就活・転職活動時の業界・企業研究に、ビジネスパーソンの日々の業務に…など、幅広いシーンで活用されている『日経業界地図 2026年版』(日本経済新聞社 編/日本経済新聞出版)。今回は企業の新卒採用支援、学生向けキャリア支援や就活アドバイスなどを手掛けるStrobolights社長の羽田啓一郎さんに、『日経業界地図』の具体的な活用法について伺いました。

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羽田啓一郎(はた・けいいちろう)さん
Strobolights 代表取締役社長 立命館大学産業社会学部 客員教授
マイナビで大手企業の新卒採用営業を担当し、全社年間MVPを受賞。その後、キャリア甲子園など学生向けキャリア支援事業新規立ち上げを行う。政策有識者会議なども経験後、2020年に独立。企業のアドバイザー業務や大学の講師業の傍ら、自身でも学生や社会人向けキャリア支援サービスを展開。

事前準備をすれば、成長性がある業界を「選べる」

 私は企業の新卒採用支援のほか、大学生向けのキャリア支援や就活アドバイスなどを行っています。また、客員教授を務める立命館大学をはじめ11の大学で、就活に関する講座やプログラムなども担当しています。

 就活講座では、「業界研究」をテーマに話をすることが多々あります。仕事を通じてさまざまな業界・企業と関わる機会があるため、ある程度の知見はありますが、すべての業界の最新情報に詳しいわけではないので、普段から『日経業界地図』を活用しているんです。業界の基本構造をあらためて理解したうえで、最近のトレンドもインプットできるので、非常に役立っています。

 就活中の学生にも『日経業界地図』を薦めています。

 『日経業界地図 2026年版』では、201の業界、4900の企業・団体が紹介されています。各業界に関する基礎知識のほか最近の動向、今後の焦点やポイント、そして業界内の勢力関係や企業間の提携・出資関係などが一目でわかるので、業界研究の第一歩として有益な本ですね。

『日経業界地図 2026年版』(日本経済新聞社編/日本経済新聞出版)。日本経済新聞の記者が取材・執筆。巻頭特集内の「有望な100の技術」「テクノロジー期待度番付」を日経BPの専門メディア編集長、日経BP総研の専門家が解説。「世界シェア71品目」は日本経済新聞の独自調査だ。本編の企業データには日経リサーチが調査したデータも収録している
『日経業界地図 2026年版』(日本経済新聞社編/日本経済新聞出版)。日本経済新聞の記者が取材・執筆。巻頭特集内の「有望な100の技術」「テクノロジー期待度番付」を日経BPの専門メディア編集長、日経BP総研の専門家が解説。「世界シェア71品目」は日本経済新聞の独自調査だ。本編の企業データには日経リサーチが調査したデータも収録している
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 私は、『日経業界地図』はいわば「旅行ガイド本」のようなものだと捉えています。

 例えば、海外旅行で初めて訪れる国の場合、現地について多少なりとも調べてから旅行の計画を立て、訪れるでしょう。ガイド本などを見ながら、どんな観光名所があるのか、どのような体験をしたいのか、どのエリアを回れば楽しめそうなのか、自分の興味関心と照らし合わせながらおおよその当たりをつけると思います。

 しかし、旅行を就活に置き換えると、なぜかその当たり前の「事前準備」をしない人が多いのが現状です。あらかじめ知っている観光地にしか訪問しないようなものです。

 学生の多くは正社員としての就業経験がないため、業界や企業に関する知識も浅い人が大半だと思われます。にもかかわらず、自分が知っている狭い範囲の中だけで志望業界・企業を考え、応募に踏み切る人がとても多いのです。

「事前準備をせずにイメージ先行で就活する学生が多いんですよね」
「事前準備をせずにイメージ先行で就活する学生が多いんですよね」
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 例えば、「絶対コンサルティング業界に行きたい!」という就活生に、なぜ行きたいのか理由を聞いたところで、「コンサルティング業界でなければダメ」という理由は出てこないケースが大半です。「成長業界だから」「給与が高いから」などと言う学生は多いですが、コンサルティング業界の他にも成長性が高く給与水準が高い業界はあります。

