日々変化と進化を続けるAI環境。そこに生じる多様なビジネスリスクの実態と実践的な対処方法を日本IBM AI倫理チームが解説する『 AIリスク教本 攻めのディフェンスで危機回避&ビジネス加速 』。発売間もない本書を「企業のAI活用に関わるビジネスパーソンの必読書である」と熱く推すメッセージが届いた。米ニューヨーク州弁護士にして、国内大手製薬会社でエシックス(倫理)とコンプライアンスの責任者を務める平田千佳さんの書評を、どうぞ。
前向きなAI活用を鼓舞するAIリスク対策の意欲的な教本
手元に届いてすぐ、丸1日かけて一気に目を通した。今まさに求められており、必要かつ最新の情報がぎゅっと詰まった「リビング・ドキュメント(生きた資料)」だと感じた。「AIリスク」に関わるすべての関係者が前向きにAI活用を進め、その進化の果実を味わえるように鼓舞してくれる「AI倫理3.0」時代の意欲的な教本、それが本書である。
筆者は現在、ある大手製薬会社でエシックス(倫理)とコンプライアンスの責任者を務めている。製薬各社は、生成AIを含む最新のAI技術の事業への導入を急いでおり、筆者の立場にいる各担当者には、それに伴うAIリスクの検証や改善、倫理的な利用法の指導が求められている。だが、筆者も急速に進歩するAI技術とそれを取り巻く状況の変化の速さにより、どのように仕事を進めるべきか戸惑いと迷いが正直あった。本書は、企業においてAIを導入する担当者や、筆者のようにAIの利用者を指導・監督すべき部門が漠然と不安を持っているリスクの検知・管理の手法について、具体的かつ分かりやすく説明してくれている。
ビジネスリーダーと一緒に攻めの経営を支える方策を考えるために
筆者が属するようなAIリスクをマネジメントする部署は、時々刻々と進化するAIを導入してビジネスを進める社内のリーダーとパートナーシップを組み、一緒に攻めの経営を支える方策を考えていく必要がある。だが、多様なAIリスクをどのような目線で評価し、どう検討すべきかの方針については、多くの企業がまだ手探りではないだろうか。
本書はこれに対して、抽象的になりがちな社会的受容や社会的評価という目線や、AI倫理の検討の軸をきちんと可視化してくれている。AIリスクマネジメント業務に就く我々のような者にとっては、明日からすぐにでも使える極めて有用な実用書といえる。
特筆すべきは、企業をAIリスクの危険から未然に守る「AIガバナンス」に関する記述の豊富さだ。IBMと日本IBMの経験と実績に基づいた具体的なアイデアやツールが惜しみなく紹介されている。AIリスクマネジメント手法のオープンソース化と言える圧巻の内容である。自社の体制構築へのヒントだけでなく、これから我々が取得すべきスキルや集中すべき能力開発のヒントが詰まっている。
