20代前後は人生や将来の選択で悩みやすい時期です。成人期専門の心理療法士(サイコセラピスト)、サティア・ドイル・バイアックさんが、人生の4分の1ごろを過ごす若い大人に向けて書いた『 クオーターライフ 20代で知っておきたい、クライシスを生き延びる知恵 』。なぜ行き詰まっているのか? どうやって自分と向き合えばいいのか? この時期にでてきやすい悩みや特徴的な症状を、クオーターライフが題材になっている物語や神話、カルチャー、そして実際のクライアントとのやり取りを通して、解説します。「誰もが通過するけれど社会から見落とされているライフステージに名前を与え、渦中にいる人たちに指針をくれる、世界に1冊しかない本」と訳者の長澤あかねさんも絶賛しています。本書から「訳者あとがき」を紹介します。
【訳者あとがき】
みなさんはこの本に出会う前に、「クオーターライフ」という言葉を聞いたことがあっただろうか? 私はこの本で初めて知った。「あなたは新しい概念の本を訳すことが多いよね」と、翻訳者仲間から時々言われるのだが、この『クオーターライフ』はまさにそういう本。誰もが通過するけれど社会から見落とされているライフステージに名前を与え、渦中にいる人たちに指針をくれる、世界に1冊しかない本だ。
クオーターライフとは、人生を80年と考えて4分の1(クオーター)にあたる20歳(はたち)の誕生日から約20年間の「成人期序盤」を指す、発達心理学の新しい言葉だと著者は定義している(ただし、人によってその時期は多少前後する)。
思春期が終わって中年期に入るまでのこの時期に、自分が何をしていたかを振り返ると、著者が言うように、学校から突然ポンと社会に放り出され、初めての経験に悩んでばかりだった。仕事、結婚、転職、妊娠・出産、子育てと仕事との兼ね合い……。
上の世代の女性たちは専業主婦か一握りのスーパーキャリアウーマンで、お手本にできる人はいなかった。のちの人生を左右する重要な選択が目白押しなのに、地図もトリセツもないのはつらい。
今の若者の悩みは、さらに深いかもしれない。社会が複雑化し、ジェンダー・ロールもあいまいになって人生の選択肢が増えたぶん、迷いや悩みも増えているだろう。そんな彼らに寄り添い、自分らしい幸せな人生へと導いてくれるのが、著者サティア・バイアックだ。サティアもクオーターライフに人生に迷い、助けになる情報についぞ出会えなかったことから、ユング心理学を学んで、クオーターライファー専門のサイコセラピストになった。
サティアのセラピーからわかるのは、クオーターライフの悩みを整理するには、「安定」と「意義」という二つの視点が必要なこと。クオーターライファーは(多くの場合)、「安定型」と「意義型」の2種類に分かれ、「安定」や「意義」を求めて走りだすのだけれど、どちらのタイプも最終的な目標は同じだ。「安定」と「意義」を融合させた自分らしい人生を生きられない限り、心は満たされない。読者はこの二つの視点を持つことで、自分が今何につまずき、何にモヤモヤしているのか、今後何を目指せばいいのかが、おぼろげながら見えてくる。
サティアがくれる幸せな人生への道しるべは、「成長の四つの柱」だ。四人のクオーターライファーが、親や社会の常識から「離れる」、自分の心の声を「聴く」、コツコツ人生を「育む」、安定と意義を「一つにする」という四つの柱を行きつ戻りつしながら、ユニークな人生を形にしていく姿には、胸がいっぱいになる。若者の話に根気よく耳を傾け、伴走する著者の温かさには心が励まされ、大いに癒やされる。
読者は、抱えている悩みは違っても、セラピーの会話を読み進め、紹介されるワークを試していくうちに、自分の悩みを解決するヒントを見つけるだろう。これは内なる羅針盤とのつながりを取り戻し、自分にとって心地よい人生を創造するための本なのだ。
著者も語っているように、この本は、クオーターライファーだけでなく、彼らの親や先生方にもぜひ読んでいただきたい。家賃の高騰やテクノロジーの進歩で自立が難しい社会情勢なだけに、クオーターライファーの成長には親世代の理解と協力が欠かせない。私もサティアを見習って、「心配より信頼」できる大人でいよう、と心に決めた。ちなみに、成長が必要なのは若者だけではない。この本の原書のAmazonレビューを読んでいると、76歳の人が「孫のために買ったけど、自分の人生に役立った」とコメントしていた。いくつになっても、何度でも、四つの柱を使って、喜びに満ちた新しい道を選ぶことはできる。
この本が、人生のロードマップを必要としているクオーターライファーに届いて、心がわくわくするような唯一無二の人生を紡ぐ助けになりますように!
長澤あかね
