2021年12月、政治的混乱が続いたドイツで、ようやくショルツ連立政権が発足した。それまでの16年間、ドイツはメルケル政権の下で強い経済力を取り戻したが、一方で、欧州難民問題に象徴される欧州連合(EU)内部での亀裂や格差、米国(トランプ政権)との軋轢(あつれき)など、将来に向け様々な不安材料を遺(のこ)したまま、メルケルは表舞台を去った。メルケルの16年間をどう評価するのか。英国離脱など新たな局面を迎えるEUに、どのような影響をもたらすのか。未来を占うカギは? EU本部勤務経験があり、関連著書を多数持つ唐鎌大輔氏の新著『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日本経済新聞出版)から一部を抜粋、再編集して解説する。(写真:投票箱に投票を行う人――2021年ドイツ議会選挙、Zerbor/shutterstock.com)