今の子どもたちが社会人になった時にはAIが今より普及し、多くの仕事をAIが代替するようになっているはずです。それを見据え、大人たちは子どもに何を教えるべきでしょうか。書籍『 わが子に教える AI時代に必要な7つの能力 』(日経BP)では、学校では教わらないけれども、親が子どもに教えるべき未来の能力を7つ挙げました。本特集では、7つの能力のうち1つ目に挙げた「ファクト眼」について解説してきました。今回は少し視点を変えて、子どもに生成AIとどう向き合わせるべきかを考察します。

 僕は講演会やユーチューブで、「友村さん、生成AIは何歳からなら、使わせてもいいですか?」という質問をよく頂きます。こんな質問が生じる理由は次の3つの疑問があるからです。

  • AIがどんな質問にもすぐに答えてくれるから、自分で考える力が衰えるのでは?
  • AIがどんな質問にもすぐに答えてくれるから、依存症になってしまうのでは?
  • なんでも同意してくれるAIが相手になってくれるから、コミュ力が下がってしまうのでは?

 僕たち人類は、自分よりもはるかに物知りで賢い存在に、24時間365日いつでも自由にアクセスできる、そんな社会をいまだかつて経験したことがありませんでした。

 それでも大人は、先ほどの3つの疑問を持ちつつもAIを使っています。それはこれらの疑問をはるかに上回る仕事や日常の生産性の向上という価値を見いだしているからですね。

 しかし子どもたちはどうでしょうか?

 子どもたちは、何の疑問も持たずにAIを使っていいのでしょうか? 使い続けた結果、成長期の脳にどんな影響を与えるかまだわかっていません。何歳までは使わせない方がいい、などもわかりません。現時点で僕が知っている範囲では、科学的なエビデンスがありませんし、誰にも確かなことを断言することができていないんです。既にいくつか論文はありますが、被験者が少なく個人的には信頼していないのでここでは紹介しません。

 従って、ちょっとがっかりさせてしまうかもしれませんが、AIを使わせてもいいのが何歳からか、僕にもわからないんです。

 そこで僕は、子どもたちや親御さん、あるいは教育関係者の皆さんに向けた講演会では、現時点で僕なりに考えた最適解を提唱しています。

 それが、AIの「よ・う・や・ふ」活用法です。これはAIに質問したり相談したりする前に、持つべき心構えです。子どもにこの心構えができるようになれば、何歳から使わせても大丈夫だと考えているんです。つまり、AIを使うときもちゃんと自分の脳を使わせるんです。

 「よ」はよそうする。AIに答えを尋ねる前に、まずは自分で予想しましょう。

 「う」はうたがう。AIが出した答えをうのみにせずに、必ず「本当かな?」と疑いましょう。

 「や」はやってみる。AIの答えに納得できたら、今度は実際に行動してみましょう。

 「ふ」はふりかえる。行動した結果を振り返って、さらに良くなるようにどうすればいいか考えましょう。

「知ること」と「やること」には天と地ほどの開きがある
「知ること」と「やること」には天と地ほどの開きがある
(出所:書籍『わが子に教える AI時代に必要な7つの能力』)
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 特に大事なのは、「や」のやってみるです。AIと対話をしてわかった気になるだけではいけません。行動が伴わなければ頭でっかちになってしまいます。知っているだけなのと実際にやってみたことがあるのとでは天と地ほどに開きがあります。

 3つの例で見てみましょう。

 例1:プリントで渡された算数の宿題で解き方がわからなくて困っているとき

 ×悪い例

 問題を撮影してAIに読み込ませて解いてもらい、答えを丸写しする。これでは理解も浅く、そもそも自分では考えていないので、思考力どころか学力も身に付きません。

 ◯良い例

 「よ」で、よそうする。AIに答えを聞く前にまずは自分でできるところまで頑張って解いてみる。

 「う」で、うたがう。AIが出した解き方をそのまま信じず疑い、もっとスマートな別の解き方がないかAIと対話を重ねてみる。

 「や」で、やってみる。今度はAIに頼らずに自分で実際にもう一度解いてみる。

 「ふ」で、ふりかえる。AIに練習問題を数問作らせて、復習してみる。

 例2:テスト期間中だけど勉強の範囲が多すぎて何から始めたらいいかわからず、焦りだけがつのっているとき

 ×悪い例

 「中学1年生で、初めての中間テストです。どうやってテスト勉強を進めればいいか、順番に教えて」と抽象的に丸投げする。

 〇良い例

 「よ」で、よそうする。どんな手順で勉強すれば効率よくテストで結果を出せるか? 何が集中力やモチベーションを下げ、何に時間を奪われているのか? 朝から寝る前までの自分の生活を振り返り、AIに相談する前にまずは自分で計画を立ててみる。

 「う」で、うたがう。AIからの回答をそのままうのみにせず、自分の生活習慣や勉強スタイルに合ったアドバイスなのか熟考する。

 「や」で、やってみる。アドバイスを元にテスト勉強を計画通りに進めてみる。

 「ふ」で、ふりかえる。結果を踏まえて、今回のテスト勉強の期間は自分で納得のいく準備ができたのか、できなかったとしたら何が原因だったのか熟考し次回の期末テストに生かせるよう、自分なりの勉強スタイルをブラッシュアップしていく。

 例3:親友とけんかしてしまい、何度も謝っているけど、全然許してもらえない。どうしても仲直りしたいとき

 ×悪い例

 「友達とけんかしたとき仲直りする方法を10個教えて」と抽象的に丸投げする。

 〇良い例

 「よ」で、よそうする。今の謝り方が悪いのか、それとも謝罪以外に何かが必要なのか、親友の立場になってじっくり考えてみる。怒りの原因はどこにあるのか予想して、これまでの謝罪以外に何をすべきか、AIに相談する前にまずは自分でアイデアを出してみる。

 「う」で、うたがう。AIに投げかけてアドバイスをもらっても、そのアドバイスをそのままうのみにせず、AIとの対話を重ねる。「コレかも!」というアイデアになるまで対話を繰り返す。

 「や」で、やってみる。勇気を振り絞って、もう一度親友に謝る。

 「ふ」で、ふりかえる。もしも許してもらえたら、なぜ今まで許してもらえなかったのに、今回は許してもらえたのか自分なりに振り返ってみる。完全に仲が打ち解けたら、「ところで、どうして今回は許してくれたの?」と思い切って本人に聞いてみる。そして、もう繰り返さないようにしっかり心に刻む。

 いかがですか? ちょっと難しそうに見えますが、習慣化するように「よ・う・や・ふ」活用法を思い出しては繰り返してください。

(写真: FAMILY STOCK/stock.adobe.com)
(写真: FAMILY STOCK/stock.adobe.com)

(書籍『わが子に教える AI時代に必要な7つの能力』を基に再構成)

日経クロステック 2026年5月21日付の記事を転載]

AI時代でも価値が劣化しない「人間の力」とは? AIの浸透で、フェイクが増え、技術が答えを教えてくれ、情報も人も個性を失い、分断が進み、先人の知恵が役に立たず、お金を稼ぎにくく、変化が激しい時代がやって来ます。本書はこの現実を直視し、親が家庭で教えるべき7つの能力「ファクト眼」「クエスチョン・デザイン」「スピークアップ」「ソーシャルスキル」「レジリエンス」「マネーユース」「ライフハンドリング」を提示します。

友村晋(著)/日経BP/1980円(税込み)