「1人100個のAIアプリ開発」を社員の目標に掲げて話題となったソフトバンクグループを筆頭に、さまざまな業界で業務のAIエージェント化を推進する企業が増えてきています。そもそもAIエージェントって何なのか、AIエージェント導入をどう進めるのか、どんなAIエージェントを作り、どう育てるのか。開発に携わるエンジニアだけでなく、経営層や企画・管理部門でも課題に感じている人は多いはず。また、個人で習得したスキルは、「生成AI時代」のキャリアの大きな強みとして今後生かすことができます。

そこで、技術系の書籍の編集をしている部長2人が、「AIエージェント」と、その中核となる「LLM(大規模言語モデル)」の理解に役立つ日経の本を10冊厳選。手前みそですが、日経BOOKSユニット第2編集部の安東一真部長と技術プロダクツユニットクロスメディア編集部の田村規雄部長が1冊ずつ全力でお薦めして解説します。

技術プロダクツユニットクロスメディア編集部の田村規雄部長(左)と日経BOOKSユニット第2編集部の安東一真部長(右)が解説
技術プロダクツユニットクロスメディア編集部の田村規雄部長(左)と日経BOOKSユニット第2編集部の安東一真部長(右)が解説
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日経BOOKSユニット第2編集部長 安東一真(以下、安東) 最近、生成AIの活用を推進するエンジニアや経営者の方から、「生成AI=チャット(ChatGPT)という思い込みが強い人が多くて、それが業務での活用を妨げている」という話をよく聞きます。

技術プロダクツユニット クロスメディア編集部長 田村規雄(以下、田村) 開発元のOpenAIが9月に発表したところによると、ChatGPTの週間アクティブユーザーは7億人ですが、仕事で利用している人はその3割にとどまるということです。ChatGPTは日々の生活に溶け込んでいるものの、業務での活用はまだ道半ばということでしょうか。

安東 もちろん、チャットで質問したり仕事のサポートをお願いしたりできることは生成AIの利点の1つです。しかし、チャットは生成AIの一形態に過ぎません。AIに仕事をしてもらうために、いちいち人がチャットで細かく指示していたらキリがないですもんね。できるなら、もう一歩先を行く業務の効率化に活用したいところ。例えば、業務システムの中に生成AIを組み込んで自動的に処理できるようにしたり、買い物や旅行の手配といった各種操作をAIが自動的にやってくれるアプリを構築したりすることもできます。

田村 AIが自らの判断で、自律的に動く「AIエージェント」の話ですか?

安東 はい、AIエージェントは、生成AIを使ったシステム開発で、いま一番ホットなトピックですね。ただ、そこまで高度なシステムを考えなくても「生成AIにお任せ」できることはたくさんあります。ということで、そろそろ「手前みそですが、部長が全力で本をお薦めする」モードに切り替えて(笑)、今回の本を紹介していきましょう。厳選した10冊を、「個人で活用」「チーム・組織に生かす」「一般向け」「エンジニア向け」の4象限のマトリクスにしてみました。

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 プログラミング初心者の一般ユーザーから開発に携わるエンジニアまで、10代の学生でも読めるスキルアップに役立つ本もあれば、AIエージェント導入の設計や実際の開発現場で生きる実践的な内容の本もあります。ぜひ、自分に合った1冊を見つけてください。

営業やマーケ、管理系の人に 未経験でもアプリが作れる

1. 『コーディング不要で毎日の仕事が5倍速くなる!Difyで作る生成AIアプリ完全入門』吉田真吾、清水宏太著

安東 1冊目に紹介するのは、エンジニアだけでなく、営業やマーケティング、管理系の現場の人にこそお薦めしたい書籍『 コーディング不要で毎日の仕事が5倍速くなる!Difyで作る生成AIアプリ完全入門 』です。

『コーディング不要で毎日の仕事が5倍速くなる!Difyで作る生成AIアプリ完全入門』吉田真吾、清水宏太著 /画像クリックでAmazonページへ
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 聞きなじみがない人もいるかもしれませんが、「Dify(ディフィー)」は、いわゆる「ノーコード」、つまり、プログラミングなしで生成AIアプリを作れるツールとして最も著名なものです。(※Difyは、公式な読み方を「/ˈdiːfiː/(ディフィー)」で統一されています)

