「アクティブ・リスニング」は、相手の話に耳を傾け、話を引き出すための手法です。多様な価値観のギャップを埋め、コミュニケーションを円滑にするために、いま必要とされています。その極意を『アクティブ・リスニング ビジネスに役立つ傾聴術』(戸田久実著/日経文庫)より抜粋のうえ紹介します。
「聴く力」は最強スキル
聴き手が話を聴いているということが、話し手に伝わるように表現する聴き方のことを「アクティブ・リスニング」と言います。身に付けるには、相手の話を理解し、ときに共感しながら聴き、さらには、相手の話を引き出す発展的な質問ができることが求められますが、アクティブ・リスニングが習慣化すると、相手との相互理解が生まれ、信頼関係の構築へとつながっていくのです。
近年は、価値観が多様化してきました。そのようななかで相手との価値観の相違を埋めていくには、「話す」ことも大切ですが、「聴く」力も必要とされています。
組織の心理的安全性をかなえるには、キャリア・ポジション・立場の違う相手の話に耳を傾けられることが必須要素となるのです。
アクティブ・リスニングができていない人は、思っている以上に多いものです。
アンガーマネジメント(怒りと上手に付き合うための心理トレーニング)の研修をしていると、自分と違う意見に触れることでイラッとしたり、憤りを感じたり、相手の話に素直に耳を傾けられなくなったりしてしまうというケースを耳にすることが多々あります。
あなたはいかがでしょうか? 相手の話を突っぱねる、相手をやり込めてしまう、いかに自分の意見が正しいかを主張し、論破してしまうということはありませんか?
長年研修やコンサルティングをしていると、相手の話を聴けない人の話や、会話が成立しない人からの相談は後を絶ちません。
「上司の面談で話を聴いてもらえなかった」
「話を十分に聴いてもらえず、一方的に話されてしまった」
このような不満やストレスを抱えている人は大勢いるのです。
一方で、コロナ禍によってリモートワークが増えたことで、報告・連絡・相談といった必要最低限のコミュニケーションだけになってしまい、部下が抱えている悩みに十分に耳を傾けることができていないと感じている管理職も増えています。アクティブ・リスニングは、部下がいるマネジメント層には、より求められているスキルです。
もちろん、マネジメント層のみではなく、部下の立場でも求められる場面はあります。職場での指示に対して、上司の話を表面的に聴くだけで、
「なぜその指示があるのか?」
「この組織ではこのやり方なのか?」
疑問を持っても、質問しない人もいます。
そのことが原因で、意図が理解できずに進めてしまいトラブルになってしまったという話も耳にします。
「上司がすべてを分かるように言ってくれなかったから」
と報告してくる人もいるのですが、疑問を持ち、上司の話を引き出し、確認できなかった側にも責任はあるものです。このようなとき、アクティブ・リスニングのスキルは、相手の話を引き出し、確認するためにも役立ちます。職場の心理的安全性を実現し、ビシネスを円滑に進めるためにも必要なビジネス能力と言えるのです。
一方的な会話は相手に違和感を与える
本来、コミュニケーションは双方向のものですが、うまく話すこと、論理的に話すことに注力する人が多いのではないでしょうか?
でも実は、コミュニケーションの主導権を握っているのは聴き手です。
相手が無反応であったり、話しにくい態度を取ったり、何かしながら聞き流す態度を取ったりしているのであれば、いくら話し上手な人でも会話が成立しなくなってしまいます。ですから、まずは相手が話しやすい適切な聴き方ができるように相づちを打つことは、話を円滑に進めるために欠かせません。
逆に、あまり話すことが得意でない人も、相手が話しやすいように耳を傾けたり、相手が話しやすいような質問を投げかけたりすることで、双方向の対話が進んでいきます。
相手が話しやすいように反応しながら聴くことが、コミュニケーションの行方に大きく影響しているのです。
話し手が主導権を握ろうとすると、自分の言いたいことを話すだけで、相手の話に耳を傾けないというコミュニケーションを取ってしまいがちです。でもそれでは、相手に、
「話をコントロールされた」
「一方的に意見を押し付けられた」
といった気持ちを抱かれることもあるでしょう。
話し手の立場になったときのことを振り返ってみてください。
一方的に自分の話したいことを話し、相手に自分の目的を分からせて、コントロールするようなコミュニケーションを取ってしまうことはありませんか? 一方的なコミュニケーションを取ると、聴き手は違和感や疑問を抱き、少なからずストレスを感じます。そして、結果的にお互いが納得できるゴールへ向かうこともかなわなくなってしまうのです。
当たり前のことですが、それでは、組織もプロジェクトもうまくいきませんね。物事を円滑に進めるために、聴く力、アクティブ・リスニングを身に付けていきましょう。
『 アクティブ・リスニング ビジネスに役立つ傾聴術 』
戸田久実著/日本経済新聞出版/990円(税込み)

