゆうな)
2016年にNTTコミュニケーションズに入社。ネットワークセキュリティにおけるソリューションの提案業務を経て、1つの技術分野に閉じず、よりNTT全体のブランド力、価値向上にかかわりたいと思い、ヒューマンリソース部へ。趣味は、音楽鑑賞、旅行、おいしいもの巡り。

ヒューマンリソース部 人材・組織開発部門 三村正法さん(以下、三村) 私は全社的な社員の育成、主にキャリアデザインや組織開発などを担当しています。当社ヒューマンリソース(HR)部では、「社員が自らの成長と活躍を実感し、それが会社の成長につながるプラットフォーマー」というビジョンを掲げています。HR部として、「社員が自律的に学ぶため、どんな環境を整備すればいいのか」を考えていたとき、上司と先輩、私の3人での雑談から「書籍購入の補助があればうれしいのでは」というアイデアが出てきました。

 そこでさまざまな仮説検証を重ねた結果、書籍1冊につき1000円、年間12冊まで購入の補助を行い、そして、どんな本を選んだか、読んでどんなことを感じたのかをシステム上でシェアする「みんなの学びシェア」を2021年12月からスタートしました。

全社的な社員の育成を担当している三村さん
全社的な社員の育成を担当している三村さん
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三村正法(みむら・まさのり)
2015年にNTTコミュニケーションズへ入社後、SE・京滋エリア営業を担当。再生可能エネルギーの普及と継続的な発電維持に貢献する顧客のプロダクトのITインフラ基盤提供及び事業拡大に寄与。2021年からヒューマンリソース部にて、人材育成プラットフォームの企画運営や自律的学習を促進するための環境整備、文化醸成業務に従事。中でも技術顧問の活用を中心とした、全社のプロフェッショナル人材育成の企画・実行に注力。

「自律的な学び」というとセミナーやオンライン講座など、いろいろな手段があると思います。その中で本を選んだ理由は何ですか。

三村 YouTubeの動画なども役に立つと思いますが、やはり本、特に良書と言われるものは信頼性の高い学びができるためです。我々もHRとして、階層向けなどさまざまなセミナーや研修を設けていますが、後から参加者に聞くと「あんまり覚えていない」ということも。それならば、自分の興味のある分野を、思い立ったときにすぐに読める本が最適なのではないかと考えました。

 ただ、それだけでは思いつきレベルですので、社内で50人ほどに「どういうシステムだったら実際に使うか」「実際に使うためのハードルは何か」といった聞き取りをしました。最初にこの施策をバズらせるための調査は念入りに行っています。

 そのため「学びたい!」と思ったらすぐに本を手に取れるよう、システムをかなり簡略化しました。オンラインで上長に申請し、上長の許可が下りればどんなジャンルの書籍を購入してもOK。現場から遠い我々よりも、上長のほうが「お客様のニーズに応えるには、この本が必要だ」といった判断ができます。そして、領収書をPDFで添付すれば補助申請は完了です。社内からは、「出張旅費申請と同じぐらい早くできる」「堅くない制度でうれしい」といった喜びの声が上がっています。

思い立ったらすぐに利用できる制度なんですね。

三村 はい。「何かを学びたい」「成長したい」と思ったとき、すぐにその環境に飛び込めるような、ハードルの低い施策にしたほうがいいだろうと。気持ちが枯れないうちに学べるのが大事です。社員には「みんなの学びシェア」で自分を成長させ、そこから専門性やスキルを深めていってほしいと思っています。

社員全員が読書歴を見られる

本を購入した後はどうするのですか。読んだ本は感想を提出しないといけないのでしょうか。

三村 義務ではありませんが、読んだ本のレビューは「みんなの学びシェア」に投稿できます。タイトルだけを「マイライブラリ」に登録している人もいます。レビューの投稿はハードルが高いので、システム上で「この本を誰に薦めたいか」「どんなときに読むべき本か」といった項目にチェックを入れると、自動的に見出しが生成される仕組みになっていて、投稿の手間を軽減しています。

「みんなの学びシェア」に投稿された本の例(提供:NTTコミュニケーションズ)
「みんなの学びシェア」に投稿された本の例(提供:NTTコミュニケーションズ)
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 「みんなの学びシェア」は全社員が自由に見られるので、自分のチーム内の人はもちろん、直接は接点のない人の読書歴やレビューを見ることもできます。また、「みんなの学びシェア」は社員一人ひとりの経歴やスキルが登録されているタレントマネジメントシステムとひもづいているため、「あのポジションの人はこんな本を読んでいるのか」と参考にしたり、ロールモデルを見つけるのにも役立ったりしています。

 新型コロナウイルス禍で始まった施策でしたので、「リモートワークで雑談ができないなか、他の社員がどんな学びをしているかが分かった」「自分も頑張ろうと思えた」といった感想もあり、一定の効果があったと思います。

 将来的には登録データを活用し、「この本を読むとこの方面のスキルが伸ばせる」「このスキルを伸ばしたい人には、この研修がお薦め」といったレコメンドができるようにしていきたいと考えています。

現在、どれぐらいの人が「みんなの学びシェア」を利用していますか。

三村 「みんなの学びシェア」への登録者数は5000人ぐらいです。実際に学びをシェアしている人は現在約1000人です。NTTコミュニケーションズの社員数が9300人ぐらいですので、10%強の人が投稿してくれています。想定以上の多さで、手応えを感じています。

読まれている本、トップ5は?

皆さん、どんな本を読んでいるのでしょうか。

三村 「マイライブラリ」に登録されている本のトップ5は以下の通りです。

 1位の『NTT 2030年世界戦略』はNTTの成長戦略について書かれている本で、当然、当社の社員は非常に高い関心を持っています。3位の『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』は100万部を超えたベストセラー、5位の『THE MODEL』も名著とされていますね。

 4位は『データ分析実務スキル検定 公式テキスト』。当社はデータ分析に注力しているため、その分野の検定取得のための本がランクインしました。

 そして、2位の『プロダクトマネジメントのすべて』は当社の技術顧問を務める及川卓也さんが共著者の1人で、本書を利用した輪読会を実施したり、研修受講前の推薦図書に設定したり、幹部に配布したりしています。及川さんの別の著書『 ソフトウェア・ファースト あらゆるビジネスを一変させる最強戦略 』(日経BP)は新入社員の必読書としています。次回はその本について、お話しします。

(後編に続く)

左からNTTコミュニケーションズの三村さん、栗澤さん、櫻田さん
左からNTTコミュニケーションズの三村さん、栗澤さん、櫻田さん
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取材・文/三浦香代子 写真/品田裕美