スポットコンサルをはじめ、企業と知見を持つ個人のマッチングサービスを提供して急成長しているビザスク。同社には書籍購入補助制度や「読書部」があり、本を使った取り組みを活発に行っています。その活動の内容を、同社執行役員PF事業部長の七倉壮さんとPF事業部チームリーダーの井本綾子さんに聞きました。本は、学びを深めるだけではなく、社員同士の理解を深めることにも役立っているといいます。

本から得た知識をチャットで周囲に還元

七倉壮さん(以下、七倉) ビザスクは、ビジネス領域のグローバルなナレッジプラットフォームを運営し、スポットコンサルなどの知見のマッチングを行っています。企業が新しいビジネスに挑戦しようとしたとき、その分野の知見がないと難しいでしょう。例えば、地方の中小企業が「海外展開をしたい」と思っても、知識や情報を得ることが難しいかもしれません。

 そこでビザスクでは、知識や情報を得たいクライアントに対して、「アドバイザー」が個人の知見を生かして助言するマッチングの場──ナレッジプラットフォームを提供しています。2021年11月には米国の同業他社、コールマンリサーチグループを買収し、現在、アドバイザーの数は190カ国52万人以上に。組織や世代、地域といったあらゆる障壁を超え、知見と挑戦をつなぐことが我々のミッションです。

「知見と挑戦をつなぐことが我々のミッション」と話す七倉さん
「知見と挑戦をつなぐことが我々のミッション」と話す七倉さん
画像のクリックで拡大表示

 私はビザスクの執行役員で、コンサルティングファームや金融機関をクライアントとするPF事業部の事業部長として人材育成も担当しています。新卒時は政府系の金融機関に入り、自治体の地域経営や、中堅・大企業の長期融資を担当していました。その後、ベンチャーへの投資も担当しましたが、実はビザスクは当時の投資先。「知見や情報をマッチングするインフラをつくるのって面白いな」と思い、転職しました。

 金融業は、お金の出し手と借り手の間にある情報の非対称性を解消して、お金をスムーズに循環させるソリューションを提供しています。一方、ビザスクは、知見を持つアドバイザーと、知識や情報を求めるクライアントの間にある情報の非対称性を解消し、社会における知見の流動化を促進するサービスを提供しています。そんなビザスクに、学生時代に金融業に憧れたときと同じような熱い思いがわき上がりました。

井本綾子さん(以下、井本) 私も金融機関から転職したのですが、コロナ禍前にビザスクのイベントに参加したことがあり、興味を持ちました。新しいインフラをつくるのって、面白そうだなと。

七倉 ビザスクには社員の一人ひとりが行動指針とする「VALUE」があります。「初めから世界を見よう」「一流であることにこだわる」といった視座の高いものから、「プライドはクソだ」という強烈なものまであるのですが、根底にあるのは「我々は一流のサービスを提供している」という自負です。一流であるためには謙虚に学び続けなければいけないし、学びを邪魔するようなプライドはクソだから捨ててしまえ、と。

 学びを深めるために、やはり知見が1冊にまとめられている本は欠かせません。そのため社内には「書籍購入補助制度」があります。

本を使って学びや相互理解を促す

井本 書籍購入補助制度は、紙の書籍に限られますが、「仕事で役立つ本」を購入することができます。仕事に関係する本なので、やはりビジネス書が多いですね。会社全体の購入冊数は月によって違いますが、だいたい1カ月に15冊ぐらいは購入されています。ただ、経費で買っていい代わりに「本のタイトル」と「自分が読んでみてお薦めだと思ったポイント」を社内のSlackに投稿してシェアするように、というルールがあります。自分の学びを還元するということですね。

「『自分が読んでみてお薦めだと思ったポイント』をSlackに投稿しています」と説明する井本さん
「『自分が読んでみてお薦めだと思ったポイント』をSlackに投稿しています」と説明する井本さん
画像のクリックで拡大表示

七倉 「購入してから何日以内に投稿」という厳格なルールはないのですが、「学びを周囲に還元する」という目的があるので、積ん読にならないように、だいたい1~2週間以内には本のサマリや感想が投稿されていますね。買った本は備品として会社の本棚に並べられ、誰でも借りることができます。

井本 転職直後、ビザスクの雰囲気も学ばなきゃいけない、仕事も覚えなきゃいけない、というときに、会社がお金を出し、学びを推奨するという制度があるのはありがたかったですね。

 また、最近始まった活動として、「読書部」があります。こちらは月に1回、10人ほどがオンラインで集まり、「今月は小説にしよう」「今月は漫画で」などとテーマを決め、自分が好きな本を紹介し合って楽しんでいます。「わが青春の1冊」を紹介したときは、世代の違う社員がお互いを知るよい機会になりました。Slackでもお薦め本を紹介していて、そこだけに参加している人も含めると、読書部は40人ぐらいになると思います。

社内の本棚には書籍購入補助制度で買われた本が並んでおり、誰でも借りることができる
社内の本棚には書籍購入補助制度で買われた本が並んでおり、誰でも借りることができる
画像のクリックで拡大表示

七倉 ビザスクは部活動もサポートしているんですよ。「ゴルフ部」「フットサル部」といった運動系のものもあれば、「グルメ部」もあります。活動の申請をすれば1人1000円/月の部費を会社が補助します。

井本 運動部だとグラウンドを借りたりするのに役立ちますし、グルメ部だとワンドリンクは頼める。いい会社です(笑)。

 今は急速に組織も事業も大きくなっていますが、社内で関わりがあるのは自分の部署やプロジェクトのメンバーだけ、ということが多々あります。でも、読書部のような趣味を軸にした集まりでつながれると、「知らない人だけど同じ本を好きだった」とうれしくなったり、オフィスで他部署の人とすれ違っても「読書部で話した人だ」と親近感がわいたりします。本は学びを深めるものですが、お互いを知るのにもふさわしいツールだと感じています。

七倉 ビザスクの社員は、エンジニアといった開発側の人と、コーポレート部門や営業などのビジネス側の人で構成されています。そこに、新卒や中途採用の人など、バックグラウンドが異なる人が入ってくるので、「新しく入ったメンバーがいかに組織に溶け込めるか」には気を使っています。その人のことを理解するためにも、本は有効なツールとなっています。

「本は学びを深めるものですが、お互いを知るのにもふさわしいツール」と話す井本さん(右)と七倉さん
「本は学びを深めるものですが、お互いを知るのにもふさわしいツール」と話す井本さん(右)と七倉さん
画像のクリックで拡大表示

取材・文/三浦香代子 写真/品田裕美