2023年10月1日、Zホールディングスとその傘下のLINE、ヤフーは、これら3社を中心に合併し、シナジーを拡大させる方針です。2021年3月のZホールディングスとLINEの経営統合後、ヤフーとLINEは読書会を共同で開催してきました。その狙いと効果について、ヤフー コーポレート企画室の大林健司さんとLINE広報室の斉藤幹晴さんに聞きました。
両社にあった本を活用した取り組み
日経BOOKプラス編集部(以下、──) まずは現在のお2人のお仕事を教えてください。
ヤフー・大林健司さん(以下、大林) 私はヤフー コーポレート企画室の責任者をしています。コーポレートグループの中には法務、経理、人事、管理部門などがあり、非常に多くの社員が所属する大所帯です。コーポレート企画室では、部門を横断するさまざまな取り組みをしていて、読書会もその中の1つです。
LINE・斉藤幹晴さん(以下、斉藤) 私はLINEの社内広報チームで、社内報の編集、全社集会や「LINE Library」という社内の図書スペースの運営を担当しています。LINE Libraryは社内のカフェスペースの一角にあります。2020年から社内リーダーの推薦図書を紹介するようになり、社員は自由に手に取り、借りられます。今までトータルで100冊以上を紹介し、そのうち50冊ぐらいは常時展示しています。
もともとヤフーで読書会をされていると聞き、LINE側からも参加させてもらうようになりました。
両社とも本を活用されているのですね。もともとヤフーで読書会をしていたとのことですが、いつから始まったのですか。
大林 2021年6月が初回でした。新型コロナウイルスの流行が始まって1年ちょっとぐらいの時期です。リモートワーク体制を整えるなどコロナ禍に対する緊急対応は乗り切ったものの、オフィスの廊下で雑談することがほとんどなくなり、コミュニケーション不足が課題となっていました。そこで、コミュニケーションを活発にする狙いで読書会を始めました。
もともと社内には読書会を開く習慣があったのですか。
大林 全社的に行っているキックオフ(朝礼)や1 on 1ミーティングほどではないですね。それまでの読書会は小規模で、個々のグループが取り組んでいる形でした。
今の読書会はLINEと一緒に行っているので規模が大きくなり、準備にも時間がかかります。開催は1カ月に1回程度でしたが、最近は2~3カ月に1回のペースですね。
読書会後はSlackでアウトプットを意識
読書会はどんな内容ですか。
大林 読書会はZoomを使ったオンラインで、1時間ほど。選書は役員が自ら行うときもありますし、私たち運営側が役員に、「コミュニケーションをテーマにした本を選んでください」などとテーマを決めて頼むこともあります。それを参加メンバーに知らせて、読書会までに読んでもらうようにします。
冒頭の5分は読書会の趣旨の説明で、「なぜ、この本を選んだか」を役員が説明します。その後、ちょっと場を温める必要があるので、参加者同士で10分ほど自己紹介。なるべく部門やチームが重ならないよう、4人ぐらいのグループに分かれ、1人ずつ「どんな本を読んでいるか」といった一般的な本の話をします。40~50分で2回のグループワークをします。
例えば、『 恐れのない組織 「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす 』(エイミー・C・エドモンドソン著/野津智子訳/英治出版)を読んだ回であれば、「あなたはどういった組織をつくりたいですか」といったテーマを2つ設定し、各グループで話し合います。その場では時間の都合もあるので発表はしませんが、読書会後にSlackに投稿してもらいます。「読書会に参加しただけで終わり」にはならないよう、参加後のアウトプットまで意識していますね。
LINEが読書会に参加するようになったのは、いつからですか。
斉藤 2022年5月が初回です。テスト参加という感じで、LINEからは10人ほど出席しました。もうすでに1年ほどヤフーが運営されてきた読書会でしたので、すごく洗練された仕組みだと感じました。コミュニケーションを活性化できますし、「ぜひ、今後も参加させてほしい」とお願いしました。
本を媒介にコミュニケーションが活性化
参加者の感想はどうですか。
大林 毎回必ずアンケートを取っていますが、5段階評価で5の「とても満足」に○を付ける人が100%の回もあります。自由回答を見ても、「別の部門の人と話せて刺激になった」「立場や階層の違う人と話せて良かった」といった声があります。読書会後も参加メンバー同士でコミュニケーションが継続しているケースがあり、運営側としてはうれしいですね。
斉藤 LINEは2019年からカンパニー制になったため、部門ごとに少し壁ができていたのですが、それでも社内のカフェスペースに行って他部署の社員が話しているのを聞けば、他のカンパニーが何をしているか、雰囲気を感じ取れる状況でした。ところが、コロナ禍で在宅勤務が増え、オフィスでコミュニケーションを取る機会が減ってしまいました。「自分が仕事をしている小グループでしか、コミュニケーションが取れない」という閉塞感や課題感があったのですが、読書会ではそれが解消できています。
私自身も仕事では関わることがないヤフーの人と知り合え、キャリアに対する考え方で意気投合し、盛り上がったりしました。部署や会社を越えたコミュニケーションができ、充実した時間でした。
大林 ヤフーも最初は少人数で始まった会社ですが、今は全社で8000人もいます。すると、当然知らない人もいますし、他の部署の仕事も分からなくなりがちです。会社の発展に合わせて組織を常に最適な形にしていくためには、社内のコミュニケーションが欠かせません。読書会はそうした課題を解決するのに効果的だと感じています。
読書会のグループ分けでは、お互いに「初めまして」になることもよくあるので、自己紹介用のZoom背景を用意しています。あらかじめ「趣味」「好きな作家」「出身地」などを書いておくと、話しかけやすいですね。
Zoom背景も一役買っていますが、やっぱり本を媒介にすると話が弾みますね。今の時代は親しくない人とコミュニケーションを取ろうとしても、プライベートの詳しい状況にまで踏み込むのは難しい部分があります。そこに本を挟み込むと、業務内容やキャリアの方向性など、深い話ができるのがいいですね。
では、次回はどんな本を読書会で取り上げたのか、教えてください。
(後編に続く)
取材・文/三浦香代子 写真/小野さやか



