小さい頃から本に囲まれて生活をしてきたマクアケ共同創業者/取締役の坊垣佳奈さん。「ロールモデルは?」と聞かれるたびに、「年代や状況、考え方も違うなかで目標にはしづらいなぁ」とモヤモヤするなかで手に取った本が『妹たちへ』(日経ビジネス人文庫)でした。また、恋愛観が180度変わった本として『愛するということ』(紀伊國屋書店)も紹介します。坊垣さんが20代に薦める本を紹介する連載第2回。

各界で活躍する女性からのメッセージ

 20代の頃、聞かれると困ることがありました。

 それは「ロールモデルは誰?」という質問。私はあまり「〇〇さんみたいになりたい」「〇〇さんを目指そう」と思わないタイプでした。心のどこかで「年代や状況、考え方も違うなかで目標にはしづらい」と考えていたのかもしれません。

 とはいえ、諸先輩から学ぶことはたくさんあります。『妹たちへ』(日経ビジネス人文庫)は、阿川佐和子さん、綾戸智恵さん、南場智子さん、有森裕子さん、池田理代子さん…と各界で活躍されている方々が20代、30代の女性へ向けて語ったメッセージ集です。

 本の中では、キャリアや人生の転機が余すところなく語られています。「こんな状況に陥ったとき、私はこう考えた」「こういう行動を起こしたから乗り越えられた」という事例が、すべて実話なんですよね。同じ女性だから胸を打つ、というよりも、やはりその人の信念があって、個々のストーリーがものすごくリアルなところに心が引かれました。

 周囲から見ればキラキラしている人も、内面ではものすごく葛藤し、もがき苦しみ、それでも諦めずに問題と向き合っていたんだ、と分かり、本当に素直に「よし、自分も頑張ろう!」と思えたんです。

20代のときに書店で見つけ、何度も読み返しという『妹たちへ』 (注)同書は現在品切れ重版未定です。古書店や図書館などで入手することができます
20代のときに書店で見つけ、何度も読み返しという『妹たちへ』 (注)同書は現在品切れ重版未定です。古書店や図書館などで入手することができます
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 前回 「坊垣佳奈 悩みがすーっと消えて人生がラクになる1冊」 で紹介した『自助論』(サミュエル・スマイルズ著/竹内均訳/知的生きかた文庫<三笠書房>)が精神論だとすると、こちらは実例集。それも1人の伝記ではなく、30人以上のストーリーが語られているので、多様性もあり、「この人は私とは違う。この人だから成功したんだ」などと思わずに、感じ入ることができます。思えば、私は『プロ論。』(B-ing編集部編/徳間書店)などのように、多くの人の考えが分かる本が好きなのかもしれません。

 20代のときに書店で見つけ、何度も読み返し、ときには後輩にプレゼントし、また買い直してはお風呂でも読んでいるので、私の『妹たちへ』は、もう湯気でシワシワ(笑)。それぐらい思い入れのある1冊です。

 『妹たちへ』というタイトルもいいんですよね。娘でもなく、部下や後輩でもなく、「妹」なんだ、と。すごく諸先輩方の愛を感じるし、本の作り手となった人たちの愛も感じます。多分、今よりももっと女性がキャリアを積むのが難しかった時代に、みなさんいろんな思いを抱きながら、道を切り開いてきた。それを私たちが読み、追体験する。何か共通の願いや思いが詰まっている1冊とも言えます。

「すごく諸先輩方の愛を感じるし、本の作り手となった人たちの愛も感じます」と語る坊垣さん
「すごく諸先輩方の愛を感じるし、本の作り手となった人たちの愛も感じます」と語る坊垣さん
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「愛すること」は努力でできる

 もう1冊の 『愛するということ』 (エーリッヒ・フロム著/鈴木晶訳/紀伊國屋書店)は20代の頃に、男性上司から薦められた本です。最初に見たときは「何これ、詩集?」とあまり気が進まなかったのですが、読んでみてびっくり、恋愛観が180度変わりました。

 20代は仕事でも悩むけれど、恋愛でも悩みますよね。自分も未熟だし、相手も未熟。お互いに感情のままに言いたいことを言い合って、傷つけ合う。大好きなのにうまくいかない…と、みなさん、下手な恋愛に時間を取られた経験があるのではないでしょうか。

 『愛するということ』は、その問題に疑問を投げかけます。なぜ、人はさまざまな努力をするのに、人を愛することだけは努力でできると思っていないのか。「愛するということは努力でできるのだ」と。

「愛することは努力でできる。逆に言えば、努力しなければいけないと知った」と語る坊垣さん
「愛することは努力でできる。逆に言えば、努力しなければいけないと知った」と語る坊垣さん
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 もう、この考え方を知って、恋愛観も結婚観も変わりました。恋愛がうまくいかないとき、「相性が悪いんだ」と思ってしまいがち。でも、愛することは努力でできる。逆に言えば、努力しなければいけないのです。

 そして、「愛とは努力である」「どうやって相手を愛し、幸せを形づくっていくか」と思っている相手か、もしくは説明したら分かってくれる相手とではないと、恋愛も結婚もできないのではないでしょうか。私はそう悟ったおかげで、「謎の恋愛に時間を取られる」という20代の悩みからは早々に抜け出せました。

 また、愛は恋愛だけではなく、仕事でも必要です。仕事でもつい「あの人とは合わない」と言ってしまいがちですが、そこも努力すべきだと反省しました。やはり努力とともに関係性がつくられるし、そこからまた愛情が生まれるのだと思います。本にも書かれているように、「愛こそが現実の社会生活のなかで、より幸福に生きるための最高の技術である」のです。

 『自助論』『妹たちへ』『愛するということ』は、どれも仕事と愛に悩む女性たちに読んでほしい本です。

『自助論』『妹たちへ』『愛するということ』は、仕事と愛に悩む女性たちに読んでほしい3冊セットだという
『自助論』『妹たちへ』『愛するということ』は、仕事と愛に悩む女性たちに読んでほしい3冊セットだという
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取材・文/三浦香代子 構成/雨宮百子 写真/小野さやか

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坊垣佳奈著/日本経済新聞出版/1760円(税込み)