 つまりは、「他の業界を知らないから、他の業界を選べない(選ばない)」のです。事前準備として『日経業界地図』を活用し、知っている業界を増やし視野を広げれば、新たに興味を持てる業界に出合えたり、就活の選択肢を増やしたりすることができるでしょう。

 そして、さまざまな業界を知り、その中から自分に合った業界を探すことは、将来のキャリア形成の観点からも非常に重要です。

 今は転職が当たり前の時代ですが、希望する職種や企業への転職が実現できるかどうかは、主に「業界動向や商慣習に関する知識」と「本人のスキルセット」の掛け算で決まります。20代半ばぐらいまでであれば、たとえこの両方が不足していたとしても、ポテンシャルの高さが評価され、どの業界でも転職できる可能性はありますが、20代後半~30代になれば即戦力としての活躍が求められるようになるため、未経験分野へのキャリアチェンジは難しくなるでしょう。

 したがって、就職する段階で、ある程度は自分に合った業界を選んでおくことが重要です。自分はどのような業界に身を置きたいのかを考えたうえで就職先を選ばないと、その後の転職にも影響が出る可能性があることを覚えておくとよいと思います。

どうやって自分に合った業界を見つければよいのか

 とはいえ、「どのようにして自分に合った業界を探せばいいのかわからない」という人は多いですよね。そもそも、業界といってもたくさんの数があります。「それらを一つずつ調べていく時間なんてない」というのもごもっともです。

 そんなときこそ、この『日経業界地図』が力を発揮します。まずは本をペラペラめくってみて、「主要な業界を広く浅く見てみる」ことを意識してみましょう。

 そして、ページをめくりながら何となく目に留まった単語、少しでも興味を引かれたキーワードがあれば、そこで手を止めて少し解説を読んでみることをお勧めします。もしさらに興味が湧いてきたら、もう一段深くページを読み込んだり、前後のページやページ右上のガイドを参考に関連業界も読んでみたりすると、より理解が深められるでしょう。

最初は理由がなくとも目に留まった業界から読んでみるだけでいい
最初は理由がなくとも目に留まった業界から読んでみるだけでいい
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 『日経業界地図』のような“紙の本”のいいところは、知らなかった業界でも偶然目に入る可能性がある点です。

 例えば「合成燃料業界」を知っている学生は、ごくごく少数でしょう。でも、この本の解説を読めば、合成燃料とは「環境負荷の小さい合成ガソリンや再生燃料の総称」であることがわかります。そして、業界を構成する企業を見ると、エネルギーメーカーだけでなく、三井物産などの商社や、トヨタ自動車などの自動車メーカーが関わっていることにも気づける。「このようなテーマを扱い、このようなプレーヤーがいる業界なんだ」とわかれば、一気に興味が湧くかもしれません。

自分に合っている業界かを判断する方法とは

 ペラペラめくりながら気になる業界がいくつかピックアップできたら、次は「その業界のビジネスモデル」を調べてみるといいですね。

 ビジネスモデルというと難しく感じるかもしれませんが、簡単に言えば「誰に何を、どうやって売るのか」。この3つの観点で業界を考え、それが自分に合っているのか、自分にできそうかどうかを考えてみてください。

 例えば、電気・ガス・水道などといった「インフラ業界」のビジネスモデルは、「一般消費者や企業に/生活の基盤となるインフラを/事故やトラブルなく安定的に提供する」ことです。

 一方、自分のやりたいことが「失敗を恐れず挑戦する」ことで、自分の個性や持ち味が「フットワークがいい」「まずは行動してから考えるタイプ」だとすれば、インフラ業界のビジネスモデルに合っているとは言い難いですよね。もし選考を突破してインフラ業界の企業に入社できたとしても、なかなか力を発揮できず、ギャップを感じてしまうかもしれません。

 上記のようなタイプの人なら、もっとフットワークが求められ、チャレンジがしやすいようなビジネスモデルの業界に目を向けたほうが、自分に合った環境でイキイキ働けそうですよね。こういう具合に、ビジネスモデルから判断することもできるのです。

ビジネスモデルで判断すると、より自分に合った業界を見つけられると話す羽田さん
ビジネスモデルで判断すると、より自分に合った業界を見つけられると話す羽田さん
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業界研究は大学3年生になってからでは遅い?

