内容紹介

良い会社、選ばれる会社へ!
人材獲得競争に勝ち抜き、働き手のスキル・能力を高め、花開かせるための考え方、実践的なアプローチを体系的に解説。

■本書は、働き手のスキル・能力の水準を高め、それが最大限発揮されるための仕組みづくりと、実際に応用するための進め方を体系的に解説した入門書です。
■著者は、新しい働き方であるスマートワークの実践にも詳しい企業の経済学の専門家です。
■本書は、人的資本経営の全体像が体系的に見渡せるように構成し、ビジネスの最前線で働く人々が応用できるように進め方についても解説しています。基本的な考え方と実践のためのアプローチが理解できます。
■企業の人事部門の第一線を担うスタッフから経営トップ、人事担当役員、さまざまな現場を担当するミドルクラス、学生の方々まで、人的資本経営の関心のある人すべてにとっての入門書です。

【本書の概要と特色】
<概要>
 本書は、さまざまな人事・雇用に関するキーワードを体系的に整理して、それぞれが人的資本経営のどの部分に位置づけることができるのか明快に示しています。
人的資本とは、働き手の能力・スキルと考えられます。そこで、能力・スキルそのものを向上させる「人的資本の水準向上」を人的資本経営の第一の柱にしています。このなかには、企業が行う従業員研修・教育訓練などの人への投資が入ってきます。

 これと並ぶ第二の柱が「人的資本の稼働向上」です。今ある能力・スキルの水準は一定として、それを最大限発揮させて従業員のパフォーマンスを高めるための手法です。本書では、従業員のウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状況)を向上させることで「人的資本の稼働向上」を実現するアプローチを提示しています。働き方改革、ダイバーシティ施策などもこの範疇に入ってきます。
 
 「人的資本の水準向上」と「人的資本の稼働向上」という人的資本経営の二本柱を下から支える役割を果たしているのが、「人的資本のインフラストラクチャー」です。ジョブ型雇用(職務が限定され、キャリアの自律性が担保される雇用形態)とデジタル化・AI(人工知能)などの新たなテクノロジーの活用がインフラの重要な構成要素です。

「人的資本の水準向上」「人的資本の稼働向上」「人的資本のインフラストラクチャー」という3つの取り組みを一体として企業のパフォーマンス向上につなげていくことを、本書では人的資本経営と位置づけています。

 人的資本については当初、「情報開示」に企業関係者の注目が集まりましたが、本書では、情報開示を、上記の3つの取り組みの成果として、投資家へのアピールを通じて資本市場からの評価を高め、企業パフォーマンス向上を補完、促進していく手段として位置づけています。

<特色>
 本書は、類書にない視点を提供します。
①人的資本について経済学の立場から、その水準と稼働の向上のために何が必要か包括的に論じています。各章末に設けたコラムでは、人的資本について経済学でどのような研究が行われてきたか、その系譜についても解説。人間の能力・スキルと労働・企業経営とのかかわり合いについて、より筋道立った深い理解が得られます。

②従来の雇用システムとの対比を行い、人的資本経営への移行を雇用システムの転換として捉える視点を重視しています。新卒一括採用・定年までの在籍を前提に会社のメンバーになることが大きな意味を持ち、人事部が職務・勤務地・残業などで強い裁量権を持つメンバーシップ型雇用を温存するのであれば、人的資本経営の推進は困難を極めることになります。人的資本経営を推進するのであれば、雇用システムをジョブ型雇用に向けて変えるように舵を切る努力が必要になります。

③ただ、雇用システムの転換には難しさもあります。そこで本書では、システム移行を円滑に進めるためのアプローチも解説しています。高い目標ばかりみていると挫折してしまうので、一歩ずつ地歩を固めながら進めていくためにはどのような方法論を採用すればよいか、本書では言及しています。

目次

まえがき

第1章 人的資本経営のフレームワーク
  1 なぜ、人的資本経営なのか
  2 なぜ、人的資本経営はメンバーシップ型雇用ではうまくいかないのか
  3 人的資本経営のフレームワーク
 <コラム1> 人的資本研究の系譜①古典派・新古典派における人的資本概念の萌芽

第2章 人的資本経営と雇用システム
  1 メンバーシップ型雇用
  2 ジョブ型雇用を理解する3ステップ
  3 ジョブ型雇用をめぐる誤解
  4 「ステルスジョブ型」の勧め
 <コラム2> 人的資本研究の系譜②ベッカーの人的資本理論

第3章 キャリアの自律性の向上
  1 社内公募に向けた取り組み
  2 手挙げ文化の浸透
 <コラム3> 人的資本研究の系譜③シュルツらの経済発展の視点

第4章 新たなテクノロジーの活用
  1 新たなテクノロジーの特徴と比較
  2 ICT・デジタル化の人的資本経営の影響
  3 人的資本経営におけるAI活用
  <コラム4> 人的資本研究の系譜④ミンサーを嚆矢とする賃金の計量分析とジェンダー格差への応用

第5章 自ら選択できる学びの仕組みの導入
  1 日本企業の従来型の研修システム
  2 リスキリングとは何か
  3 「カフェテリア型」研修による「学びの自律性」の向上
 
 <コラム5> 人的資本研究の系譜⑤ヘックマンによる非認知能力への着目

第6章 ウェルビーイング経営
  1 ウェルビーイングの定義と歴史的由来・発展
  2 企業経営の視点からウェルビーイングへの注目とその意義
  3 ウェルビーイングの具体的な指標
  4 ウェルビーイングをどう向上させるか
  5 ウェルビーイングと企業業績の関係
  6 健康経営から始めよう
 <コラム6> 人的資本研究の系譜⑥カッツらによるスキル偏向的技術変化への着目

第7章 パーパス経営
  1 パーパス経営とは何か
  2 なぜ、パーパス経営が求められるのか
  3 パーパスの策定とその浸透の方策
  4 補い合うパーパス経営とウェルビーイング経営
 <コラム7> 人的資本研究の系譜⑦人的資本理論への批判としてのスペンスのシグナリング理論

第8章 人的資本情報開示の考え方・進め方
  1 人的資本情報の開示はなぜ必要とされたのか
  2 「攻め」の人的資本情報開示とは
  3 情報開示の質を高める
 <コラム8>人的資本経営の未来①AIとの協働のゆくえ

第9章 人材獲得競争時代の「良い企業」に向けて
  1 定年まで同じ会社で勤め上げることを前提としなくなった若者たち
  2 従業員と企業の成長循環こそ新たな「良い企業」の代名詞
  3 成長循環に向けた相乗効果の実現
 <コラム9>人的資本経営の未来②人口減少・人手不足社会を超えて

第10章  経営者と人事部の新たな役割
  1 求められる経営者の意識変革
  2 変わる人事部の役割
  3 人事部の仕事はどう変わるか①――採用と異動・転勤
  4 人事部の仕事はどう変わるか②――評価と賃金システム
 <コラム10>人的資本経営の未来③さらなる女性活躍をめざして

参考文献 (人的資本経営の下、キャリアの自律性、ウェルビーイング経営、パーパス経営などがすべて結び付いている企業こそ「良い企業」)