もし、侵略国が占領した国を完全に自分のものにしようと考えた場合、どのようなことをすると思いますか? 今、ウクライナでは何が起こっているのでしょうか。新刊『世界を解き明かす 地政学』から、本文を抜粋、国際情勢を読む解くための知識をご紹介します。

もし侵略されたら何が起こるのか(写真:weerasak/stock.adobe.com)
もし侵略されたら何が起こるのか(写真:weerasak/stock.adobe.com)
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 日本にいると想像が難しいことですが、世界史から見ると滅亡の憂き目にあった国や民族は少なくありません。

 もし、ある侵略国が占領した国を滅ぼし、完全に自分のものにしようと考えた場合、どのようなことをすると思いますか?

 まずそれは旧体制下で国家を支えた文化や社会の柱を一つひとつ、壊していくことから始まります。その国で話されていた言語を禁じ、自分たちの言語の使用を強制します。書物を焼き、文化遺産を破壊し、従来の歴史教育も禁じます。

 旧体制を支えた知識人などエリート層も徹底的に弾圧します。王室や貴族社会があれば、すべて根絶やしにします。伝統を体現する血統は、被支配者がまとまる象徴になりうるためです。そして抵抗運動が起きないように、侵略国に忠誠を尽くす国民を送り込んで旧住民を追い出します。

 こうした蛮行は第2次大戦時にナチスドイツが大規模に実行しました。そして、今でもウクライナ戦争でロシアに占領された地域で起こっています。

侵略された国の国民は「二級市民」にされる

 占領地域での「ロシア化」の措置は熾烈(しれつ)を極めています。占領地の住民の入れ替えにとどまらず、ウクライナの子供を拉致してロシア化教育を強制するといった戦争犯罪にも及んでいます。それはウクライナの存在を認めないプーチン大統領の指示を受けた措置です。

 日本では独自の言語や長い歴史、文化の伝統や皇室の存在が国を形成する柱になってきました。海に囲まれて侵略されにくい位置にいたので、自国らしさ(アイデンティティー)を失うことを恐れずに外国の文化や技術を取り込めました。

 結果として日本人が外国文化を自国流にアレンジし、改善する余裕を生みました。島国の地理的な条件が、日本文化の豊かさをもたらしたといえます。

 この国に住む私たち約1億2000万人の生活にとって、現在の日本国が続くのが望ましいのは明らかです。歴史の常として、侵略された被支配者は二級市民にされ、ひどい扱いを受けるためです。

 日本政府は周辺国から領土や領海を守るため、防衛費を増やし続けています。ただ、現在の日本のあり方を守るためには、単に軍事力を高めるだけでなく、国を支えてきたソフトパワーが何だったか理解し、それを守るための目配りも求められています。

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田中孝幸著、日本経済新聞出版、1980円(税込み)