多くの人は資料に情報を詰め込んだり、無目的に枚数を増やしたりしていく。細かい情報が詰め込まれた資料を見てどこか安心し、見栄えを楽しんでしまう人もいるであろう。けれども、そこには一番大事なプロセスが抜けている。その改善テクニックを、『 ロジカル資料作成トレーニング コンサルタントが必ず身につける定番スキル 』(丸健一著/日経BP)から抜粋・再構成してお届けする。

一番伝えたいことを絞る

 「手元の資料の中で、最も相手に伝えたい一文に線を引いてください」という質問に対して、即答できる人は少ない。

 多くの人は定められたフォーマットの中に情報を詰め込んだり、あるいは無目的に資料の枚数を増やしていったりする。夜遅くまで資料を作り、細かい情報が詰め込まれた資料を見てどこか安心する。パワーポイントの資料をPDF化してみたりして、見栄えを楽しんでしまう人もいるであろう。

 けれども、一番伝えたいことを絞る作業を行っている人は少ない。本来必要なのは伝えたいことを絞る作業のはずだ。誰も会議でダラダラ時間を過ごすことは望んでおらず、何が結論なのかがよくわからない誰かの長い発表を聞くのは、苦痛で仕方がないはずだ。発表を聞かずに、チャットをしたり、メールをしたりした経験は多くの人があるのではないだろうか。

あなたは会議で何を一番伝えたいのか(写真/Shutterstock)
あなたは会議で何を一番伝えたいのか(写真/Shutterstock)
画像のクリックで拡大表示

 にもかかわらず、伝えたいことを絞る作業をなぜか人は嫌がる。あなたは何日もかけて情報を詰め込んだ資料を作った。その資料を持ち、会議室で報告相手を待っていたら急に扉が開いて、「ごめん、緊急事態で会議に出られない。もし大事なことがあるなら1分で教えて!」と言われたと想像してほしい。

 あなたはしどろもどろになり、手元の資料をあさる。「あっ、うっ、えっと」と返答ができないでいると、「何もないね? じゃあ、またにしよう。秘書と日程調整しといて!」と言われて扉を閉められてしまう。あなたは、自分は一体何を準備してきたのだろうかと、ちょっとした自己嫌悪に陥る。

伝えたい結論は何か、自分に問いかける

 せっかく作った資料を活かすためには、冒頭の質問を自分に問いかける必要がある。「この資料で、最も伝えたい一文はどれなのだろうか?」と。残念な資料を修正するプロセスも、この問いかけから始まる。資料で伝えたい結論がわかれば、その結論がどんな質問に答えるために書かれているのかがわかる。例えばあなたが、大量に文章が詰め込まれている資料の中から、「売り上げを回復するために、競合に対抗して商品の価格を下げるべきだ」という部分に線を引いたとしよう。

 この資料を作る目的(問い)は、「売り上げを回復するために自社が実施すること」を伝えることで、その結論は、「競合に対抗して商品の価格を下げるべきだ」ということになるはずだ。ここまで見えてくると論理の肉付けを始められる。

 どうして、競合と比較して商品の値段を下げる必要があるのだろうか? それはすなわち、販売価格を下げてもそれを埋めるだけの販売量の増加が見込めることを示唆している。それは本当なのだろうか? あるいは、本当に競合と真正面から戦わなくてはいけないのだろうか? 売り上げを上げるために他の手段は検討しなかったのだろうか? このように出てきた疑問に答え、自分が資料で書きたい結論を支えるための根拠を整えなくてはいけない。

 多くの場合、ここまで考え直して元の資料を見ると、欲しい情報は書かれていない。新たに分析や情報収集が必要になることがほとんどだ。資料の目的・結論・根拠を考えること、複数枚の資料の構成を考えることができていないと、ここで示した残念な資料を修正するプロセスは、ほぼ確実に必要になるはずだ。

 ところが、日々の会社員生活で、残念な資料を適切に修正された経験を持つ人は少ない。それ以前に、自分の資料が残念な資料なのか、そうだとして何が問題なのかを、論理だって説明された経験のある人は少ない。この状態は全ての会社にとって時間の無駄だ。会議で決めたいことを議論するための資料を作ることができない上に、それを直す術もないのだから。

誰でも「伝わる資料」に改善させるノウハウを説く、画期的な1冊。

ぱっと見、ちゃんとしているのに、「残念な資料」「伝わらない資料」はそこら中に転がっている。年齢、役職、業種を問わず、様々な資料を添削してきたコンサルタントが、その原因と対策について詳細に解説する。

丸健一著/日経BP/1760円(税込み)