その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は村山幹朗さんと芹澤連さんの『 “未”顧客戦略 消費者の無関心から逃げない「習慣×記憶」の科学 』です。「本書の読み方」とともにお届けします。

【はじめに】

 本書は、「無関心な消費者」と向き合うための本です。

 世の中には「ファンを大切にしよう」「ロイヤル顧客を育てよう」と説くビジネス書やマーケティング本があふれています。しかし無関心層や浮動層に対するマーケティングアプローチを、大量のエビデンスに基づいて、定性・定量の両面から体系的に整理した専門書は恐らく本邦初だと思います。

「無関心」から逃げない

 なぜ、わざわざ無関心な客と向き合わなければならないのか? それは多くの商売において売り上げの約半分、あるいは将来の成長の大部分が無関心層の獲得によってもたらされるからです。例えば、ビジネスでは昔から「上位20% のヘビーユーザーが売り上げ全体の80%を占める」と言われますが、実際にデータをとってみると、上位20%の貢献は50~60%程度であることが少なくありません(Sharp, 2010)。むしろ80%もあることのほうが稀なのです(ビジネスが縮小してファンしか残っていない場合、集計期間をとても長く設定した場合、嗜好性の高いカテゴリーの場合など)。

 事実、消費財200ブランドを対象として、1万世帯を5年間にわたり追跡した近年の大規模研究でも、購入回数が5年間で5回以下の人が顧客基盤の8割、売り上げの4割を占めると報告されています(Dawes et al., 2022)。すなわち年に1回も買わないライトユーザーが顧客基盤の大半、かつ売り上げの半分近くを占めているということです。一方サービス業、特にサブスクリプション市場では売り上げの多くは既存客からもたらされます。しかし、そうしたビジネスであっても、将来の成長の大半は既存客のロイヤルティ向上ではなく、増分的な新規獲得によりもたらされることが分かっています(Binet & Field, 2018)。

 つまり、ファンやヘビーユーザーといったブランドに興味関心のある「既存客」がいるだけではなく、ノンユーザーやライトユーザーのようなブランドに興味関心の薄い「未顧客」も定期的に入ってきて初めて、“健全な商売”と言えるわけです。

 ただ問題は、「そうした無関心な未顧客とどう向き合い、どう獲得していけばよいのか?」という部分にあります。というのも、世の中で言われているところのマーケティングやブランディングは、基本的に関心層を前提にしたロジックになっています。例えば「一般客をロイヤル客に育てていこう」「選択と集中をすればうまくいく」「短期成果やROIを積み上げた先に長期の成長がある」といった言説・事例を見聞きしたことがあるかもしれませんが、残念ながらその考え方では無関心層は踏破できません。

マーケティングごっこ

 ひと言でブランドの成長といってもシェア拡大、販売数量の増加、利益率の伸長、ロイヤルティの向上など定義は色々あるかと思います。筆者ら自身、経営陣としてこれまで様々な事業に携わってきました。うまくいったこともありますし、それ以上に失敗も重ねてきましたが、いずれの成長ゴールに対しても客数(浸透率)の増加は“必須”です。あるいは筆者らの経験以上に、数々の実証研究がそのことを物語っています。詳細は本文を読んでいただくとして、ここで認識を新たにしていただきたいのは、顧客育成やロイヤルティの醸成、選択と集中、ROIの最大化などは獲得の代替手段にはならないということです。

 マーケティングではよく「顧客を維持する」「離反を防止する」という話が持ち上がります。ですがマーケティングには、企業が直接介入できること(変数)とできないこと(定数)があり、上記の2つの話は定数側の性質を強く持ちます。つまり自社の商品やサービスを買わなくなったり、他の競合ブランドにスイッチしたりすることをマーケティングで自由自在に止められるわけではないのです。例えば離反については「リテンションダブルジョパディ」といって、ブランドの浸透率に対して必ず一定の割合で発生することが知られています(Sharp, 2010)。満足度や好意度などとは関係なくそうなります。

 仮に割引や特別オファーのような力業でいくらか維持したとしても、優良顧客がずっと“優良”でいてくれる保証はどこにもありません。例えば先に、上位20%の売り上げ貢献は80%もないという話をしたわけですが、「ある年の上位20%がどれだけの間、上位20%のままでいてくれるのか?」という話もあるわけです。これを消費財で調べると年で50%くらいになります(Baldinger & Rubinson, 1996; Romaniuk & Wight, 2015)。つまりブランドのへビーユーザーやロイヤル客というのは、「1年程度で半分が自然に入れ替わるもの」だということです。

