社員に課題図書を設定する企業や、本の購入費用を負担する企業が多くあります。そこで日経BPは、企業向けの電子書籍サービス 「日経BP Insight Books」 を開始しました。このサービスでは、日経BPに在籍するさまざまな分野のプロフェッショナルたちがおすすめの10冊を選んでおり、この連載で紹介していきましょう。第1弾は、ミリオンセラー『ファクトフルネス』や『ビジョナリー・カンパニー ZERO』『HARD THINGS』を手がけた編集者、中川ヒロミのおすすめ本です。

 どんな仕事でも、次の時代を読み、新しいサービスや事業を生むことはとても重要です。ビジネス書を読んだだけで先を読めるようになったり、ヒットサービスが生まれたりするわけではありませんが、今を正しく知り、常識を疑い、先を見通し、そして専門外の知識や教養を得ることは、新しいアイデアにつながります。こうした視点でおすすめの本10冊をご紹介します。

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今を正しく知る2冊

1. 『A, T. カーニー 業界別 経営アジェンダ2024』A. T. カーニー編、日本経済新聞出版

 経営コンサルティング会社のA. T. カーニーが、業界別の動向とこれからを見通す一冊です。毎日の多くのニュースが流れてきますが、各業界でそのニュースがどんな位置付けなのかと聞かれるとなかなか答えにくいもの。本書は、業界ごとに今、何が起こっているのか、どんな課題があるのか、これからどう変わる可能性があるのかを整理して見せてくれます。

 広く業界の動きがわかるのも大事ですが、焦点となっているトピックについてはグラフや図表で詳細に解説があるので、深く理解できるというのも特徴です。本書は業界ごとに章分けされているので、興味がある業界だけランダムに読むこともできるので、「積ん読」のプレッシャーも感じません。

2. 『BCGが読む 経営の論点2024』ボストン コンサルティング グループ編、日本経済新聞出版

 戦略コンサルティング会社のBCGが、重要な8つの経営論点を挙げ、論じる本です。さらに、これからどんなことに注意を払うべきなのかも俯瞰(ふかん)できます。

 本書の冒頭では、「未来を正確に『予測』することは、もはや不可能」だが、「変化を『察知』することはできる」と書かれていますが、大きな潮目の変化に気づかせてくれる本なのです。

 エネルギーシフト、サーキュラーエコノミー、人事戦略など、業界を問わず頭に入れておきたいトレンドがわかります。

常識を疑えるようになる本

3. 『安いニッポン』中藤玲著、日経プレミアシリーズ

 多面的な視点を持つことの重要さを教えてくれる一冊です。食品の値段や電気代が上がり、日本人はインフレを実感していますが、実は海外と比べると激安の場合もあります。本書は、ディズニーランドの入場料やマクドナルドのビッグマックの価格を比較しながら、その実像に迫ります。

 以前より物価が上がっていることも、欧米に比べて日本が安い国になっていることも、どちらも事実です。『ファクトフルネス』では過去のデータと比較すると「世界はよくなっている」と書かれていますが、ファクトと比較が重要になります。本書もたくさんのファクトとともに、ものの見方を教えてくれる一冊です。

4. 『「低学歴国」ニッポン』日本経済新聞社編、日経プレミアシリーズ

 日本の教育の現状をまとめた一冊。教育業界以外では仕事に関係ない本に思えるかもしれませんが、この本も常識と思ってきたことが違うということに気づかされる本です。

 受験は今も昔も試練かもしれませんが、その様相は変わっていることもあれば、変わっていないこともある。例えば、変わったのは一般入試の入学者が約半数と減り、塾に依存する人が増えていること。難関大学が難しいのは変わらないが、世界で日本の大学の評価は下がっています。