 昨今、企業による採用活動前倒しの動きが顕著になり、就活期間が長期化しているといわれています。しかし私は、実質的には「就活は短期化している」と捉えています。

 就活においては、大学3年生の夏のインターンシップが重要とされています。その後の就活を左右する、一つの山場ともいわれています。

 一方で、多くの大学がオフィシャルで「そろそろ就活を始めよう」と学生にアナウンスし始めるのは、大学3年生になったばかりの4月です。夏のインターンシップの応募締め切りは、だいたい6月の中旬から下旬。つまり、わずか2カ月程度の間に、志望する業界のおおよその当たりをつけなければならない、ということ。この時期、「どの業界の、どのようなプログラムに応募すればいいのか……」と慌てる学生は、非常に多いです。

 そして、夏のインターンシップ終了後も、あまり時間があるとは言えません。年内はゼミや学園祭などでバタバタ、年が明けて試験に追われていたら、3月に就活解禁となり就活本番スタート……と慌ただしく過ぎていきます。学生がじっくり時間をかけて業界研究に臨める期間は、実はとても短いのです。

「実は、学生がじっくり業界研究できる時間は長くないんです」
「実は、学生がじっくり業界研究できる時間は長くないんです」
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 だから、可能であれば業界研究は大学2年生のうちに始めておくことをお勧めしたいですね。比較的時間に余裕があるうちに着手し、大学3年生になったタイミングで興味のある業界がある程度見えている状態にしておくと、その後の就活がスムーズに進めやすくなるでしょう。

 その際も、『日経業界地図』が強い味方になると思います。自分一人で業界を一つずつ調べていくのは大変ですが、これ一冊あれば何らかの発見が得られます。1ページ目から読み込まなくても、前述のようにペラペラめくってみて、気になるところから読んでいけばOK。そうするうちに、少しずつ知っている業界が増え、自然と視野が広がると思いますよ。

親子での就活にどう役立つのか

 就活は、当事者である学生はもちろんのこと、保護者である親御さんにとっても一大イベントであり、心配事であると思います。実際、保護者を対象とした就職セミナーも多く、私も講師を務めたことがあります。

 私が大学生だったころと比べると、今は親と子の距離が近く、親に就活の相談をする学生も多いようです。子どもにとって親は最も身近な大人なので、親の意見は良くも悪くも大きな影響を与えてしまいます。

 だからこそ、保護者の皆さんにもぜひ、『日経業界地図』を読んでほしいと願っています。

 親世代が就活をしていたのは、今から25~30年ぐらい前。その頃に比べると、業界構造は大きく変わり勢力図も様変わりしています。そして当時は栄華を誇っていた業界が力を落とし、一方で新しい業界・分野が数多く生まれています。『日経業界地図』を手に取っていただくと、知らない業界がたくさん掲載されていて驚かれるのではないでしょうか。

『業界地図』は、業界内の勢力図や企業規模など、見やすいレイアウトで、子どもの就活サポートにも役立つ
『業界地図』は、業界内の勢力図や企業規模など、見やすいレイアウトで、子どもの就活サポートにも役立つ
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 昔の知識のまま就活アドバイスをしてしまうと、お子さんの就活の方向性がずれてしまい、うまく進まなくなってしまう可能性があります。お子さんの就活をサポートし、希望に合った企業の内定を獲得してもらいたいのであれば、ぜひ『日経業界地図』などを活用しながらご自身の知識もアップデートしてみることから始めませんかと提案したいですね。

取材・文・構成/伊藤理子、黒田琴音(第1編集部) 写真/鈴木愛子

投資、企業研究、マーケティングリサーチに!

業界の基本が1分でわかる! 『日経業界地図 2026年版』では、過去最多の201業界、4900企業・団体を収録。日経記者が総力をあげて取材し、業界ごとに企業の提携・勢力関係を図解で示します。企画や提案に役立つ巻頭特集を拡充し、業界規模グラフなどでより見やすく、より使いやすくなりました。

日本経済新聞社編/日本経済新聞出版/1980円(税込み)