帰省のお供に! スマホに苦手意識があるシニア世代を、家族の立場から支えるプロのサポート術を紹介。「教えているとついケンカになりがち」「親が詐欺に遭わないか心配」と悩むお子さん世代に、親子関係がもっと楽になるヒントをお届けします。今回は「スマホがなくても困っていない」と言う親に今、あなたが伝えるべきことについて。(本連載は、書籍『家族みんなが楽になる!親にスマホをもっと使ってもらう本』に収録されている内容から一部を抜粋してお届けします)
これまでデジタル機器に縁のなかったご両親。お父さんもお母さんもスマホを使っていません。今回、久々に帰省した息子さんは、家族みんなで回転寿司を食べに行ったのですが……。

息子:お父さんとお母さんは何がいい?
父親:そうだな、まず光り物がいいな。適当に頼んでくれ
母親:わたしも、まかせるわ
息子:最近のチェーン店はタッチパネル式が増えたよね。お父さんたちは、使えてるの?
父親:使わなくても、店員を呼べばメニューを頼めるから大丈夫だ。別に困ってはいない
母親:混んでいると、ちょっと時間がかかるし、なんだか店員さんにも申し訳ないけどねえ。最近は、ファミレスなんかもそうよ
息子:お父さんたちも、そろそろスマホとか、こういうのも使えるようにしたほうがいいんじゃない?
父親:もう、私はスマホを持っているぞ
息子:え、持ってるの? じゃあ、なんで使わないの?
母親:(小声で)使おうとしたんだけど、ちょっと挫折してるみたいなのよ
息子:そうなんだ、スマホなんて簡単だよ
父親:(ムっとして)これから、やろうと思ってたんだ!
息子:じゃあせっかくだし、お母さんもこの際、スマホを使い始めてみたら?
母親:そうねえ、あなたが手伝ってくれるなら、お母さんもやってみようかしら
そのちょっとしたひとことがケンカのもと
息子さん、ちょっとしたひとことが、お父さんの気に触ったかもしれませんね。シニア男性は、人に指示をする立場の経験が長かった方も多く、プライドもあるので、若い人に教えを乞うことに抵抗があるかもしれません。家族となると、近い関係だけにかえって素直に聞きにくい、そんな方も多いようです。かといって、自分一人ではなかなか思うようにはいきません。
スマホができなくても、死ぬわけじゃない?
長年講師をしていると、さまざまな場でスマホを初めて使うシニアの方々に接する機会があります。例えば、地域主催のスマホ相談会のようなものですね。そういった場で、よく聞くひとことがあります。
「いいよ、別に」
もしかしたら読者の方も、同じようなことを親御さんに言われたことがあるかもしれません。これがスマホ以外のものだったらどうでしょう。親御さんにお菓子やお酒をすすめたら、大抵は試してもらえるのではないでしょうか。
「お父さんの好きな○○のお菓子買ってきたけど、食べる?」
「うん、食べる。お茶も煎れてくれよ」
となりますよね? スマホの場合は、なぜ断られてしまうのでしょうか。
「いいよ、別に」の裏にあるものは?
スマホだと、なぜ「いいよ、別に」となるのでしょう。「別に」の後につながる言葉は、何でしょうか?
「いいよ、別に。自分でなんとかするから」
「いいよ、別に。面倒くさいから」
さらに掘り下げると、こうかもしれません。
「いいよ、別に。今から新しいことをするのは、もうおっくうだし、そんなに出番があるとは思えないし」
「いいよ、別に。スマホができないからって、死ぬわけじゃないんでしょう」
確かに「スマホができなくても死なない」のはおっしゃるとおりです。少なくとも、今のところは。
社会のデジタル化はもう止まらない
新型コロナウイルスの流行後、「誰一人取り残さないデジタル化」という構想が発表されました。デジタル化を推進することによって社会インフラを整備し、国は地方の社会解決へ向けてデジタル活用を推進していくことを主導する、という構想です。
そのため、国では実際にデジタル推進委員制度を設け、日本中でIT支援やスマートフォン講座を展開しています。その一環として、私の教室もお手伝いさせていただいています。
これだけ手厚く国民を支援するのは、親切心だけではありません。21世紀を日本で暮らしていく上では「スマホの操作は必須のものとなる」というメッセージでもあるのです。
例えば、市や県などの地域広報誌。親御さん世代では、地域の催し物や公共サービスの情報を知るためのツールとして目を通されている方も多いと思います。これも、年々デジタル化が進んでいます。
問い合わせの窓口は電話からスマホチャットやアプリに移行して、行政の手続きもデジタル化されてきています。また、レストランでの注文や会計がタブレットやスマホ会計になったりもしていますよね。
通院のためにタクシーを呼ぼうとすれば「アプリのほうが早いのでぜひご利用を」と言われたり、遊園地や美術館に行こうとしたら、紙のチケットではなくスマホを見せるタイプに変わっていたり。テレビの画面にもQRコードが表示される時代です。
「いいよ、別に」ではすまされない状況に、ひしひしとなってきているのです。これからの社会、スマホとインターネットを使えることは必須になってきます。
60代や70代はまだ若手!
「でも、うちの親はもう無理かも……」
そんなふうに心配されるお子さんも、よくいらっしゃいます。講師経験から言わせていただけば、70代はもちろん、80代でもスマホは使えます。手が震えるなど操作がしづらい症状をお持ちであったとしても、タッチペンを使うなどの工夫をすれば、その方なりに使えます。私の教室の生徒さんは90代の方もいらっしゃいますから、60代、70代はまだまだ若手です。
スマホを使えるかどうかは、年齢で区切られるものではありません。やる気ときっかけさえあれば、何歳でも、どなたでもまだ間に合います。

増田由紀著/日経BP/1870円(税込み)