 例えば、営業メールのテンプレートが欲しいと思ったら、まずChatGPTに聞いてみようと思うかもしれません。そして、「自社と自社の製品を簡潔に紹介した上で、相手にとっての魅力をアピールして」といったプロンプト(生成AIに質問したり命令したりするための文章)を書くことになるでしょう。

 しかし、Difyでは、こうしたプロンプト自体をアプリに組み込めてしまうのです。例えば、自社と相手の情報を入れるだけでメールが自動作成される。つまり、毎回同じようなプロンプトを入力しなくて済むというわけです。他にも、領収書の写真をアップするだけで必要項目を抜き出してくれたり、複雑な分岐をして稟議(りんぎ)が通るよう相談に乗ってくれたりするなど、無料プランでもいろいろなアプリを作れるのもうれしいところです。

操作画面を追っていくだけでアプリが作れる構成で、プログラミング未経験者にも分かりやすい
操作画面を追っていくだけでアプリが作れる構成で、プログラミング未経験者にも分かりやすい
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田村 プログラミングができなくても、仕事を自動化できるのは魅力ですね! Difyは使ったことがないのですが、この本を参考に試してみたいと思います。

開発者も経営者も必読 全体像の理解から導入まで網羅

2. 『AIエージェント革命 「知能」を雇う時代へ』シグマクシス 著

田村 アプリの開発とまではいかないまでも、生成AIの技術動向やAIエージェントの業務活用について知っておきたいというビジネスパーソンには、『 AIエージェント革命 「知能」を雇う時代へ 』をお薦めしたいです。

『AIエージェント革命 「知能」を雇う時代へ』シグマクシス 著 /画像クリックでAmazonページへ
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 AIエージェントとは何か、AIエージェントがビジネスに与えるインパクトや業務での活用事例などを分かりやすく解説し、それを導入するための道具立ても紹介しています。この本は、発売後2カ月足らずで3刷目の増刷がかかっている人気書籍です。

 「はじめに」でも書かれていますが、「自社のビジネスにどんな影響があり、どんな新しいチャンスやリスクがあるのか」といった問いを持つ経営層や企画部門の人や、「自社システムに組み込むにはどんな技術が必要か、実際、開発プラットフォームは何を選べばいいのか」といった具体的なアプローチを探るAI技術の導入・開発に携わる人に読んでもらえるよう、全体像を知った上で実践的な理解を深められるような設計を意識して書かれた本です。

本の後半では、AIエージェントの導入について具体的に解説されている
本の後半では、AIエージェントの導入について具体的に解説されている
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安東 AIエージェントをはじめとした生成AIアプリの開発法を紹介する書籍は、私の部署でもこの8月と10月に2冊連続で発行しました。主にエンジニア向けのものですが、『 AWS生成AIアプリ構築実践ガイド 』と『 Azure OpenAIエージェント・RAG構築実践ガイド 』です。それぞれアマゾンのAWS(Amazon Web Services)とマイクロソフトのAzure上で、生成AIアプリを開発するための本で、2冊とも担当しました。AWSもAzureも、どちらもものすごい勢いで生成AIサービスが進化しているので、最新情報を反映するのが大変でした。

「AWS」の最新情報と枯れない情報を両方盛り込んだ1冊

3. 『AWS生成AIアプリ構築実践ガイド』針原佳貴、尾原颯、吉田真吾著

安東 この『 AWS生成AIアプリ構築実践ガイド 』は2年近い時間をかけて執筆してもらったため、途中、何度も書き直すことになり、その中で、賞味期限の長い“枯れない”情報を盛り込むようにしました。

『AWS生成AIアプリ構築実践ガイド』針原佳貴、尾原颯、吉田真吾著 /画像クリックでAmazonページへ
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 この本では、いま1つ定義が曖昧なエージェントについて歴史を振り返りながら丁寧に解説したり、AWSの「お客様起点の考え方」「ベストプラクティス」まで紹介したりしています。

