「お客様の未納料金があります。至急下記までご連絡ください」――もし、親のスマホにこんなメッセージが届いたらどうしますか? 「まさかそんなものに引っかかるわけがない」とあなたは思うかもしれません。しかし、新刊『家族みんなが楽になる!親にスマホをもっと使ってもらう本』の著者で、1万5000人のシニアにスマホを教えてきた増田由紀氏は「詐欺はその『まさか』という油断につけ込む」と警鐘を鳴らします。

危ないのはスマホではなく子どもの「無関心」

 親にスマホを使ってもらおうと考えたときに「詐欺や迷惑電話が怖いから…」という方もいらっしゃいます。親御さんを心配するのは当然ですよね。

 でも、スマホがあるから危険なのか、逆にスマホがなければ安心なのかといったら、決してそうではありません。ガラケーでも家電話だとしても、引っかかるときは引っかかってしまいます。

 怖いのはスマホではなくて、子ども側の「無関心」にあります。残念なことに、いまや高齢者を狙った詐欺は避けられません。ただ遠ざけているだけで、何の守る手段も持たないままでは、むしろ危険が増すともいえるでしょう。

増田由紀(ますだ・ゆき)氏
増田由紀(ますだ・ゆき)氏
2000年から千葉県浦安市でシニアのためのスマホ・パソコン教室を運営、2020年より完全オンライン教室に移行。「“知る”を楽しむ」をコンセプトに、これまで1万5000人を超えるシニア世代に、スマホの魅力と使い方を指導。シニア世代でもわかりやすいスマホの解説には定評があり、自治体や企業主催のセミナーで講師を務めるほか、新聞や雑誌でも活躍中。YouTubeチャンネル「ゆきチャンネル」では、スマホの操作法のコツを多数配信。著書に『世界一簡単!70歳からのスマホの使いこなし術』(アスコム)『いちばんやさしい 70代からのiPhone』(日経BP)などがある。

やることは3つだけ。親のスマホを守る設定とは

 前回、買ってきたばかりのスマホは「荒れ地」だとお話ししました。スマホを「安心な道具」にするためには、いくつかの設定があります。なにもつきっきりで丸1日かかるようなものではありません。帰省などの際に、ほんの10分程度でできる簡単な設定をご紹介します。

設定1:「知らない電話は出ない」を徹底するために電話帳を整理する

 1つ目は「電話帳の整理」です。家族や知り合いなど、よく電話がかかってくる人はしっかり電話帳に登録して、名前が出るようにする。その上で「名前が出ない電話には出ないでね」と伝えましょう。

 親と一緒に履歴を見て「この人は誰?」と質問すれば「この電話番号は生協よ」など、登録が必要な電話番号はある程度わかるはずです。

設定2:合言葉は「スクショしてLINE」。家族で詐欺を撃退する

 2つ目は「スクリーンショット」のやり方を教えることです。怪しいショートメールが来たり、インターネットを見ていたら急にポップアップが出てきたりした場合など、「びっくりしたらまずはスクショしてもらう」ことを習慣にしましょう。

 詐欺師は、焦らせて周りに相談できないように孤立させようとします。たとえ離れていても、何かあったときにすぐに家族で共有できるようにしておけば、それは強固な防波堤になります。

設定3:キャリアの使える安全サービスを確認する

 最後は、契約しているキャリアが提供している安全サービスを確認することです。スマートフォンのプランはオプションなどが複雑で、シニアの方が自分で取捨選択をするのは難しいものです。

 キャリアのサイトを調べてみて、「迷惑電話ストップサービス」のように使えそうな設定があれば、有効にしておきましょう。

怖がるだけでなく、スマホを「安全を守る道具」にする

 スマホは趣味など生活の楽しみを大きく広げてくれます。最近では美術館のチケットも紙ではなくQRコードになっていたりします。シニアの方にお話を聞くと、スマホを持っていても、旅行先でスマホをカバンの一番下に入れっぱなしという方もいらっしゃいます。なぜかというと「お金がかかるんじゃないか」と思って、写真すら撮らないんだそうです。そうした無用な心配は、家族が取り除いてあげたいですよね。

 スマホがあってもなくても、詐欺被害にあってしまう可能性はあります。むしろスマホをしっかりと設定して活用することで、安全のための防波堤とすることもできるのです。詐欺だけでなく、スマホは震災などの災害時にも親の安全を守ってくれる命綱になります。

 親のスマホがどのような状態なのかわからないという方は、ほんの少しの時間で構いませんので、ぜひ次に帰省したときに設定を見てあげてください。そして、スマホが親や家族の安全を守る道具になるよう、連絡手段としてしっかり定着するように整えてあげてください。

■親の安全を守る3つのチェックリスト
●電話帳を整理する
●スクショの方法を教える
●キャリアの安全サービスを確認する

 『家族みんなが楽になる!親にスマホをもっと使ってもらう本 』では、よくあるエピソードを会話形式でまとめながら、親におすすめのスマホ設定を多数ご紹介しています。ぜひ帰省の際の手土産にしていただけると幸いです。

(写真:taka/stock.adobe.com)
(写真:taka/stock.adobe.com)

取材・文:西 倫英=日経BOOKSユニット第2編集部

帰省のお供に! スマホに苦手意識があるシニア世代を、家族の立場から支えるプロのサポート術を紹介。実際に教室であった「あるある」なエピソードをもとに、スマホを使うのが楽になるポイントを解説します。

増田由紀著/日経BP/1870円(税込み)