『売り方の正解 小さなお店が生き残る50のヒント』(竹内謙礼著)は、人も資金も足りない小さなお店や会社が行うべき販促・集客法を紹介しています。本書のエッセンスをひと言でいえば「アナログとデジタルのいいとこどり」。前回に続き、東京・蔵前の透明書店で行われた、本書の出版記念セミナーの内容を公開します。最終回は「アナログ販促とデジタル販促の使い分け」です。
年賀状・メルマガ・ブログ
これまで小さな会社の販促戦略についてお話ししてきました。結局のところ、どうしたらいいのか。まとめて言えば「アナログとデジタルのいいとこどり」です。
今はデジタルの広告費が高騰し、そこに食い込んでいくのはかなり大変です。一方、アナログならそれほど費用もかかりません。
例えば、みなさん今年は年賀状を出しましたか。出さない人が多いですよね。でも、みんなが出さない今こそ、間違いなく読まれます。LINEよりも開封率が高いかもしれません。
年賀状には一言、そのお客さんだけに向けたコメントを書きましょう。するとお客さんは「私はこのお店に属する人間なんだ」という帰属意識が生まれてきます。これからはアナログなやり方を再評価することも必要です。
そういえば、昨年私が書いた『 楽天市場 最強攻略ガイド 売れるネットショップの新常識、ECの達人が教えます 』(技術評論社)の共著者である清水将平さんは、「ワンクリック50円という広告があるけれど、それなら『うまい棒』を5本配ったほうがいい」と言っていました。当時、これを聞いたときは意味が分からなかったのですが(笑)、今になって思うとなかなかの名言かもしれません。

紙は使っていませんが、アナログに近い手法として、メールマガジン(メルマガ)があります。「LINEとメルマガの使い分けはどうすればいいですか」という質問をいただきました。答えは「LINEは衝動的に買わせる」「メルマガは説得して買わせる」です。例えば、マニアックで趣味性の強い商品だったら、メルマガを強化したほうがいい。LINEだとメッセージが少なすぎて商品の良さが伝わりませんし、お客さんは開封しても商品ページまでたどり着かないかもしれません。
メルマガでは単なる商品紹介ではなく、販売に至るまでにどんな苦労があったのか、商品にどんな思い入れがあるのかを、できるだけ熱く語りましょう。試しに日本酒やワインを紹介するメルマガを読んでみてください。もう、熱量がすごいですから。同じメルマガを書くのであれば、それぐらい強烈な個性が欲しい。いい意味で「バカ」になることによってファンがついてきます。
また、これはブログの事例ですが、岐阜県にタイルの通販をしているタイルオンラインという会社があります。ある飲み会の帰り、社長と社員が酔った勢いで「ブログ書こうぜ」「どうせなら毎日書こうぜ!」となったそうです。みんなこう言った手前、引くに引けなくなり、そこから毎日日替わりでブログを書き始めました。
ブログってちゃんと書こうとすると時間がかかるんですよね。毎日2、3時間かけ、1年ぐらい続けましたが、「いいね」が4件ぐらいしかつきませんでした。それで、もう1年頑張ってみたけれど、「いいね」は10件ぐらい。「これはメンタルを削られるぞ」と思いながらも続け、3年目になるとブログ経由でポツポツ商品が売れるようになった。そして、4年目からは急激に売り上げが伸び、今は月商1000万円を達成しています。
ちなみに一番売れている商品は「セブン-イレブンのタイル」です。全国にあるセブンイレブンが廃業したときにタイルが残るんですが、もう廃番になっているので探している人がいるそうです。ニッチな世界ですよね。
私自身もメルマガを毎日21年間書き続け、過去に休んだのは2回だけ。そのうち1回はシステムトラブルで投稿できず、もう1回は「本当に何にも書けない」ときでした。21年間書き続け、読者は1万人前後で推移しています。なかなか1万人前後から大幅に増えないのですが、まずは読み続けてもらい、私のことを覚えておいてもらうのが目的です。
メルマガやブログを書くのであれば、「熱く」「長く」続けて、ファンを獲得することが大事です。
これから小さな会社を始めるなら
今は副業への関心が高いですし、「これから自分で小さな会社を始めてみたい」という人が多いかもしれません。「会社員の経験しかないのですが、どんなお店がいいですか」「売れる商品や立地、運営体制はありますか」と聞かれることがあります。私の答えは、「好きなことをやる」の一択です。
実は以前の私は「好きなことを仕事にする」のに反対でした。なぜなら好きなことがもうかるとは限らないからです。しかし、最近は「好きなことだったら頑張れる」「好きなことだったら継続できる」と、考え方が変わってきました。
例えば「カフェをやりたい」という夢を持つ人は多く、以前私は反対していましたが、そのカフェに命を懸けられるほどやりたいのであればやったほうがいいと思うようになりました。それだけ好きであればSNS(交流サイト)も続けられるし、発信する情報に思いを込めることができます。

もし、「好きなことがない」のであれば、好きなことを探すことから始めましょう。できれば、なるべくリピートしてもらえる商品がいいですね。リピートしてもらえない商品だと、延々と広告費だけが出ていくことになります。先に「私の妻が金庫を買ったら、毎週メルマガでお知らせが届く」という話をしましたが、金庫はリピートして買ってもらえる商品ではありません(「 竹内謙礼 小さな会社は『大企業のデジタル戦略』をまねするな 」参照)。
それから、できれば単価の高い商品を扱いましょう。5000円以上は欲しいところですが、1000円ぐらいでもいいでしょう。安くていいものを売るのも間違いではありませんが、安い商品は当然、利益率が低くなります。
今の時代は広告なしで売ることは難しいので、利益を上げて広告費をかけると考えれば、単価は高いに越したことはありません。
そう考えると「これだけはやめておけ」という商品は、利益率が低く、単価の安いものです。例えば、中国の輸入商品などはリスクが高いと思います。もちろん中国輸入ビジネスで成功している人はいて、私も取材したことがあります。ただ、その人は過去に何度となく失敗してきて、もう「これなら売れる」という感覚が研ぎ澄まされている人でした。息を吸うように、ヒットする商品を見つけられる。仕入れの経験がまったくなかった人が、いきなりそのレベルにたどり着くのは難しいと思います。
変化の激しい時代ですが、小さな会社は工夫次第で生き残っていけます。この本の50のヒントがお役に立てれば幸いです。
文/三浦香代子 構成/桜井保幸(日経BOOKプラス編集) 写真/木村輝
竹内謙礼著/日本経済新聞出版/1760円(税込み)