 古くからマーケターは無条件に「長期客」を神聖視する傾向がありますが、そもそも長期客であるほど利益率が高くなるとは限りません。それどころか、実際に確かめてみると期間と利益の相関は0.2程度、かつ大半の顧客は時間経過と共に利益率も低下するという有名な報告があります(Reinartz & Kumar, 2000)。なぜそうなるのか。まず長期客は価格に敏感でコストパフォーマンスにも厳しい半面、顧客でいる期間と利用額はほぼ関係ないか、むしろ短期客のほうが高いこともあります(East et al.,2006; Reinartz & Kumar, 2000/2002)。次に「長期客は推奨で新しい顧客を連れてきてくれる」みたいな話もありますが、実証研究では期間と推奨もほとんど関係ない、あるいは期間が長くなるほど推奨は減ると報告されています(East et al., 2005; Verhoef et al., 2002)。

 一方、コスト面に目を向けると、維持コストは短期客も長期客も大して変わらず、同じ売り上げを生み出すために必要なコストも有意な差はないそうです(Reinartz & Kumar, 2000)。「新規獲得は既存顧客を維持する5倍のコストがかかる」のような話もありますが、獲得コストはカテゴリーやブランドの規模、市場の成熟度などにより変わってきます(Gupta & Lehmann, 2003; East et al., 2006)。というか仮に5倍かかるとしても、それが限界費用なのか平均費用なのかで結論が変わってきます(Pfeifer, 2005)。限界費用で5倍なら確かに維持を優先すべきですが、平均費用なら何倍だろうが関係ありません。

※ 平均費用は現在の顧客1人を獲得または維持するために費やした平均コスト、限界費用は今からもう1人増分的に獲得または維持するために追加で必要となるコスト。平均費用を比較したところで何も言えない(Pfeifer, 2005)

 このような、様々なカテゴリーにおける複数の研究を整理すると、長期客になるほど価格に敏感で単価も下がる一方、同じ売り上げをつくるためのコストは短期客や一見客と変わりません。従って期間と利益の関係は下降トレンドになりやすく、しかもそんなに都合よく新規客を連れてきてくれるわけでもない、というのが実情のようです。いずれにしても、長期客と利益率の同一視は過度な単純化であり、大半が「そうだったらいいな」という企業の願望に過ぎません。これは筆者らの経営者としての感覚、および分析者としての経験とも合致しています。

ロイヤルティの死角

 こうしたことを知らずに、「ターゲットを絞り込んで一般客をロイヤル客に育てる」といった世界観のままマーケティングを続けていると、各施策のマージナルリターンが減少していきます。ロイヤル客だろうがヘビーユーザーだろうが、同じセグメントを対象にしている限り効果は収穫逓減するからです。短期的には効率的に見える戦略でも、長期的には成長の限界を招くことがあるわけです。これは特に売り上げの踊り場に差し掛かったブランドが陥りやすい罠の1つで、筆者らは「ロイヤルティの死角」と呼んでいます。

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 既存客は購入意向や推奨意向が高く、予算が少額なうちはROIも良いので、パフォーマンスリポート上はうまくいっているように見えますが、これらの指標はデータの無関心層の割合が減れば“勝手に”高くなります。要はライトユーザーが離れてコアファンしか残っていなくても(コアファンしか残っていないからこそ)数値は高く出るということです。ただ、実際は顧客基盤が縮小しているわけです。それをなんとかしようとしてターゲットをさらに絞り込んだり、価値提案をとがらせたりするわけですが、「ダブルジョパディの法則」といって浸透率を伴わないロイヤルティには限界があるため、売り上げ減少に歯止めがかからなくなっていきます(cf. Sharp, 2010)。

 マーケティングでは昔からこの手の「理想と現実のギャップ」をよく目にします。しかし、ファンやヘビーユーザーといったブランドに対する関心層(既存客)のロイヤルティをベースに考えている限り、こうした負のループからはなかなか抜け出せません。つまり、消費者は基本的に無関心なものであることを認め、そこと向き合わない限り、いつまでたっても本質的な事業成長は成し遂げられない――それが数々の実証研究や再現研究、いわゆる「エビデンス」が指し示す現実だということです。

