データ品質の改善活動によって情報システム部門は事業に貢献できる。意思決定や決算など要所で高品質のデータが求められているからだ。品質を高めるプロジェクツを実践するための10ステップを紹介する。

 本稿は書籍『 データ品質プロジェクト実践ガイド 質の高いデータと信頼できる情報を得るための10ステップ 』(Danette McGilvray編著、木山靖史、宮治徹、井桁貞裕監訳、日経BP)の紹介になる。以下では「10ステップ本」と略記するが、この本は企業や団体の情報システム部門の部課長にとって必読書である。

事業はデータに依存している

 なぜ断言するかと言えば同書で説明されている10ステップを実行すれば情報システム部門はビジネスに貢献できるからだ。言い換えると経営者や事業の現場が困っていることの解決につながる活動ができる。

 「データ品質とデータに依存する世界」と題された第1章を読めばデータ品質の改善を経営者や現場に受け入れてもらえるテーマを探し出せる。例えば大企業から商店主まで全てが「顧客対応、代金回収、補充発注を行うためにアカウント、購買嗜好、在庫に関する正しい情報に依存している」。もし正しくないとしたら対策を講じなければならない。

 各種の法規制の順守、IoT(インターネット・オブ・シングズ)や機械学習といったIT利用のためにもデータ品質は重要である。著者によればコンプライアンスは「プロセスを改善し、リスクを低減し、顧客を満足させる機会を増やすこと」であり、「データ品質を向上させれば、全てに手が届くようになる」。

 製造業はもちろん、それ以外の業種であっても品質改善と聞いて「どういう意味か分からない」「やらなくてよい」と言う経営者はまずいない。データの品質改善には相応の時間と人件費がかかるものの外部への支出はそれほどでもない。

 これに対し、ERPパッケージの導入や既存システムのクラウド移行などが真の困りごとの解消につながるか疑問である。特に導入している製品の保守サポート切れを理由にしたシステム移行は経営者や現場の問題を何も解決しない。経営者は「意味が分からない」と言いたいが「サポートが切れると危険」と説得されると黙ってしまう。しかもコンサルティング会社や製品メーカーなどに大金を払わなければならない。

IT活動ではなくビジネス活動

 データ品質を改善する10のステップの概要を表にまとめた。ステップ1でビジネスニーズをつかみ、ステップ2でニーズに応えるために「重要(クリティカル)データエレメント」を特定する。このあたりで経営者や現場を納得させられれば以降のステップを進めやすい。そこで「全体を通して人々とコミュニケーションを取り、管理し、巻き込む」(ステップ10)ことが欠かせない。ステップ10は1~9のステップのそれぞれで必要になる。というより、これは情報システムの責任者が常にやらなければいけないことである。

表 データ品質を高める10ステッププロセス
改善を繰り返す(出所:『データ品質プロジェクト実践ガイド質の高いデータと信頼できる情報を得るための10ステップ』(Danette McGilvray編著、木山靖史、宮治徹、井桁貞裕監訳、日経BP))
表 データ品質を高める10ステッププロセス
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 ステップ1から6までは表に示した通り、改善活動の準備であり、計画に関わる。10ステップ本は640ページもあるが第4章の「10ステッププロセス」が330ページと約半分を占め、このうちステップ1から6までの説明が283ページある。

 ステップ1から6は対象がデータであるもののITの業務ではない。人事ローテーションで事業部門から情報システム部門へやってきた部課長にとってデータ品質の改善活動は現行システムの更改などよりはるかに取り組みやすい。一方、情報システム部門に長年いてシステムを開発し運用してきた人にとっては維持してきたシステムの価値を高めて経営者や現場に示す活動になるわけで挑戦のしがいがある。

 こうしたマネジャーに対し著者は第3章までを読むことを勧める。4章については「全てを読む必要はない」としつつも各ステップに付けられている合計「たった10個の」「ステップサマリー表」をながめることで「どういう内容が含まれているかを知っておく」とよいとする。

 紹介してきた10ステップ本の原題は“Executing Data Quality Projects”でありプロジェクトが複数形になっている。ある重要データエレメントに絞って品質改善に取り組むプロジェクトもあれば、システム開発プロジェクトの中で実施される活動もある。複数のプロジェクト(プロジェクツ)を積み重ね、組織として常に実施されている状態にまで持っていくことが望ましい。

 ここまで読み、「事業部門がする活動ではないか」と思った人がいるかもしれない。その通りである。本来なら重要データエレメントを取り扱う部門が品質改善をすべきだ。だがそのデータは情報システムに入っているだろうからシステム部門が改善提案を出してよい。実は重要データエレメントが現場の表計算ソフトにだけ入っていることも少なくないのだが、その場合でもシステム部門から働きかけて差し支えない。

[日経コンピュータ2025年3月6日号の記事『ビジネスに貢献できる最短距離 データ品質プロジェクツをやろう』を改題して転載]

(写真:yoshitaka/stock.adobe.com)
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ビジネスにおいてデータの重要性はかつてないほど高まっています。本書の著者のDanette McGilvrayはデータ品質を上げるためのプログラムに2009年から携わり、データ品質を改善するプロジェクトの実践的な方法論として、本書で解説している「10ステップ」を確立しました。

Danette McGilvray編著/ 木山靖史、 宮治徹 、井桁貞裕監訳/日経BP/9900円(税込み)