職場や消費の現場で、あるいは少子化のキーパーソンとして、広く注目される「Z世代」。「会社をすぐ辞める」「政治に無関心」「恋愛・結婚は面倒」…こうしたメディアや世間で語られるイメージの背後で、実際の令和の若者・Z世代の多くは何をどう考え、なぜそのように振る舞っているのでしょうか? 世代・トレンド評論家の牛窪恵さんが、Z世代1600人への大規模調査と55人へのインタビュー調査をもとに書いた『Z世代の頭の中』(日経プレミアシリーズ)から抜粋して、令和の若者のリアルを紹介します。第2回は、Z世代の政治や投票への興味関心について。
政党や政治家の話は、「重い」?
「留学先から戻ったとき、日本の学生があまりに政治の話をしないので、改めて幻滅した」と話すのは、大手住宅メーカーに勤めるミサさん(24)。
もともと政治ジャーナリズムに興味があった彼女は、大学3年生のとき、1年間ワシントンに留学。移民や日本人のルーツについて学ぶとともに、市議会議員に取材したり、現地の多様な人種の学生たちと日々、選挙や政治について意見を戦わせたりと、充実した毎日を過ごしました。だからこそ帰国した直後、選挙(2019年の参議院議員選挙)が目前に迫っているにもかかわらず、政党や政治家について一切話さない同級生を見て、「いつまで日本はこうなんだろう」とため息が出た、と言います。
半面、「議論ができないなら、話しても意味がない」「話せば、友達に『重い』と見られる」と感じ、帰国後は政治の話題に触れなかったとのこと。
現在の配属先は、貧困家庭の衣食住など、社会課題の解決に向き合える部署で、「SDGs(持続可能な開発目標)の観点から、独自に政治や政治家をウォッチしています」とミサさん。
投票には、何があっても必ず行く。事前の情報収集でも、新聞やテレビ、ネットニュースやSNS(交流サイト)まで欠かさずチェックし、「もしこの議員が当選して、この政策が採用されたら、社会にどんな影響があるかをシミュレーションして投票に臨みます」。友達とは議論できない、でも自分の中で、何度も「この人でいいの?」を自問自答するそうです。
Z世代が投票に行く理由とは?
今回、CCCマーケティング総合研究所の協力のもと、24年12月にZ世代1600人以上に対して実施した定量調査では、Z世代に「選挙」についても聞いてみました。友人に、対面で「『政治(選挙を含む)関連』について話せる」と答えたZ世代は、わずか1割(10.1%)のみで、この割合は、「仕事(会社)」(40.3%)や「家族」(22.0%)、「お金(貯金・借金)」(16.7%)の悩みなら話せる、とした若者より、はるかに少ないことが分かりました。
昭和の時代も、おもにバブル期以降は「宗教や政治の話はタブー」だと言われたものですが、ミサさんが言うように、令和の若者たちも、やはり友人と政治や選挙について話す人は少数派、のようです。
また、別の質問項目で「選挙の投票に行くとすれば、それはどんな気持ちからか」と尋ねたところ、1~3位は、「よりよい政治には投票が大事だから」(35.8%)、「若者の声を政治に届けたいから」(25.5%)、「この国を変えたいから」(20.7%)で、いずれも「義務だと思って仕方なく」(19.0%/4位)を上回りました【図1】。
このことからも、Z世代の多くが、必ずしも選挙や投票、政治を「意味のないこと」と考えているのではない様子がうかがえます。
「落選させたい」から投票に行く
一方で、同じく「投票に行く理由」を聞いた質問に対し、Z世代の回答の7位は「支持する政党・候補者がいるから」(11.7%)、そしてそれをわずかに上回った(5位)のが、「落選させたい政党・候補者がいるから」(12.9%)でした。
つまり、Z世代を投票へと向かわせるのは、「この人を当選させたい」との応援感情と同程度か、それ以上に強い「この人を落選させたい」との思いである可能性があるのです。
ちなみに、後者の「落選させたい」は、24年秋の米国大統領選挙の際にも、TikTok上で米国のZ世代など若者たちが、「Cancel(ing) Out(帳消しにする)」との投稿と独自のダンス(振り付け)を次々アップして、トレンドになりました。
具体的には、自分の支持者と異なる候補者に投票した家族や恋人(パートナー)の投票を「なかったこと」にするために、「(対立候補に)投票しに行くんだ!」などとポストするもの(「VOUGE(United States)」(Condé Nast)[24年10月31日掲載])。これに比べると、日本のZ世代の「落選させたい」は少し硬い印象で、勧善懲悪や正義感に近い感覚かもしれません。
近年、社会のルールや倫理を乱すような存在(不倫や脱税など)や、既得権益を享受しているかのような強者が、SNS上で叩(たた)かれるシーンが顕著で、「老害(高齢者が実権を握り続け、若返りが行われないこと)」や「オールド・ボーイズ・クラブ(男性中心社会で培われた企業コミュニティ)」、「マスゴミ(テレビや新聞、雑誌などマスコミを<ゴミと>批判するネットスラング)」などと評される対象が、よくやり玉に挙げられます。
今回のインタビュー調査では、そうした強者をSNSなどで叩く「超劇場型」の候補者や政治家に心酔する若者も、ほんの一部ながら見受けられました。彼らは正義感が強いからこそ、「旧態依然とした存在を許してはおけない」と考えやすいのではないでしょうか。
ただ、そこには若干の危うさもおぼえます。
とくに昨今、SNSやネット上では「フィルターバブル」や「エコーチェンバー」が問題視されています。前者は、自分の興味ある情報ばかりがユーザー自身に膜(バブル)に包まれたように表示され、興味がない、もしくは反対意見などが排除(フィルタリング)されてしまうこと。後者は、おもにSNS上で自分と似た興味関心を持つユーザーとばかりコミュニケーションをとることで、同じような意見を何度も聞くようになり(エコー)、まるでその空間(チェンバー)が全世界かのように思い込んでしまうことです。
Z世代の多くは、大海原で多くのいいねをもらうより、小さな川辺で、共感し合える仲間と盛り上がりたいもの。そのうえ政治の話題は、不特定多数と話題にしづらいため、SNSではよりいっそう偏った価値観から脱しにくいとも言えるでしょう。
牛窪恵著/日本経済新聞出版/1210円(税込み)
■開催日時:2025年7月18日(金)12:00~13:00
■参加:事前登録制、アーカイブ視聴
■開催方法:Zoomミーティング
■詳細・お申し込みはこちら ⇒ 7/18『Z世代の頭の中』出版記念/牛窪恵オンラインセミナー


