スポットコンサルをはじめ、企業と知見を持つ個人のマッチングサービスを提供して急成長しているビザスク。書籍購入補助制度や「読書部」で本を積極的に活用し、学びを促したり、社員同士の相互理解を深めたりしています。同社執行役員PF事業部長の七倉壮さんとPF事業部チームリーダーの井本綾子さんに、お薦めの本を5冊挙げてもらいました。

何度も読み返すマネジャー向けの本

七倉壮さん(以下、七倉) 今回は、実際に私が部下やチームメンバーに薦めている本を紹介します。

 まずは『 最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと 』(マーカス・バッキンガム著、加賀山卓朗訳/日本経済新聞出版)。この本はリーダーやマネジャーである自分自身も何度も読み返していますし、リーダーやマネジャーになり立ての人にも薦めています。

『最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと』はマネジャーになり立ての人に薦めているという
『最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと』はマネジャーになり立ての人に薦めているという
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 マネジメントに関する本はたくさんありますが、この本は「最高のリーダーとは何か」「最高のマネジャーとは何か」を一言でバシッと言い切っているチャレンジングな内容。マネジャーなら「マネジャーは部下一人ひとりの特色を発見し、それを有効に活用する」ことだと。

 企業や組織のケーススタディーも面白くて分かりやすいですし、理想のリーダー像を一言で表現しているので、自分の軸としやすい。初めてリーダーやマネジャーになった人には、座右の書となるのではないかと思います。

 実は、私自身は人の話を聞くのが苦手で……3年ほど前にこの本を読んで、「部下のことをちゃんと観察しなくては」と反省しました。もちろん急にできるようにはなりませんが、トレーニングだと思い、言葉や行動に注意しているうちに少しずつ変わってきたように感じています。

井本綾子さん(以下、井本) 私もチームリーダーになったとき、七倉から薦められて読みました。ケーススタディーが分かりやすく、マネジャーやリーダーの部分と同じぐらい、チームに関する部分も刺さりました。「私は何ができて、何をしたくないかをクリアにする」という部分があるのですが、そうやってチームメンバーに接していけたらいいなと。付箋を貼りつつ、何度も読み返している最中です。

『最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと』は、七倉さん(左)だけではなく井本さんも読んでいるという
『最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと』は、七倉さん(左)だけではなく井本さんも読んでいるという
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 もう1冊、七倉に薦められたのが『 ヤフーの1 on 1 部下を成長させるコミュニケーションの技法 』(本間浩輔著/ダイヤモンド社)です。当社でも1 on 1ミーティングを重視しているのですが、「ちゃんと話せているのかな」「チームメンバーの成長につながっているんだろうか」と結構悩んでいたときに薦めてもらいました。この本も具体的な事例が多く、「そもそも、どうして1 on 1をするんだっけ」ということが納得できる1冊です。

七倉 いろんな1 on 1の本がありますが、こちらは平易な表現で書かれていて、具体例も多いので実践しやすいと思います。

組織人としての秀吉のすごさが分かる

七倉 次は、豊臣秀吉の生涯を描いた『 新史 太閤記 』(司馬遼太郎著/新潮文庫/上下巻)です。みなさん、秀吉というと「信長のぞうりをふところで温めた」というエピソードが思い浮かび、要領がいいというか、狡猾(こうかつ)なイメージがあるのではないでしょうか。でも、この本では組織人としてのすごさが描かれています。

秀吉の組織人としてのすごさを描いているという『新史 太閤記』
秀吉の組織人としてのすごさを描いているという『新史 太閤記』
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 戦国時代はさまざまな武将が功成り名を遂げようとしていたときですが、秀吉は「天下統一」という最終的なゴールが明確で、そこに向かって自分が何をすべきか、どう振る舞うべきかを考え抜き、愚直に実行していきます。「今、ここで自分が目立たなければ失敗だと思われる」「組織が次も成功するためには、こう行動すべきだ」と戦略を立てて動いていく。そのための状況観察も鋭いですし、まさにビジネスの原理原則に基づいて行動しているんです。

 いろんな武将を描いた小説がありますが、司馬遼太郎さんの描く秀吉はリーダーシップがあり、組織人としても優秀。天下統一まで、その2つがものすごく高次元でバランスを取りながら話が展開していくので、読み応えがあります。何回も読み返していますね。

井本 「組織」というと、私は『 具体と抽象 世界が変わって見える知性のしくみ 』(細谷功著/dZERO)が面白かったです。一見、組織とは関係なさそうなタイトルですが、人は誰しも具体的な言説と抽象的な言説を行き来して日々を過ごしているということが書かれています。

『具体と抽象』では、会社で起きるコミュニケーションのずれの原因が分かるという
『具体と抽象』では、会社で起きるコミュニケーションのずれの原因が分かるという
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 そのなかで「永遠にかみ合わない議論」など、会社でありがちなコミュニケーションのずれについても説明されています。例えば、「上司の言うことが急に変わった」というパターン。上司からしたら「お客様のために」と一貫した発言をしているつもりでも、部下からしたら「昨日はAと言い、今日はBと言う」と感じてしまう──といった具体的な事例が示され、クスッと笑える漫画も載っています。これを読むと、会社でのコミュニケーションのモヤモヤがクリアになるかもしれません。

 そして、最後にご紹介するのは『 入社1年目の教科書 』(岩瀬大輔著/ダイヤモンド社)。この本は、私が本当に新卒1年目で「仕事って何なんだろう」と悩んでいたときに書店で見つけて、読んだ本です。「頼まれなくても議事録を書け」など、どのように仕事に向き合えばいいかが具体的に説明されていて、実践的な行動に落とし込むことができました。振り返ってみると、なかでも「自分がそこにいる価値をちゃんと出さなくてはいけない」ということを、この本から学んだように思います。そういう意味では感慨深い1冊です。

 10年以上前の本なので、「宴会芸は死ぬ気でやれ」「コミュニケーションは、メール『and』電話」など、少し今の時代にそぐわない部分もあるかもしれませんが、それを差し引いても「こういうやり方が仕事の基本なのか」と学びが多いと思います。新入社員はもちろん、中堅のビジネスパーソンが読んでも初心に帰れる1冊です。

さまざまなタイプの本を薦めてくれた七倉さん(左)と井本さん
さまざまなタイプの本を薦めてくれた七倉さん(左)と井本さん
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取材・文/三浦香代子 写真/品田裕美

リーダー、マネジャーの役割を説くロングセラー

リーダーは情熱的でなくても魅力的でなくてもいい。弁舌に長(た)けていなくてもいい。どこを目指しているか、今何をすべきかを示せればいい。トップクラスの人たちだけが知っている、たった一つのことを明らかにする。

マーカス・バッキンガム著/加賀山卓朗訳/日本経済新聞出版/2090円(税込み)