その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は村田朋博さんの『 超利益経営 圧倒的に稼ぐ9賢人の哲学と実践 』です。

【はじめに】 9賢人の哲学と実践に学ぶ

 本書は自動車企業に関する書籍ではありませんが、以下の自動車企業2社のデータから始めたいと思います。

 トヨタ自動車:販売台数1030万台、売上高45兆円、営業利益5.3兆円
 したがって1台当たりでみると、単価440万円、営業利益52万円

 フェラーリ:販売台数1.3万台、売上高60億ユーロ、営業利益16億ユーロ
 したがって1台当たりでみると、単価7000万円、営業利益2000万円

 トヨタグループは世界最大の自動車企業として、量産車から高級車まで、自家用車から商用車やトラックまで、ガソリン車から電気自動車や燃料電池車までと幅広い製品を提供しています。そして、日本の上場企業約4000社の営業利益の10%近くを1社で稼ぎ出す企業。日本を支えているといっても過言ではありません。
 一方、フェラーリは、申し上げるまでもなく最高価格帯に特化。「需要よりも1台少ない台数」を生産するといわれ、販売台数はトヨタより3ケタも少ないです。一方で、自動車1台当たりの利益はトヨタ車の40台分です。購入側が列をなして待っている憧れの車を作っている企業といえます。

 せっかくの機会ですので、テスラのデータも示します。2社の中間です。

 テスラ:販売台数181万台、売上高968億ドル、営業利益89億ドル
 したがって1台当たりでみると、単価800万円、営業利益70万円

 さて、これらの企業が象徴するように、どちらが優れているということではなく、ただ「違う」のです。どの企業がなくなってもさみしいことでしょう。世の中が多様であるべきと同様に、経営も多様であるべきと思います。もし誰もが同じ経営をしたら、彩りのない価格競争に帰結することでしょう。筆者の2冊目の書籍の題名は『経営危機には給料を増やす! 世界一企業をつくった「天邪鬼(あまのじゃく)経営」』(日本経済新聞出版)ですが、建設的な天邪鬼であることは、経営者には必須の素養と思います。
 本書で紹介する賢人経営者は、まさに多様性の9人です。おそらくその多様性に驚かれることと思います。

 ピアニストの賢人。建設的天邪鬼思考の賢人。数多の試練を乗り越えた理念の賢人。演出家の賢人。裸一貫の賢人。刃物にも怯まなかった賢人。自律機械企業を創りあげた賢人。「ブラック・スワン」を見逃さなかった賢人。「書を捨て」て最前線で率いる賢人。

 権力は甘美であり腐敗することも世の常で、合議制になることはやむを得ないのですが、本来、賢人1人がすべてを決定し、皆を導く企業が最も強いのでしょう。

 さて、本書の企画意図と構成です。
 筆者は誠に有難いことに30歳のころから賢人に「サシ」でお目にかかる機会が多くありました。これまでに、多くの、本当に多くのことを教えてくださった賢人に深く感謝し、それらの知見を広く知らしめたい(筆者だけではあまりにももったいない)、次世代を担う若手経営者に伝えたいと思っていたことが、本書の執筆を企画した最大の意図、目的です。

 以下、本書の構成を説明します。

〔第1章〕
 企業が(に限らず人も国家も)長期にわたり輝き続けることがいかに大変なことかを説明します。40年前、世界でも名の知れたコンサルティング企業の出身者らが独自の基準で抽出した「超優良企業」の候補のうち、なんと4分の1は破綻しています。筆者がアナリストとして担当してきた日本のハイテク産業もこの40年間で様変わりです。2024年に、かつて輝いていたいくつかの著名企業が人員削減を発表。50歳になって希望退職の募集に直面する社員の気持ちはいかほどでしょう。このような報道があるたびに、経営者の責務の重さを再認識させられます。

〔第2章〕
 前述のような困難を極める企業において、その経営で素晴らしい実績を残す賢人がいます。経営書で何度も取り上げられている経営者もいますが、本書では、少なくともその賢人度合いに見合うほどに認知されていない賢人経営者の思想と実践を紹介します(ロームの佐藤氏に続いて紹介する同社の疋田氏を除いて年齢順です)。
 ローム創業者・佐藤研一郎氏──ピアニストから経営者へ、ニッチを見極めた経営者。「僕はギャンブラー」として勝負に挑み飛躍。
 ローム元取締役・疋田純一氏──人とは違う、目から鱗(うろこ)発想の経営者。「天邪鬼経営」の概念を思いつかせてくれました。
 マブチモーター創業者・馬渕隆一氏──理念の経営者。一代で営業利益300億円企業を創りあげました。
 ヒロセ電機中興の祖・酒井秀樹氏──演出家経営者。30人の企業を営業利益300億円に飛躍させました。
 エーワン精密創業者・梅原勝彦氏──裸一貫で人生を切り拓いた経営者。小学校卒業と同時に工場で働き、その後独立、35年間の平均経常利益率35%という驚異の企業を創りました。
 ルネサス エレクトロニクス元会長兼CEO・作田久男氏──「最後の砦」経営者。破綻間際の企業を蘇生させ、その後の発展の礎を築きました。
 キーエンス創業者・滝崎武光氏──イデオロギーを捨て「自律機械企業」を創った経営者。高成長(創業来50年で売上高1兆円)、高収益(営業利益率50%)、高給(平均年収2000万円超)。
 ジョンソン・エンド・ジョンソン元代表取締役・大瀧守彦氏──「ブラック・スワン」を見逃さず、高収益事業をゼロから立ち上げた経営者。
 ミネベアミツミ中興の祖・貝沼由久氏──戦略と執行の経営者。「書を捨て」現場に出、光速の意思決定で企業規模を5倍に。

〔第3章〕
 第1章、第2章を受けて、この章では、これからを担う現経営者、次世代経営者への伝言を記します。

  • まず何より、社員が退職するときに「ああ、よい会社だったな」と言わせてほしい。
  • 人は「中期経営計画」では動きません。人を駆り立てるのは夢。夢を社員に示してほしい。
  • 社員にボルトさんと競走させないでほしい。「楽して」勝てる事業を提供してほしい。
  • 「うちの会社しかできない」事業を確立してほしい。
  • 凡人とは違う建設的天邪鬼発想で導いてほしい。
  • 「問題になってから解決」よりも、そもそも問題を起こさせないでほしい。
  • 社会が「ああ、あの会社ね」と認知できる暖簾(のれん)を確立してほしい。
  • いま、苦境にある企業の経営者には、世間をギャフンと言わせてほしい。
  • 最適経営者が自分でないことがありうることを客観視してほしい。
  • 産業を俯瞰して、自社のみならず産業全体を健全に、幸せにしてほしい。
  • 経営に時間の概念を持ってほしい。
  • 「不透明」と言わないでほしい。世界は透明でないから賢人が求められているのです。
  • 厳しく困難な事態にも、正しく導いてほしい。
  • 最後に。経営者として「爪痕」を残してほしい! 10年後に咲く花を植えてほしい!

 日本の1人当たりGDP(≒給与)は米国の40%にまで凋落しました。9賢人に学び、次世代を担う経営者や若者が、日本を再度輝かせてくれることを祈願します。

 最後までお付き合いいただければ幸いです。

注 トヨタは2024年3月期、フェラーリとテスラは2023年12月期。1台当たりは単純に売上高、営業利益を販売台数で割ったもの。自動車販売以外の収入もあると思われ、厳密ではありません。また、為替レートは、海外2社の1台当たり数値について、1ユーロ=160円程度、1米ドル=145円程度で換算しています。

【目次】

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