今ニーズが高まる「エッジAI」についても解説

4. 『Azure OpenAIエージェント・RAG構築実践ガイド』アバナード株式会社 菅原允、大北真之、山岸大輔、山本学、王兆東、荻原裕之著

安東 一方、こちらの『 Azure OpenAIエージェント・RAG構築実践ガイド 』では、導入が進んでいるRAG(検索拡張生成)とエージェントについて詳しく解説しているのはもちろん、特にニーズが増えてきている、IoTデバイスで生成AIを利用する「エッジAI」についても触れています。

『Azure OpenAIエージェント・RAG構築実践ガイド』アバナード株式会社 菅原允、大北真之、山岸大輔、山本学、王兆東、荻原裕之著 /画像クリックでAmazonページへ
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生成AIがもっともらしいウソをつく理由が分かる

5. 『生成AI「思考」の裏側 なぜ賢いのか? なぜ間違うのか?』立山秀利著

田村 生成AIをアプリやシステムに組み込む方法だけでなく、生成AIの仕組みそのものに興味がある人も多いのではないでしょうか。

 エンジニアの皆さんはもちろん、一般ユーザーにとっても、「なぜ生成AIはあのように会話できるのか」「豊富な知識を学習できるのか」「そもそも『思考』しているのか」などなど、気になることはたくさんありますよね。そんな素朴な疑問にも答えてくれるのが『 生成AI「思考」の裏側 なぜ賢いのか? なぜ間違うのか? 』です。

『生成AI 「思考」の裏側』立山秀利著/画像クリックでAmazonページへ
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 生成AIが言葉を生成したり学習したりする仕組みから、回答を推論する過程、画像を生成する方法まで、一般の人でも理解できるようにザックリと解説する書籍です。生成AIが「もっともらしいウソをつく」=ハルシネーションの理由も、この本を読めば理解できるようになります。

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文系の人でも理解しやすいよう、中学程度の数学の知識があれば、読み通せるように、図解もふんだんに使われている
文系の人でも理解しやすいよう、中学程度の数学の知識があれば、読み通せるように、図解もふんだんに使われている
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安東 難しいコードが並ぶような本ではないので、生成AIの初心者にとっても読みやすい本ですよね。

文系エンジニアにも分かりやすい LLM入門に最適

6. 『誰でもわかる大規模言語モデル入門 LLM の用語・仕組み・実装を図解』末次拓斗著

安東 エンジニアの人にぜひお薦めしたいのが、『 誰でもわかる大規模言語モデル入門 』です。

『誰でもわかる大規模言語モデル入門 LLM の用語・仕組み・実装を図解』末次拓斗著 /画像クリックでAmazonページへ
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 ChatGPTの頭脳にあたる大規模言語モデル(LLM)について、多くの解説書では説明に数式を使っていますが、本書では、数式は最小限にし、理系出身ではない人でも直感的に理解できるように、図解を中心にしています。

 さらに、生成AIアプリのサンプルアプリの作り方まで紹介しているのが特長です。LLMについて知りたい初心者に入門書として手に取ってもらいたいですね。

田村 プログラミング、あるいは開発全体を生成AIに任せるという動きも活発ですね。実は今、「AI駆動開発」「バイブコーディング」といったキーワードで、いくつか書籍の企画が進んでいます。

生成AIの老舗「GitHub Copilot」をつかったPython入門書

7. 『GitHub Copilot×Python入門』増田智明著

安東 最近は、生成AIの助けを借りて、プログラミングを基本から学べるタイプの入門書を出しました。そのうちの1冊が、この『 GitHub Copilot×Python入門 』です。

『GitHub Copilot×Python入門』増田智明著 /画像クリックでAmazonページへ
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 GitHub Copilotは生成AIでプログラミングを支援するサービスの「老舗」であり、多くの開発現場で標準的に使われています。サービスを正式に開始したのはChatGPTより早い2022年6月なんですよね。このGitHub Copilotに教えてもらいながら、Pythonを基本から学べる構成です。まず文法から初めて、Excelデータの読み込みやインターネットアクセス、グラフの描画などに挑戦します。