無関心を前提としたマーケティング思考とは

 「無関心」を思考のベースに置くと、消費者に対する期待値やマーケティングとの向き合い方が180度変わります

 例えば顧客のロイヤルティとリピート購入の関係について考えてみましょう。一般的に理解されているロイヤルティの働きとしては、ブランドに対する肯定的な態度が高まることで積極的な購買行動につながるというイメージかと思います。「そのブランドが好きだからまた選びたい」「他とは違って自分に合っているからそのブランドがいい」といった感じですね。しかし無関心を前提にすると、リピートの本質とは「別にどれでもいいけど、失敗したくないからいつものアレでいい」「面倒だから同じブランドで済ませている」だけかもしれないと気づきます。そして数々のエビデンスが指し示すリピートの本質とは、まさに後者のような習慣的で無意識な選択です。だからこそ、商売人は消費者の無関心から目を背けてはならないのです。

 こういう話をすると、少なからぬマーケターが「確かにそういう側面もあるかもしれないけど、だからといって我々にはどうしようもない」「むしろ好きで選んでくれている人の話を聞いたほうが有益ではないか」という反応をします。考え方は人それぞれですが、それは企業にとって都合の良い面だけ見て思考停止しているのと何が違うのでしょうか。プライベートなら「居心地のいい人だけで集まる」「自分のことを好きな人とだけ話したい」でも構いませんが、ビジネスでは通用しないのではないかと思います。

 「正論としては分かるけど具体的にどうすればいいの?」と思われたかもしれません。それをこれから学んでいくのです。消費者が無関心であることを前提としたマーケティングとはどのようなものかイメージしていただくために、本編で取り上げている実証研究や再現研究からのハイライトを次ページ以降にいくつか抜粋しました。

ハイライト 無関心な未顧客と向き合うための視点・思考

[1]誰がどんなマーケティングを行おうが、売り上げがすぐ大きく動くことはまずない。市場の構造的にも、成長の規則性的にも、我々の記憶や習慣の仕組み的にも「それが当たり前」であり、むしろそういう期待値で市場と向き合うほうがよい。

[2]マーケティングの教科書では製品、価格、流通、広告を「4P」とひと括りにするが、消費者の時間軸で見ると力点・作用点が異なる。

[3] マーケターは市場をスクリーンショット的な「静止画」として捉えがちだが、本来必要なのは静止画的なデータから“巻き戻し”や“早送り”ができる「動画的」な想像力である。

[4]需要が発生すらしていない、コンバージョンも見込めない「選択以前」の段階にこそ、マーケティング投資を行う本当の価値がある。

[5]特定時期の施策に反応する潜在顧客数には上限があり、そこを超えたらどれだけターゲットを絞り込もうが、インサイトを突こうが、価値提案を磨きこもうが、購買は起こらない。

[6]次に需要が発生したときにどのブランドが選ばれるかは、カスタマージャーニーの95%を占める「未顧客期間」にどれだけブランドを構築できたかによって大方決まる。消費者が市場に入ってきてからブランド選択を変えようとしても、ほぼ手遅れ。

[7]競合と、商品の良さやコストパフォーマンスの高さ、差別化やベネフィットの優位性といった「中身で勝負」ができるのは、購入機会全体の2割程度しかない。

[8]ブランドに「気づいてもらう」、商品やサービスの説明を「聞いてもらう」、機能や便益を「理解してもらう」、店頭で「見つけてもらう」といったセイリエンスは戦略であり、コストやリソースをかけて勝ち取る必要のある特権である。

[9]広告否定論者は「特定の時期に展開する施策で刈り取れる需要の総量は決まっている」という状況下で、さらに「需要が発生したときに自社ブランドに気づいてくれる人・思い出してくれる人も少ない」という二重苦をつくり出し、自らの首を絞めることになる。

[10]想起はゼロサムゲームではない。記憶は小売店の棚のような固定サイズの“パイ”ではなく、むしろブランド成長の鍵は「想起の非ゼロサム性」にある。

[11]考慮集合が形成されるプロセスこそ、未顧客の思考停止を解除する主要な介入点になる。

[12]伝統的なマーケティングの多くは「考慮集合に入った後の打ち手」に偏る傾向があるが、考慮集合内の評価を高めるより、考慮集合に入らない問題を解決したほうが、実務家はより多くのレバレッジを得られる。

