その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は中村真さんの『 世にもふしぎな法律図鑑 』です。

【はじめに】

「法律が決して万能ではないこと」を伝えるために

 「○○法違反で逮捕」や「××法に基づいて請求」など、あなたが日々テレビやウェブサイトで目にする刺激的な情報には、その後ろに必ず「法律」が見え隠れしています。ときにはSNS上で「この法律や判決はおかしくない?」「なんでこんな行為が許されるの?」 という、驚きやとまどいの声が上がることもあります。

 ところが、日常のそこかしこで法律に対して感じる不可解さや引っかかりも、忙しい現代人には一つひとつ丹念に調べて納得していくだけの余裕がありません。
 かといって、法律はただその場に存在しているだけであり、法律の方からあなたに歩み寄ってきてくれることはありません。結果として「法律がおかしい」「社会がおかしい」といったやり場のないフラストレーションを抱えたままになってしまいます。
 「どう考えてもおかしいでしょう? 誰かどうにかしないの?」という不信感の積み重ねで、法律(や法律家)に対して親しみではなく、警戒心を持っている方は多いはずです。

 この本は、社会に存在するそうした「ふしぎな法律」について、特に予備知識がない方にも法律のプロが持つ視点を短時間で簡単に知ってもらうこと、「ふしぎな法律」のおかしさや面白さ、正しさ、間違いを解像度高めに理解してもらえることを目指して書きました。
 読者の皆さんにとって、この本の内容を次のようなきっかけにしていただければ嬉しく思います。

・話題のニュースの背景をより深く理解すること
・SNS上でささやかれる言説に対し、一歩立ち止まって考えること
・少し変わった法律の生い立ちを知り、楽しみ、誰かに伝えること
・「おかしいな」と思うルールについて、調べ考える姿勢を持つこと

 一つひとつの疑問を詳しく見ていくと「なんだそうだったのか」と腑に落ちることもあるでしょうし、「やっぱりおかしいじゃないか」と憤りを新たにすることもあるでしょう。法律は決して万能ではなく、やはり堅苦しいものだと再確認するかもしれません。それでよいのです。法律とは本来、それを適用される人によって批判的に検討され続けるべきなのです。また法律家の全てが法律やそれによって生み出される状況の全てを歓迎しているわけでもありません。そうした「ふしぎな法律」を取り巻く実相を正しく知っていただくことは、あなたにとっても私にとってもとても大切なことです。

 この本で扱う「ふしぎな法律」には、民法や刑法、会社法など明文化された法律にとどまらず、過去の裁判所の判断により作られた考え方や、それらを取り巻く面白おかしい(あるいは不可解な)状況も含まれています。
 法律の解釈や判例の判断などは正確さを損なわないように配慮していますが、面白みを感じない小難しい部分については思い切って除いています(この世の全てにおいて、面白いということには価値があります)。
 また、図鑑にはできるだけ内容に沿ったわかりやすい絵が必要です。この本に掲載している絵は全て、弁護士である筆者が、わかりやすさを最優先して描いたものです(もちろん、いずれも実在の人物・団体とは一切関係ありません)。

 この本を手に取った方に、一人でも多く「ふしぎな法律」に親しみを感じていただければ筆者としてこれほど嬉しいことはありません。


【目次】

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