ニュースの裏側を知れば、社会の動きが見えてくる。本連載は、日本経済新聞記者が今押さえるべき45個のテーマを解説した新刊『Q&A日本経済のニュースがわかる! 2026年版』から抜粋、再構成してお届けします。就活で、会議で、商談で、一歩先を行くための知識を紹介。第1回は「外国人」。なぜ日本に外国人が集まり続けるのか、その理由ととるべき対策を、日経記者がズバッと答えます。
在留外国人数は過去最高を更新
出入国在留管理庁によると、2024年末の在留外国人数は376万8977人となり過去最高を更新しました。前年の同時期より35万7985人増、10.5%増となりました。和歌山市(約35万1000人)や奈良市(約34万7000人)と同規模の人口が1年で増えたことになります。
10年前と比べると1.8倍です。新型コロナウイルスの影響で国境を越える移動が停滞しましたが、再び来日が拡大しています。
国・地域別で最も多いのは中国(87万3286人)で、ベトナム(63万4361人)、韓国(40万9238人)が続きます。前年比の増加率で見ると、ミャンマー(55.5%増)、スリランカ(35.2%増)、インドネシア(34.0%増)などが目立ち、出身国が多様化しています。
外国人が日本に滞在するには、29ある在留資格のいずれかを取得しなければなりません。資格によって在留期間の上限やできる仕事の範囲が決まっています。この在留資格で見ると、人手不足対策の「特定技能」(約28万4000人)が前年比36.5%増、高度人材向けの「技術・人文知識・国際業務」(約41万9000人)が15.6%増、日本で技能を学ぶのを理念とする「技能実習」(約45万7000人)が12.9%増と目立ちます。働くために来日する人の拡大が在留外国人の急増につながっているといえます。
日本の賃金は他の先進国と比べ伸び悩んでいます。さらに、ここ数年の円安によって、外貨建てで米ドルなどに換算するとさらに目減りしました。こうした事情で日本を目指す外国人が減るとの見方もあります。
実際は来日が拡大しています。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)は23年に公表した将来推計人口で、外国人の増加を年16万5000人程度と想定していました。実際はその倍以上のペースです。社人研は外国人が人口の1割を超えるのは67年と見ていましたが、今のペースなら「1割超え」の時期は大幅に早まりそうです。
日本で働きたい外国人が増えるわけは?
日本で働きたい人が増えているのは、送り出し国の事情が大きいといえます。アジアの新興国で若年層の失業率が高止まりしています。もともとは中東やシンガポール、マレーシアなどに出稼ぎに行く人が多かったのですが、日本が注目を集めています。
新興国の教育水準が上がり、純労働ではなく将来のキャリアにつながる仕事をしたいと望む人が増えているのが一因です。賃金も依然として日本は新興国の数倍の水準です。アジアの国々から距離が近く、家族の急病などの際に帰省しやすいとの安心感もあるようです。
欧米の先進国はすでに移民が人口の1割を超えており、特別なスキルがない限り新たな外国人労働者の受け入れに慎重です。日本は特定技能の対象業種を増やしたり、事実上無期限で働けて家族帯同もできる「特定技能2号」を拡大したりしており、各国政府や人材会社からの注目が高まっています。
不十分な受け入れ体制
もっとも日本側の受け入れ体制は十分とはいえません。例えば働きながら日本語を学びたいと思っても近くに教室があるとは限りません。文部科学省の23年度調査で、1896市区町村のうち約4割にあたる737市区町村が日本語教室のない「空白地域」でした。特に沖縄、青森、北海道など地方で学習環境整備の遅れが目立ちます。
来日した子どもへの対応も遅れています。文科省によると、日本語指導が必要な児童生徒は23年度に6万9123人でした。12年度(3万3184人)から2倍超になりました。通常の授業に代えて日本語を学ぶ「特別の教育課程」という仕組みがありますが、教員不足などの理由で受けられない子どもが少なくありません。
学習環境の整備の遅れは進路にも影響します。高校などに進学しない中学生は日本全体では1%ですが、日本語指導が必要な生徒の場合は9.7%に上ります。高卒以上の学歴がないとフルタイムで就労するのに必要な在留資格を取るのが困難です。非正規の職に就き、安定した生活を築けないケースが多いと見られます。
各分野に詳しい日経記者が、今押さえるべきニュースを45項目で解説。豊富な図表とビジュアルで、経済の気になる疑問に分かりやすく答えます。就活や会議、商談で使える新鮮な知識を収録。読めば周りと差がつく一冊です。
日本経済新聞社編/日本経済新聞出版/1870円(税込)