 とはいえ、Pythonの細かい文法を解説しているわけでも、効率的なコードの書き方や効率的なライブラリの使い方を解説しているわけでもありません。とにかく「分からなかったら何回も生成AIに聞く」という方針で構成しているので、入門書として活用できると思います。

しりとりを楽しみながらプログラミングを学べる

8. 『作って学べるExcel VBA+ChatGPT APIの基本』池谷京子著

安東 もう一冊が、『 作って学べるExcel VBA+ChatGPT APIの基本 』は、VBA(Visual Basic for Applications)の入門書です。Excel上で、しりとりゲームを作り、ChatGPTともしりとりができ、楽しみながらプログラミングを学べる本になっています。

『作って学べるExcel VBA+ChatGPT APIの基本』池谷京子著 /画像クリックでAmazonページへ
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 こちらは、ChatGPTにプログラミングを教えてもらうのではなくて、ChatGPTを利用したVBAアプリを作ることを目標にしています。個人的にスキルアップしたい、独学でアプリを作れるるようになりたいという人に向いている本ですね。

4万部を超える大ヒット 読み物としての面白さも

9. 『#100日チャレンジ 毎日連続100本アプリを作ったら人生が変わった』大塚あみ著

 最後に紹介するのは、個人で活用できる超入門書としてお薦めしたい2冊。1冊目は、プログラミングの初心者が生成AIを使ってどこまでプログラミングを学べるのか、それをドキュメントとして追体験できる『 #100日チャレンジ 毎日連続100本アプリを作ったら人生が変わった 』です。

『#100日チャレンジ 毎日連続100本アプリを作ったら人生が変わった』大塚あみ著 /画像クリックでAmazonページへ
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 著者の大塚あみさんは、TVやネットメディアへの出演を重ね、IT界隈(かいわい)ではちょっとした有名人になりました。今年の9月には、国内最大規模のPythonカンファレンス『PyCon JP 2025』でも基調講演を務められました。2024年3月に大学を卒業したばかりの彼女は会社を立ち上げ、AI駆動開発による受託開発や生成AIコンサルティングをしています。本書はなんと、4万部を超える大ヒットになっています。

 大学4年生でプログラミング初心者だった著者が、ChatGPTを使ってプログラミングを習得してアプリを完成させていくプロセスを追った本で、エッセー的な読みやすさがあり、読み物としても楽しめます。

「私は近所のカフェに向かって歩いていた」…。技術系の本とは思えないエッセー調な文章がとても読みやすい
「私は近所のカフェに向かって歩いていた」…。技術系の本とは思えないエッセー調な文章がとても読みやすい
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タケルくんとおじさんのやりとりがリアルで分かりやすい

10. 『13歳からのPython超入門』大森敏行著

田村 プログラミング初心者でも、生成AIの力を借りてアプリを開発できるようになった点は大きいですよね。それこそ、プログラミングを知らない中学生でも簡単にアプリやゲームを作ることができる時代です。そのノウハウを指南する入門書が『 13歳からのPython超入門 』です。

『13歳からのPython超入門』大森敏行著 /画像クリックでAmazonページへ
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 中学生「タケルくん」の素朴な疑問に先生役のおじさんが答える会話形式で進みます。「めんどくさいな」とか「難しいんだけど」とか「●●って何?」とか、とてもリアルな声をそのまま吹き出しでコメントにしています。全ページにわたってイラストや図解が豊富で見やすいのも特徴です。

全ページに図解があり、初心者のタケルくんと先生役のおじさんとのやりとりが分かりやすい
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 実際に遊べる「ブロック崩し」のプログラムをChatGPTに少しずつ作ってもらい、そのコードを読んでいくことでPythonに慣れていけるように構成されています。ぜひ、エンジニアの卵となる子供たちに読んでもらいたいですね。

文・構成/安東一真(日経BOOKSユニット第2編集部長)、田村規雄(技術プロダクツユニット クロスメディア編集部長) 構成・写真/長野洋子(日経BOOKプラス編集)