世界の企業や工場を対象に業務改善の指導を続ける豊田エンジニアリング代表取締役の堀切俊雄氏が、書籍『トヨタ流原価マネジメント』(日経BP)を著した。確実に利益を生み出すためにトヨタ自動車が実践している優れた原価マネジメントを基に、多くの企業が実践できるように体系化したものだ。本書の抜粋を掲載する。第3回は、財務会計との違いについて。
原価マネジメントと財務会計の違いを示したのが図1です。
財務会計は過去の業務の経理的(金銭的)な面を集計して分類したものです(図1の下段)。これが企業の決算報告書です。過去の成績表となります。ところが、業績が悪かったからといって、過去に遡って良くすることはできませんし、過去に遡って社員の仕事をやり直すこともできません。財務会計の限界はここにあります。次期の会計年度でリカバリーの手段を打つことはできますが、原価を下げたり利益を生み出したりするための方法ではありません。
原価マネジメントは図1の上段部分です。現在行っている仕事および未来を決める仕事の中で、原価を下げたり利益を創造したりすることができます。仕事の中で原価企画・原価計画・原価低減を実施するようにすることが原価マネジメントです。社員全員が仕事をしているため、全員が原価を考慮した仕事を行うことが必要になります。
つまり、財務会計だけでは利益を生み出せません(図2)。
利益を創出するためには原価マネジメントを行わなければならないのです。事実、トヨタ自動車はこれまで原価マネジメントによって継続的に利益を出し、企業を成長させ続けてきました。
新入社員から原価教育を受ける
トヨタ自動車の原価企画では、外部環境の変化に対応するためにさまざまなスローガンで危機意識を植え付け、いろいろな方策を用いています(表1)。
スタッフ系、エンジニア系、生産系を問わず、トヨタ自動車に入社すると、原価の教育を受けます。図3は製造系の新入社員向けの教育内容です。
そして、図4はスタッフ系およびエンジニア向けの教育です。
このように、トヨタ自動車では入社時点から原価について教育を行っています。また、その後、新入社員は各部署に配属されて業務を担当します。そこでは、各職における原価教育も実施し、原価を考えながら仕事を行う習慣を身に付けます。こうして、自然と原価を考えながら業務を遂行することができるのです。要は、トヨタ自動車では原価の躾(しつけ)が行われるというわけです。

(書籍『利益を最大にする実践的手法 トヨタ流原価マネジメント』を基に再構成)

[日経クロステック 2025年8月27日付の記事を転載]
堀切俊雄著/日経BP/1万1000円(税込み)





