楠木建・一橋ビジネススクール特任教授が「著者の内田和成さんは、これまで様々な経営者と仕事をしてきただけあって、彼らへの考察が面白い」と評するのが『 リーダーの戦い方 最強の経営者は「自分解」で勝負する 』(内田和成著/日本経済新聞出版)。この本の読みどころを、『経営読書記録 裏』(楠木建著/日本経済新聞出版)から抜粋・再構成してお届けする。
「正解」よりも「自分解」
本書のメッセージを一言で言うと「人にはできることとできないことがある」――これには二重の意味があります。まずは「環境」と「打ち手」(戦略)との区別。要するに自分の力でコントロールできることとコントロールできないことの線引きです。ここにその人のセンスが表れます。コントロールできないことをコントロールしようとする。逆に、コントロールできることを所与の動かせない条件だと思い込んでしまう。間違いの多くは、環境と戦略を混同することにあります。
本書の議論の中心は、もう一つの「できることとできないこと」にあります。すなわち、その人の得意と不得意。すべてにおいて傑出したリーダーは存在しません。誰にもできることとできないことがあります。まずは自分の得意技を知る。つまりは自分を知る。「正解」でなく「自分解」で勝負する。できないこと、やりたくないことに拘泥しない。リーダーにとって決定的に重要なことです。
「戦略か実行か」「論理か感性か」、著者の内田和成さんはこの2軸でリーダーを4つのタイプに分類しています。この2次元はこれまでも繰り返し指摘されてきたもので(著者も前著で「論理対感性」の問題をとっくり論じている)新味はありません。
ただし、これまでいろいろな経営者と仕事をしてきた内田さんだけあって、実際の経営者の例の当てはめが面白い。著者の見立てでは、新浪剛史さんと本田宗一郎さんはいずれも「感性―実行型」に分類されていて、なるほどと思いました。
「人間力=チャーム+徳」
この分類に従っていろいろな議論をした上で、最後の最後に「決め手は運と人間力」と言い切ってしまうのも面白い。「人間力=チャーム+徳」というのが内田さんの定義です。
チャームと徳は似て非なるものです。チャームがあるからといって徳があるわけではない。逆もまた真なり。徳は方向性がはっきりしています。だから、徳がある人には共通点がある。ところが、チャームは千差万別です。この「チャーム」というもの、その実体は何ともつかみどころがないのですが、僕は経験上これが非常に大きいと思っています。次の本では、内田さんにチャームの分類学をやってもらいたいところです。
リーダーにもできることとできないことがありますが、それ以前に、どのタイプかにかかわらず、そもそも「リーダー」という仕事ができる人とできない人、人間はまずはこの2つに大別されます。読み終わって再確認しました。僕はリーダーには向いていません。生涯一兵卒で仕事をしていこうとの思いを強くしました。
「紹介されている本を読むよりも面白い」と評される、楠木建氏の書評を網羅した珠玉の書籍解説集。経営書から教養書まで、縦横無尽に語り尽くす。「今すぐに読みたくなる本」と出合える1冊。
楠木建著/日本経済新聞出版/2090円(税込み)

