優れたネットワーク図がある現場は、設計や運用などの業務をサクサクと進められる。そんな「仕事がはかどる」ネットワーク図をぜひ描けるようになりたいもの。そこで大好評書籍『 ネットワーク図の描き方入門 分かりやすさ・見やすさのルールを学ぶ 』の著者・萩原学さんに表現のコツを教わりつつ、記者が図の制作にPowerPointで挑戦した。その第1回。
ネットワーク図とは、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)といったネットワークの構造を表現する図だ。設計や運用の様々な業務に活用できる。
例えばネットワーク構成を変更するときに、ネットワーク図があれば変更による影響範囲を検討しやすい。図によって全体の構造を一目で把握できるためだ。
構造やノードの役割がよく分かる
書籍『ネットワーク図の描き方入門』(日経BP)の著者である萩原学さんによれば、「仕事がはかどる」ネットワーク図には3つの特徴がある(図1-1)。1つ目は、ネットワークの構造やノード(ネットワーク機器などの構成要素)の役割を理解しやすいこと。どこに何があるのかが一目で分かり、業務で注意したいポイントなどをすぐに読み取れる。
2つ目は、業務に必要となる情報を過不足なく盛り込んでいること。必要な情報が盛り込まれていない場合は論外として、不要な情報が盛り込まれているのもノイズになり、使い勝手を下げる。
3つ目は、適度な大きさで閲覧しやすいこと。自社のネットワーク全体を網羅した巨大な図よりも、要所ごとに分割してあったほうが実務にとって使いやすい。
目的に応じて4種類を使い分ける
ネットワーク図を描き始める前に、図の種類を確認しておこう。萩原さんは書籍で4種類の図を紹介している。「全体概要図」「論理構成図」「物理構成図」「物理・論理合成図」――である(図1-2)。これらを目的に応じて使い分ける。
1つ目の全体概要図はネットワーク全体を大まかに描き出す図だ。情報システムの要件を満たすために必要なネットワーク機能を整理する目的で主に利用する。
2番目の論理構成図は、ネットワーク機器やコンピューター同士がどのように通信するのか、論理的なネットワーク構造を示す図である。一般に、業務要件や必要なネットワーク機能を整理した後、設計フェーズで作成する。
整理した要件をIP(Internet Protocol)通信の仕組みでどのように実現するのか、図を使って検討するわけだ。論理構成図は運用フェーズでもよく使う。例えば通信トラブル発生時に、図を参照しながら影響範囲を確認する。
3番目の物理構成図は、ネットワーク機器やコンピューターといった機材の設置場所や設置方法を示す図だ。機器の機種名やインターフェース、ケーブルの規格や長さなどの情報を盛り込む。論理構成図で検討した論理的なネットワークの構成を、現実の環境でどのように実現するのかを検討するために作成する。
最後の物理・論理合成図は、物理構成と論理構成の整合性が取れているかどうかをチェックするための図。萩原さんが独自に作成した図である。
VLAN(Virtual LAN)▼1やサーバー仮想化▼2といった仮想化技術を導入した組織のネットワークでは、論理構成図と物理構成図の「見た目」が異なる。2つの図を見比べるだけでは、整合性が分かりにくい。物理構成図を構成する各ノードの論理構成を把握しやすくするための表現方法として、萩原さんはこの図を考案したという。
無料で多機能なツールもある
ネットワーク図を描く際は何らかの作図ツールを使う。ここでは3つ紹介しよう(図1-3)。
1つ目は、英JGraphの「draw.io▼3」。Webブラウザー上で動作するクラウド型のツールだ。
無料ながら本格的なネットワーク図の作成に堪える機能▼4を備える。米Cisco Systemsのネットワーク機器などのアイコンが標準で用意され、図をすぐに描き始められる。『ネットワーク図の描き方入門』に収録されたネットワーク図は、萩原さんがdraw.ioで描いたものだ。
2つ目はMicrosoftのプレゼンテーションツール「PowerPoint」だ。図形の描画機能をネットワーク図の作成にも応用できる。
多くの人になじみのあるツールで、操作方法を新たに習得する手間が少なくて済む利点がある。ただしネットワーク図の作成に役立つ機能は、draw.ioや後述の「Visio」より限られる▼5。
3つ目のVisioは1990年代から続く老舗の作図ツールで、PowerPointと同様にMicrosoftが販売する。大規模なネットワーク図に必要な機能をそろえるデスクトップ版を利用する場合は、年間サブスクリプションの「Plan2▼6」を契約する必要がある。
以下、第2回では萩原さん流の「仕事がはかどる」ネットワーク図を描く手順を紹介する。それを基に記者がPowerPointを使って論理構成図の作成(第3回)と物理構成図の作成(第4回)に挑戦する。
PowerPointを選んだのは、多くのユーザーがすぐに使えると考えたためだ。記者が作成するネットワーク図のアイコンは、萩原さんの書籍と同じもの▼7を使う。
物理的につながっている1つのLANを、複数の仮想的なLANに分ける技術。
1台の物理サーバー上に、仮想サーバー(仮想的なサーバー環境)を複数構築する技術。
draw.ioが稼働する基盤のURL(Uniform Resource Locator)はhttps://app.diagrams.net/。以前に利用していた「draw.io」のドメインは、セキュリティー上の理由などから使用を停止した経緯がある。
コードを書けるエンジニアにとっては、非公式ながら米Microsoft(マイクロソフト)のコードエディター「Visual Studio Code(VSCode)」内でdraw.ioを呼び出せる拡張機能がある点も魅力といえる。draw.ioのネットワーク図を参照しながら、機器のコンフィグをVSCodeで編集するような使い方ができる。
例えば機器同士のリンクを表す「ヒモ(線)」が交差する箇所を識別しやすくする表現手法の1つである「ジャンプ」(第2回で解説)を、自動では描画できない。
2026年1月末時点の料金は、1ユーザー当たり月額2248円相当。Plan2以外では、クラウド版だけを利用できるサブスクリプションのメニューが2種類ある。
アイコンのデータは書籍系デジタルメディア「日経BOOKプラス」からダウンロードできる。URLはhttps://nkbp.jp/ncb20738。書籍を購入しなくても利用できる。アイコンを改変しないなどの利用条件を守れば、商用利用も認められている。
[日経クロステック 2026年3月3日付の記事を転載・改題]
[出典:「日経NETWORK」2026年3月号 pp.24-26]
萩原学(著)、木村博之(監修)/日経BP/3300円(税込み)

詳細はこちら>>日経BPセミナーナビ特設ページ



