7月25日に沖縄で開業する注目の新テーマパーク「ジャングリア」。プロジェクトをけん引してきたのは、再生の旗手、希代のマーケターとして知られる森岡毅氏だ。森岡氏率いる「刀」社内にあるのが、需要予測や意思決定の正しさを判断するインテリジェンスチーム。事業を手掛けるマーケターが「真実の番人」の異名をもつ同チームと密に意思疎通して戦略を練る。『森岡毅 必勝の法則 逆境を突破する異能集団「刀」の実像』(中山玲子著、日経BP)から一部を抜粋してお届けする(本文敬称略)。
高い精度の需要予測に不可欠なのが、基となる正しいデータだ。選ぶデータを間違えれば、導き出す予測も間違う。正しいデータをどのようにして選ぶのか。刀では需要予測を専門にするインテリジェンスチームが存在し、選ぶデータが正しいかどうかを常に問い続けている。
「USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)のEBITDA(利払い・税引き・一部償却前利益)マージン率は50%近くで、(東京ディズニーリゾートを運営する)オリエンタルランドより10ポイント以上高かった」
当時のUSJの需要予測の精度は約97%
森岡は、自身が在籍していた頃のUSJについて、こう証言する。USJがオリエンタルランドに比べて高い利益率を出せたのは、需要予測の精度が高かったからだ。森岡がいた頃のUSJの需要予測の精度は約97%。オリエンタルランドだけでなく、「米国のユニバーサル・スタジオも、これほどの精度はなかった」と森岡は自負する。
需要予測が正しければ事業の効率化が図れ、コスト削減につながる。利益率が高められるのは、無駄を極限まで省けるからだ。
正しい需要予測ができると、パーク内に配置すべきスタッフの数をはじき出せる。過剰に配置する必要がなくなり、人件費を抑えられる。飲食店や土産店も同様だ。用意するメニューの数や陳列すべき商品数を過不足なく用意できる。「品切れによる販売機会ロスだけでなく、在庫リスクが小さくなる。需要に費用をぴったり合わせることができる」と森岡は語る。

刀が誇るインテリジェンスチームが正しいデータを導き出すとともに、意思決定や事業の見通しが本当に正しいかを客観的に判断する。「『真実の番人』であることが私たちの役割」と同チームに属する河合桃子は言う。
需要予測が外れれば、すぐに要因分析
では、はじき出した数字をどう活用するのか。そこに、刀の強みであるチーム力が発揮されている。刀では、事業を担当するマーケターが、需要予測をするインテリジェンスチームと密に意思疎通をして戦略を練る。
「このエリアからの客数をあと1000人増やすためには認知をどれだけ増やせばいいですか」「このイベントに追加投資したら、客数はどれだけ伸びますか」――。
各担当がインテリジェンスの担当に尋ねるのは日常茶飯事だ。インテリジェンスチームの担当者は「そこまで投資しても客数増は見込めない」とブレーキをかけることも多い。予測を基に、その判断が正しいかどうかを問う。
よくありがちな、「(ハードやソフトを)つくって終わり」、「プロモーションを打って終わり」は、この場には存在しない。予測が外れれば、すぐに要因を分析する。刀が運営するテーマパーク「イマーシブ・フォート東京」の週間入場客数は、予測が外れると、翌週にはインテリジェンスチームがその分析を出してくる。
その分析でも、真実の番人である担当者とマーケターが議論を深めて検証し、翌日以降の予測やイベント・プロモーションなどに反映させて、より精度を高めていくのだ。
(つづく)
[日経ビジネス電子版 2025年1月17日付の記事を転載]
中山玲子著/日経BP/1870円(税込み)
