『日経業界地図』は今年創刊21周年を迎えました。2026年版は過去最多の201業界、4900企業・団体が掲載されていて、本年版もさまざまな工夫が凝らされています。今回は本書の書籍編集に携わった3人の編集者に、作り手だから伝えたい、本書の見どころ、こだわりについて語っていただきました。前編は、主に特集記事の注目点についてです。
信頼の日本経済新聞記者が執筆
日経BOOKプラス 細谷和彦(以下、細谷) 本日はお集まりいただき、ありがとうございます。今年の『日経業界地図 2026年版』は昨年担当された栗野さんを筆頭に、2年目の編集者・黒田さん、茂木さんが編集を担当されました。今日は改めて、この本の読み方や編集上のこだわりなどを、皆さんに教えてもらえればと思います。
第1編集部 黒田琴音(以下、黒田) 『日経業界地図』は、やはり、業界を一つひとつ見渡せるのが最大の特徴です。「業界地図」と名の付く本は、ほかには『「会社四季報」 業界地図』(東洋経済新報社)や『図解! 業界地図』(祥伝社)といったものがあります。私個人の見解ですが、おそらく『「会社四季報」 業界地図』は投資雑誌の『会社四季報』と組み合わせて使う読者が結構多いと思います。ビジネスや就活にも活用できるでしょうが、「この会社に投資したい」という人にニーズがあるのではないでしょうか。
一方、『日経業界地図』は、親会社と子会社、出資比率や提携先など、企業間の関係性が詳しく分かるようにしているところに有用性があると思います。
第1編集部 茂木拓朗(以下、茂木) 他との一番の違いは、日本経済新聞の記者が書いていることだと思います。常にビジネス取材を続ける日経の記者が仕入れた情報を、業界の動向としてまとめてくれているのが強みです。
ビジュアル面もきれいにまとめ、企業の相関図がしっかり見えるように、配色やデザインを工夫しました。
細谷 企業の合併や事業承継、出資などもひと目で分かりますね。
第2編集部 栗野俊太郎(以下、栗野) 本のカバーにも「企業の『強み』『関係性』『事業規模』がわかる!」と書いてあるように、ここが一番の特徴です。『「会社四季報」 業界地図』の掲載データは、売上や営業利益を重視しているように思えます。業界に勤める人のコメント、業界変遷の歴史、小ネタとして社名の由来なども詳しく調べていらっしゃいますね。
一方、『日経業界地図』は従業員数や平均年収、平均年齢などの定量的なデータが充実しています。それぞれいいところがあるので、読者の皆様には両方を使い分けてもらえたらと願います。
『日経業界地図』は法人営業、企画・商品開発といった仕事をしている人と相性がいいのではないでしょうか。
それから2026年版で特に伝えたいのは、巻頭特集を充実させたことです。これまで巻頭特集は「有望な『100の技術』」「テクノロジー期待度番付」、日本経済新聞の記者が執筆する「世界シェア71品目」が主なウリでした。26年版ではさらに「業界別・年収伸び率ランキング」、「未来をつくるテクノロジー」を知るための「明日をつくる新材料」、「日経業界地図を使いこなそう」として「フレームワークで業界分析」「業界・企業を深く知る10冊」「繰り返し読みたくなる5冊」なども掲載しています。
特集は「業界別・年収伸び率ランキング」が注目
細谷 巻頭特集のラインアップはどのように考えたのですか。
栗野 これはもう、黒田さんがひらめいて、頑張ってくれたおかげです。
黒田 編集がスタートした時点では毎年掲載している「有望な『100の技術』」「世界シェア71品目」「テクノロジー期待度番付」以外、何も決まっていない状態でした。正直なところ、アジャイル方式(適宜変更しながら最適解を探す)で進めました。
「フレームワークで業界分析」は企業分析の手法が分かったほうがいいと考え、栗野さんが編集担当された日経文庫『
ビジュアル ビジネス・フレームワーク[第2版]
』から「3C(4C)」「5F(ファイブ・フォース)」といった8つのビジネス・フレームワークを紹介しました。書籍を取り上げたページは日経BP第1編集部の赤木裕介部長と中川ヒロミ・全社書籍発行人に選書をお願いしました。
最後の最後まで決まらなかったのは「業界別・年収伸び率ランキング」と日経平均株価構成銘柄(日経225)の一覧でした。
栗野 34ページの「日経225」の銘柄一覧は、投資に役立つと思います。ホームページなどを見れば分かりますが、一覧で可視化できるのは便利ではないかと。
細谷 銘柄は年2回、入れ替えがありますよね。
栗野 はい。毎年4月と10月に銘柄の入れ替えがあります。『日経業界地図』は8月の発売なので、4月時点の銘柄を入れ、また、親会社NTTの完全子会社になり現在は上場廃止となったNTTデータを外して、ロームを入れています。最後まで決まらなかった「業界別・年収伸び率ランキング」は、7月半ばに、黒田さんのお母さんの言葉がきっかけになって決まったんですよね。
黒田 私自身が就職活動をしていたときに、私の母から「初任給ではなくて、30、40歳になったときに、どれだけ給料が増えるかを見ておいたほうがいい」と言われたことを思い出したんです。それを栗野さんに話したら、「面白いね」と。それで「業界別・年収伸び率ランキング」を作成することにしました。
栗野 年収がいいからと就職しても、30代、40代になってそのまま頭打ちになったり、他業界に大逆転されたりするかもしれない。必要な視点ですよね。
細谷 まさに編集中の雑談から、最後の巻頭特集が決まったと。チームワークの勝利でしたね。
取材・文/三浦香代子 構成・写真/細谷和彦(日経BOOKプラス)
業界の基本が1分で分かる! 『日経業界地図 2026年版』では、過去最多の201業界、4900企業・団体を収録。日経記者が総力をあげて取材し、業界ごとに企業の提携・勢力関係を図解で示します。企画や提案に役立つ巻頭特集を拡充し、業界規模グラフなどでより見やすく、より使いやすくなりました。
日本経済新聞社編/日本経済新聞出版/1980円(税込み)




