内容紹介

 2022年2月24日、ロシアがウクライナに軍事侵攻した。北大西洋条約機構(NATO)の拡大阻止と、ウクライナ東部ドンバス地方のロシア系住民の保護を名目にしたが、いずれも武力を行使する必然性があったかは疑問だ。むしろ客観的にみて、ウクライナへの軍事侵攻でロシアが得るものは何もない。多くの専門家が「侵攻はない」と予測したゆえんでもある。それにもかかわらず、なぜプーチンは侵攻を決断したのか……。
 本書は、ロシア情勢を30年以上にわたって注視し続けてきた日経新聞編集委員による本格的プーチン分析。プーチンの成功、挫折、暴走の物語を描く。プーチンはかねて、「短期的な政策にたけた戦術家だが、長期的な戦略がない」(ロシアの政治評論家アンドレイ・コレスニコフ)とされてきた。NATOのロシア国境への接近を食い止めようとウクライナに侵攻したのに、ロシアとおよそ1300キロメートルにわたって国境を接するフィンランド、欧州の軍事強国のスウェーデンがともに、ロシアと決別してNATO加盟を決断した。ウクライナ戦争によって、日米欧とロシアの亀裂は決定的となった。ロシアにとって「ドル箱」である原油・天然ガスの主要な輸出先だった欧州は、「脱ロシア依存」へと大きく舵を切った。そして何より、「兄弟国」であったはずのウクライナの多くの人々を敵に回し、反ロ感情やロシアへの憎悪をかき立ててしまった。
 プーチンが侵攻の「負の代償」をどこまで覚悟していたかは定かではないが、ロシアにとっても不毛な戦争であることはある程度、想定できたはずだ。それにもかかわらず、プーチンはなぜ、侵攻に踏み切ったのだろうか。本書は、二十年以上にわたるプーチン統治の経緯を振り返りながら、その手掛かりを探る。

目次

 プロローグ

 第1章 未来への希望
1 ウソの帝国  2 安全保障の担保  3 クリントンの戸惑い
4 新千年紀  5 西側志向  6 第二の故郷

 第2章 協調から敵対へ
1 バイデンの警告  2 ミレニアムサミット  3 米同時テロ
4 対テロ協調  5 薄れる信頼、募る不信  6 ミュンヘンの逆襲

 第3章 大国主義と国家統制
1 成功体験  2 ユーロマイダン  3 反撃の一手
4 聖なる半島  5 メディア統制  6 萎縮する社会

 第4章 強権統治と命の重さ
1 ブチャの惨劇  2 KGBの系譜  3 醜聞ビデオ
4 疑惑の砂糖袋  5 ノルド・オスト  6 他人の血

 第5章 裸の王様
1 踏み絵の安保会議  2 ミンスク合意  3 強まる孤立
4 インナーサークル  5 利権と恩恵  6 三権分立の形骸化

 第6章 しぼむ大国
1 「独裁帝国」の表裏  2 歪んだ歴史観  3 論文の功罪
4 「裏庭」の離反  5 制裁のボディーブロー  6 侵攻の代償

 第7章 日ロ関係への視座
1 非友好国  2 ポスト・エリツィン  3 困難な言及
4 消えた東京宣言  5 シンゾーとの仲  6 袋小路の領土交渉

 エピローグ