それまでバラバラだったマーケティング理論を体系化し、「R・STP・MM・I・C」と呼ばれる「戦略的マーケティング・プロセス」をつくり上げたコトラー。その偉大な業績を『 マンガ 経営戦略全史〔新装合本版〕 』(三谷宏治・著/星井博文・シナリオ/飛高翔・画)から抜粋してお届けします。
31歳 ケロッグ・スクールでマーケティングを教えはじめる
36歳 『マーケティング・マネジメント』でマーケティングを普及させる
91歳 『マーケティング・マネジメント〔第16版〕』をケラー、チェルネフと共同で出版
聖典『マーケティング・マネジメント』
●「事業とは顧客の創造である」と看破したドラッカーは「マーケティングの目的は販売を不要にすることである」とも言っています。マーケティングという複雑な活動のもっとも優れた定義として、今でも使われ続けています。
●そのマーケティングの諸概念を世に広めたのが、ノースウエスタン大学ケロッグ・スクールのフィリップ・コトラー(Philip Kotler、1931~)です。彼の書いた『マーケティング・マネジメント』は1967年に初版が刊行されて以来、数年に1回の改訂を経て、今や第16版が刊行され、世界中の学習者・実務者の聖典となっています。
●彼がまず目指したのは「マーケティングの体系化」でした。ゆえに、この本に載るマーケティングコンセプトは、必ずしも彼のオリジナルではありません。しかし、それまでバラバラだったマーケティング理論が体系化され、ゆえに広く普及したというのは事実であり、まぎれもなく彼の功績です。
戦略的マーケティング・プロセス
●またコトラーは、ケネス・アンドルーズが企業戦略プランニングのプロセスをつくり上げたように、「戦略的マーケティング・プロセス」をつくりました。それは「R・STP・MM・I・C」とも呼ばれ、次の5つのステップからなります。
①調査 → ②セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング(STP) → ③マーケティング・ミックス(MM) → ④実施 → ⑤管理
●STPは、市場を自分が有利なように分割(セグメンテーション)し、標的とする市場を決定(ターゲティング)し、競合に対してどんな差をつける(ポジショニング)のかを決めることです。マーケティングは(そしてビジネスは)STPに始まりSTPに終わるともいえる中核です。一方、MMはSTPを具体化させる段階です。さまざまなマーケティング手段を組み合わせるわけですが、いわゆる4P(※1)(製品、価格、流通チャネル、プロモーション)を基に考える場合が多いでしょう。
2つのマーケティング戦略の矛盾
●他にも、消費者および組織体の購買行動分析、プロダクト・ライフサイクル(PLC)戦略、競争的マーケティング戦略などが解説されています。いずれも強力なコンセプトで、事例研究による裏付けもあり、広く使われました。実はあとの2つは矛盾しているのですが……。
●1960年代、第2次世界大戦後の好景気の中、欧米(特にアメリカ)の企業は空前の繁栄を謳歌していました。バーナード、ドラッカー、アンゾフ、チャンドラー、バウアー、アンドルーズ、そしてコトラーたちのおかげで、1970年までに経営戦略論はほぼ完成したかのようでした。でもそうではありませんでした。世界恐慌が企業進化(バーナード革命)を促したように、今度はオイルショックが、次の進化に企業たちを追い立てます。そして経営戦略論の最後の大物プレーヤー、ボストン コンサルティング グループ(BCG)とマイケル・ポーターが舞台に登場します。
シナリオ/星井博文 画/飛高翔 編集協力/トレンド・プロ
シリーズ累計30万部のベストセラー『経営戦略全史』の新装マンガ版が発売! ティール組織、両利きの経営、パーパス経営などの最新の経営トピックについても加筆し、新装リニューアルの大型合本版がついに発刊。
三谷宏治・著/星井博文・シナリオ/飛高翔・画/日本経済新聞出版/2090円(税込み)