働く意欲を失わせることばかりが起こる職場で、なぜハイパフォーマーたちは幸福そうに働き、成果を出し続けるのか。彼ら、彼女らに共通する働き方とはどのようなものなのか。『なぜ私たちは、仕事が嫌いになるのか。 ハイパフォーマーの隠された真実』(相原孝夫著/日本経済新聞出版)から抜粋・再構成して解説する。

「幸せな労働」を決める3つの要件

 私たちはどれくらい自分の時間を生きているのだろうか。もっと幸せになる働き方はないのだろうか。現代人はあえて疲弊する働き方をしていないだろうか。バーンアウト(燃え尽き)と静かな退職(会社を辞めずに必要最小限の仕事しかしないこと)の二者択一ではなく、持続可能な働き方はないのだろうか。

 まずはゴールイメージとして、「幸せな労働」を考えてみよう。職場で楽しそうに働く人と、苦しそうに働く人の最も大きな違いは自律性である。自らの意思で動くのか、やらされているのかの違いだ。

 自律的に働く人は、やはりハイパフォーマーに多い。パフォーマンスをあげ続けることで、信頼され、任されているので、自由裁量の余地が大きく、存分に強みを発揮し、高い成果を出して、評価され、承認され、好循環が回りやすくなる。結果、比較的楽しく仕事ができるようになるのだ。つまり幸せな労働の要件は以下のようになる。

(1)自由裁量
(2)強みの発揮
(3)成果の認識(自身での認識、他者による認識)

 一方、この3つの要件が満たされない場合、「不幸せな労働」となる。会社勤めをし、管理され、強みを発揮できず、指示通りに動く。成果は自分でも他者からも認識されない。成果はすべて会社に帰属する。

 ハイパフォーマーは、会社勤めながらも、成果は当人も、周囲にも認知される。場合によっては社外への発信の機会も得て、世間に認識される。こうして、幸せな労働を可能とする3要件がおおよそ満たされるのだ。プロフェッショナルとして、高いパフォーマンスにより、時間や裁量など、奪われていたものを少しずつ取り戻すことができる。

 賃金労働(会社勤め)のデメリットのほとんどは、成果をあげ、信頼され、任され、また一目置かれることで、解除される。労働が生活から離れるほど、労働者は仕事に嫌悪感を抱く傾向があるが、プロフェッショナルになれば、職人のように、生活から離れていた仕事が再び生活に近づいてくるのだ。

失敗を回避せず、失敗から学ぶ

 ハイパフォーマーに見られる共通点の一つとして、「失敗から学ぶ」が挙げられる。ハイパフォーマーは、仕事に多くを期待していないから、守りに入らずにチャレンジでき、失敗できる。成功よりも成長に焦点が当たっているから、失敗をむしろ歓迎する。「失敗からしか学べない」や「成功よりも失敗のほうが貴重な経験となる」、さらには「失敗というものはない」というようなことをハイパフォーマーはよく口にする。逆に、ハイパフォーマー以外の人から、こうした言葉を聞くことはほぼない。

 職人の場合、自分への期待水準が高いため、納得のいく仕事をしようとする、またはより高品質の仕事をしようとする。当然失敗も多く起こる。失敗を繰り返していく中で技を磨いていくのだ。

 しかし会社員の多くは、なるべく失敗しないように働く。企業によっては1つの失敗がキャリア上の命取りになる。失敗しないように働く場合、新しいことには手を出さない。経験したこと、前例があることにしか手を出さない。あるいは、高い目標には挑まない。確実に達成可能な目標しか設定しない。これでは、もちろん成長はしない。

 日本財団が2022年に、米国、英国、中国、韓国、インド、日本の17~19歳の人を対象に行った「第46回『国や社会に対する意識』(6カ国調査)」によると、「多少のリスクが伴っても、新しいことに沢山挑戦したい」「多少のリスクが伴っても、高い目標を達成したい」という回答の割合は、日本は他国と比べて際立って低く、いずれも5割を下回っている。

 日本人が、社会に出る前の段階からこのような意識なのは、企業が求める「失敗を回避する人材」を社会や学校が育ててきた結果なのであろう。

 ハイパフォーマーは、失敗を自分事として受け止め、学ぶことで行動を改善する。二度と同じ失敗は繰り返さず、適切に対処できるようになる。それにより自信が形成され、さらに困難な課題にチャレンジできる。失敗しても、再度失敗から学べる。

 そのようにして経験値はどんどん高まり、実力はレベルアップしていく。また、責任逃れをしない態度は周囲から好感を持たれ、信頼が高まり、重要な仕事を任されるチャンスにも恵まれるようになる。

身近な人を支援する効用

 ハイパフォーマーに共通するもう1つの特徴は、「身近な人を支援する」ことだ。私たち社会人は、1日の多く、そして人生の多くを職場で過ごす。家族以外で、職場の同僚ほど多くの時間を共に過ごす相手はいない。場合によっては家族以上かもしれない。そのため、職場の同僚との関係性はウェルビーイングに大きく関わる。

 同僚とポジティブな関係性があれば、ウェルビーイングを高く維持する助けになる。これは多くの調査結果によって証明されている。

ハイパフォーマーは「幸せな労働」を実践している(写真:mapo/stock.adobe.com)
ハイパフォーマーは「幸せな労働」を実践している(写真:mapo/stock.adobe.com)
画像のクリックで拡大表示

 反対に、ポジティブな関係が築けていない場合の悪影響はとてつもなく大きい。ストレスはどんどん蓄積し、私生活にも深刻な影響を及ぼす。

 具体的に説明しよう。営業職で、短期的な業績を重視する人の中には、顧客や上司には良い顔をする一方で、社内の人、特に身近な同僚をないがしろにするケースもまま見られる。実利ばかり追う人だ。そういう人は他者を、「自分の役に立つかどうか」のみで判断する。

 しかし、ハイパフォーマーは、まず身近な人を大切にするのだ。営業事務を担っている派遣社員にも感謝して丁寧に接する。それによる好循環を理解しているからだろう。身近な人を大切にするメリットの中でも、モチベーションの維持・向上はとりわけ重要性が高い。身近な人を助け、関係性が良くなれば、職場が自分にとって居心地のいい場となる。

 毎日顔を合わせる人たちとの関係が幸福度を決める。互いに信頼し合えれば、気分良く働ける。関係が悪ければ、たとえ無自覚でも、終始ストレスが蓄積される。

 身近な人への態度は即座に自分に跳ね返ってくる。ハイパフォーマーたちは生産性高く仕事をするためにも、気持ちよく楽しく働きたいと思っている。そのために一番重要なのは身近な人たちとの関係であることを知っているのだ。

最近は働く意欲を失わせることばかり。重要なのは、「反労働」を生み出す要因を知り、覆す方法を知ること。ヒントは結果を出し続ける人にある。人事・組織コンサルタントが、3000人のハイパフォーマーを研究し発見した、「彼らの働き方」を解説。

相原孝夫著/日本経済新聞出版/1870円(税込み)