 豊富なデータと解説を見ていくと、違う景色が見えてきます。自分の常識は多くの人、そして世界の常識と違うのかもしれないと感じさせてくれます。

5. 『戦略ごっこ』芹澤連著、日経BP

 マーケティングの本ですが、ビジネス全体にわたって大事なことを教えてくれる名著です。

 仕事で戦略を立て、KPIを設定して目標達成のために努力することは大事ですが、それだけに集中すると、そもそもその戦略やKPIが正しいのか考えなくなりがちです。本書の著者は、「『新規と既存、どちらが大事か?』という問い自体が適切なんだっけ?」「それは本当に『ファンの声』ですか?」といった根本的な問いを繰り出し、ファクトを基に考えます。

 生成AIなどの新しい技術が登場してユーザーの行動が急激に変わるなど、変化が激しい時代に生きるために大事な考え方がわかる本なのです。

人権、SX、半導体で先を見通す

6. 『すべての企業人のためのビジネスと人権入門』羽生田慶介著、日経BP

 これからビジネスで重要なテーマとなる人権について解説した一冊です。冒頭では海外に比べると日本は人権意識が低いと指摘していますが、名だたる大企業が低評価であることに驚きます。これからビジネスをする上でどう人権問題に対応すべきか、対応しないとどんなリスクがあるのか、幅広く解説しています。

 対応が遅れれば、不買運動、取引停止、輸入禁止など大きな問題につながる可能性もあり、今後の事業を考える上で、読んでおきたい本です。

7. 『2030年のSX戦略』坂野俊哉、磯貝友紀著、日経BP

 サステナビリティに関連して、2030年までに何が起きるのかを業界別に予測した本です。サステナビリティは重要だとわかっていながらも、仕事の現場ではまだどう対応すべきか戸惑いがあるのではないでしょうか。

 本書では、「サステナビリティ経営は、経済成長を否定するのか?」「資本主義が悪いのではないか?」「経営者は短期的な投資家の言うことは聞かなくていいのか?」など率直な質問に答えてくれます。

 食品・飲料業界、製造業界、金融業界、エネルギー業界に分け、2030年に向けた戦略が整理されており、とても役立つ一冊です。

8. 『2030 半導体の地政学[増補版]』太田泰彦著、日本経済新聞出版

 巨大ネット企業のデータセンターを支えるのは、半導体です。重要性を増している半導体を巡る政府間の思惑を知ることができる本です。

 本書の魅力は、半導体の専門知識があまりなくても、臨場感をもって読めること。半導体メーカーの競争は技術力だけではなく、政治的な思惑に左右される様子がリアルにわかります。

 半導体業界ほどではなくても、サービスや製品以外の要素で成否が変わることはあります。読んでおくと視野が広がる本です。

専門外の知識を得る

9. 『LIFE SCIENCE』吉森保著、日経BP

 生命科学者でオートファジー研究の第一人者である吉森保氏が、生命科学について解説した本で、とてもわかりやすく説明してあり、専門知識がなくてもその世界をよく理解できます。

 人間の体をつくっている細胞やタンパク質の仕組み、最先端のオートファジー研究の解説を読みながら、科学的に考えるというのはどういうことなのかがわかってきます。最先端の研究とその仕組みの解説を理解することは、未来を考えるときにも役立ちます。

10. 『日経テクノロジー展望2024 世界を変える100の技術』日経BP編、日経BP

 大きな変化は、技術とともにやってきます。どんな研究が進み、技術が生まれているのか、日々取材を重ねている日経BPの専門誌の編集長や記者たちが、これぞという技術を選び、解説した一冊です。

 取り上げるのは、IT、医療、エネルギー、モビリティ、建築・土木など非常に幅広いのも本書の特徴で、世界にはこんな技術もあるのかと好奇心が湧いてきます。ビジネスパーソン767人が答えた2023年と2030年の期待度ランキングも掲載されており、どんな技術が広く注目されているのかも見えてきます。最新技術の全体を広く見渡せるので、技術以外の仕事をしている方にもおすすめです。

「Insight Books」開始!
 日経BPは2024年6月から、企業のチームで日経グループの書籍を利用できる新サービス「Insight Books」を開始しました。経済・経営やテクノロジーを中心に、幅広い分野にわたる「日経の本」の知見を部署やチームのメンバーと共有することで組織の知識や情報のレベルを高めることができます。( 詳しくは、こちら )。