近年、就活が早期化し、学部の1・2年生のうちから始まる人も増えています。どんな準備をすればいいのかわかりにくく、とてもあいまいです。就活支援や組織開発、採用に詳しい専門家、そして社会人の先輩へのインタビューから、就活を乗り切るポイントを『日経ムック 日経業界地図 就職活動版 2026-2027』(日本経済新聞出版編/日本経済新聞出版)より抜粋・再構成してお届けします。今回は医師から宇宙飛行士に転身された米田あゆさんによる「キャリアに悩んだ時の考え方および親子で意見が食い違った際の対処法」についてです。
「正解」を探すよりも大切なこと
私が宇宙飛行士に挑戦することになったターニングポイントは、まず13年ぶりに実施された宇宙飛行士選抜試験の情報をキャッチできたことにあります。
私自身が幼い頃から宇宙飛行士に憧れを抱き続けていたこともありますが、周りの人にも自分の興味や好奇心を伝えていたことで、その情報を逃さず得ることができました。周りの人も巻き込んで情報のアンテナを張っておくことは、チャンスをつかむうえでとても大事なことだと思います。
もちろん、自分が本当に宇宙飛行士になれるとは思っていませんでしたが、「やらない後悔よりやる後悔」といわれるように、結果はどうあれ自分自身を見つめ直したり、自分を成長させたりする良い機会になると考えて、思い切って挑戦して本当によかったと感じています。

JAXA有人宇宙技術部門 宇宙飛行士運用技術ユニット 宇宙飛行士グループ 宇宙飛行士
就活でも望んでいた結果が出ないことがあると思いますが、それは必ずしも自分の能力だけの問題ではなく、その会社とのご縁があったかどうかという巡り合わせの問題でもあります。
私は幸いにも選抜試験に合格することができましたが、その結果以上に、試験の仲間やJAXAの方々との出会い一つひとつが楽しく、うれしい経験でした。結果だけに一喜一憂せず、そうした出会いや経験を楽しむという姿勢も大事かなと思います。
かつて私が医師としての進路に悩んでいた時に、信頼する恩師から「どこかに必ず一つの正解があるわけではなく、どの道を選んだとしても、それを正解にするのはその後の自分自身の行動だ」と言われたことを覚えています。
私もそうでしたが、就職や進路選びでは、どうしても「その時の正しい答え」を探そうとしがちです。でも、この恩師の言葉をきっかけに、正解を探すことよりも「今この瞬間に自分がやりたいことは何か」を問い、進んだ先で一生懸命取り組むことが大事だと気づかされました。
社会人のなかには、学生の時に思い描いた自分とはまったく違う自分になっているという方も多いと思います。それは決してネガティブなことではなく、就職して社会を知り、自分自身が成長していくなかで、若い頃には想像もできなかった「何者か」になっていくということ。
その意味でも、就職はゴールではなく、あくまでも通過点。「この道しかない」と可能性を狭めすぎず、自分の可能性を広げるきっかけにしてほしいと思います。
信じてくれる存在がいるから挑戦できる
保護者の方がお子さんに「こうなってほしい」と思うことは当然ですし、それが親の愛だと思います。その一方で、お子さんを包み込み、その決断を最後まで信じてあげられる唯一の存在もまた、やはり親なのだと思います。
私の親は、「どんな道であれ自分の好きなことをとことんやりなさい」と全面的に信じて応援してくれました。「自分を信じてくれる人がいる」という精神的な支えがあることで、子どもは思い切って未知の世界に挑戦できます。
もしも就職にあたってお子さんと意見が食い違ったときには、「こうなってほしい」という願いをぐっとこらえ、お子さんの選択を第一に尊重してあげてほしいですね。
お子さんも、保護者の方と意見がぶつかったときには、ぜひ粘り強く対話を続けてください。
他者を説得するには自分の「気持ち」や「熱意」を伝えることが不可欠ですが、一方で客観的な事実やデータを示すことも同じくらい重要です。こうした態度は、就活などで求められるプレゼン能力そのもの。親を説得できるほどのプレゼン能力が身につけば、どんな面接も乗り越えられる強みになるはずです。
就活をはじめ、何かに挑戦するには勇気が必要です。しかし、自分がチャレンジする姿を見て、「私も頑張ろう」と元気づけられる人が必ず周囲にいます。
自分が誰かにパワーを与えられる存在であることを誇りにして、ぜひ勇気を持ってまずは一歩を踏み出してください。
(第4回に続く)
文/葛原武史(カラビナ) 構成/黒田琴音(日経BOOKSユニット) 写真/JAXA
日本経済新聞出版編/日本経済新聞出版/1760円(税込み)

