ニュースの裏側を知れば、社会の動きが見えてくる。本連載は、日経記者が今押さえるべき45個のテーマを解説した新刊『Q&A日本経済のニュースがわかる! 2026年版』から抜粋、再構成してお届けします。就活で、会議で、商談で、一歩先を行くための知識を紹介します。第2回のテーマは「中国」。経済が失速する中国で、今何が起きているのか。日経記者がズバッと答えます。
きっかけは不動産市場の低迷
中国の景気停滞の最大の要因は不動産市場の低迷です。不動産は関連産業も含めれば国内総生産(GDP)の約3割を占めるとされていますが、新築マンションなどの販売は伸び悩んでいます。
中国政府は2024年秋に不動産販売に関する追加支援策を発表しました。優良な住宅開発案件を選定し、銀行の融資を促す制度を拡大するなどして不動産開発会社の資金繰り支援に乗り出しました。融資済みの既存の住宅ローン金利の引き下げも実施しました。
一連の支援策により中国の不動産市場は一時、改善の兆しを見せましたが、足元では政策効果に息切れ感が見え始めて市況は悪化しています。25年1~6月の新築住宅の販売面積は前年同期比3.7%減で前年を下回る状況が続きます。住宅在庫の面積も増えています。
住宅が売れなくなると関連消費の不振にもつながります。例えば新居の購入時に買い替えが進みやすいとされる家具や家電などの販売は低迷しています。景気が不透明さを増すなか、家計は財布のひもを固く締めるようになっています。
中国では節約志向の強まりから「消費降級」(消費のダウングレード)が話題です。消費者は海外からの輸入品ではなく、国内ブランドの安価な商品を買うようになりました。
客単価の高い飲食店の閉店も相次いでいます。台湾系小籠包レストランの鼎泰豊(ディンタイフォン)は北京市や天津市にある14店舗を閉めました。上海市ではミシュランの星を獲得したフレンチレストランが営業休止を発表しています。
北京市の飲食店が24年に稼いだ利益は前年から8割減、上海市(宿泊業を含む)も3割落ち込むなど都市部でも消費の低迷が鮮明です。
深刻な内需不足から企業は相次ぎ値下げを実施しました。庶民が利用するカフェチェーンも例外ではありません。米コーヒーチェーン大手のスターバックスは25年6月、中国で茶系飲料などの価格を5元(約100円)前後値下げしました。低価格の飲料を提供する蜜雪氷城(ミーシュエ・グループ)など中国勢との競争が激化するなか、「スタバは高い」と捉える消費者も少なくありません。
追い打ちとなる米国との貿易摩擦
家計は将来不安を拭(ぬぐ)えていません。中国国家統計局によると消費者心理を示す消費者信頼感指数は6月に87.9となり、楽観と悲観の境目である100を下回ったままです。22年春の上海ロックダウン(都市封鎖)で経済が混乱したときに大きく悪化し、その後も低空飛行が続きます。
中国政府は消費需要を喚起するため、自動車や携帯などの買い替えに補助金を出しています。買い替え補助金は対象となる製品の購買需要を掘り起こしますが、将来の需要の先食いにすぎないとの指摘も根強くあります。消費の回復は見通せていません。
25年4~6月の国内総生産(GDP)は、物価の変動を調整した実質で前年同期比5.2%増でした。伸びは1~3月の5.4%増から減速しました。不動産不況による内需不足に追い打ちをかけたのが米国との貿易摩擦です。
トランプ米大統領は4月までに対中追加関税を累計145%に引き上げました。中国も米国に125%の報復関税などを課し、事実上の禁輸状態に陥りました。5月に双方は追加関税を115%引き下げ、一部は90日間停止するとも決めました。
4~6月は対米輸出が急減したものの、東南アジア諸国連合(ASEAN)向けなどの輸出を増やし、輸出全体はプラスを維持しました。
米国は現在(25年9月)も中国に30%の追加関税を適用しています。米中は7月29日までスウェーデンで閣僚級協議を開き、互いに一時停止中の関税措置について停止期間を90日間延長する方向となりました。中国が加速してきた迂回輸出については、米国は7月のベトナムとの関税合意で対策を盛り込むなど対応を急いでいます。
米国向けなどの輸出が滞れば輸出企業の収益を圧迫して雇用の回復が遅れ、景気減速のリスクとなります。国内で余った製品を海外に安く回す「デフレ輸出」を強める可能性もあり、海外市場にも影響が広がる恐れがあります。
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日本経済新聞社編/日本経済新聞出版/1870円(税込)