[13]広告が効くのは主に考慮集合に入る“前”の「認知・想起段階」。逆に考慮集合に入った“後”の「選好・選択段階」に対しては限定的な効果しか持たない。

[14]一般的に、広告によって消費者の知覚品質に有意な影響を与えることは難しい。ターゲットを絞り込んで広告をたくさん見せたからといって、さらに特徴や効用を深く理解してくれたり、差別化ポイントやベネフィットの評価が高まったりはしない。

[15]想起と選択の間にもダブルジョパディが成立する。従って、想起を変えずに選択や購入だけ高めることは実際にはできない。

[16]「特定のセグメントに絞り込んだときに購入率が高い」からといって、「そのターゲットを重点的に攻めれば購入率がさらに高くなる」とは限らない。

[17]購入率の高い人をターゲットに短期的ROI重視の施策ばかり続けると、最初は良くても徐々に何をやっても効かなくなり、売り上げのベースラインが低下する。

[18]あるデジタル施策や販促キャンペーンのROAS(広告の費用対効果)が低いとき、その施策内の調整(ターゲット設定、メッセージやクリエイティブの出し分け、etc.)だけで改善できるROASには上限がある。これは分析者のスキルやマーケターとして経験の問題ではない。

[19]認知や想起のベースレートを拡大することで、短期施策の広告弾力性やCVR(コンバージョン率)が2~3倍に高まる事例も報告されている。結局、短期成果が欲しい場合でも、長期のブランド構築に投資するしかない。

[20]小さなブランドにとっては「想起の拡大」が重要であり、すでに大きいブランドにとっては「選好の強化」も重要となる。

[21]近年、デジタルネイティブな新興ブランドが「ダブルジョパディを無視して成長した成功事例」のように語られることがあるが、気のせいである。

[22]第一想起はブランド成長の先行指標ではない。また近年、第一想起にはKPI(重要業績評価指標)としての致命的な欠陥が色々と報告されている。

[23]“未”顧客戦略は消費者の記憶構造を軸に立案する。ブランド成長の先行指標としては未顧客の記憶構造の変化を追うべきであり、それを測定するための4つの「記憶指標」が提唱されている。


【本書の読み方】

 本書の前作にあたる『“未”顧客理解 なぜ「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?』『戦略ごっこ―マーケティング以前の問題』(共に芹澤 連 著、日経BP)はいずれも増刷を重ね、アジア各国で翻訳版が発売されるなど、多くの方に読んでいただく機会に恵まれました。

 『“未”顧客理解』では、買ってくれる人=顧客ばかりに目を向けて、既存客に選択と集中をすればするほどブランドの成長は遠のいていくという不都合な真実を明らかにしました。『戦略ごっこ』では、数多くの実証研究を引用しながら、ブランドを成長させるには未顧客の増分的かつ持続的な獲得が必要であることを解説しました。これらを問題提起編とすれば、本書は問題解決編にあたります。すなわち、ノンユーザーやライトユーザーを継続的に獲得し、事業成長へ結びつけていくための持続可能な戦略――『“未”顧客戦略』――の立案や評価に踏み込んでいきます。

 無関心層や浮動層、中間層を理解するにはどのような視座に立てばよいのか。どのようなアプローチがあるのか。何が分かっていて、何が分かっていないのか。どんなデータを集めて、何を基準に打ち手を考えればよいのか。どのような枠組みで効果検証すればよいのか。そもそも何から始めればいいのか。本書はそうした問いと向き合うときの手引書になるよう、執筆しました。

本書の構成

 「なぜ消費者は無関心なのか?」をひも解いていくと、必ず習慣の壁にぶつかります。想起も選択も結局は習慣に支配されているからです。しかし、習慣がどのように形成されていくのかを学んだことがある、ちゃんと理解しているというマーケターは意外に少ないのではないでしょうか。

 そうしたことを踏まえて第1章では「習慣研究の歴史や理論背景」を解説し、続く第2章ではケーススタディとワークを通して「習慣理解の方法」を学びます。これは消費者に対するインタビューや社内で行うワークショップ、AIによるデジタルツインの開発などにも応用が利く知識となります。

 第3章では、「習慣形成メカニズム」を確率論の視点から解き明かし、マーケティングサイエンスとして測定・管理できる範囲を定義すると共に、“未”顧客戦略の立案に不可欠なメンタルアベイラビリティ、フィジカルアベイラビリティ、独自のブランド資産(DBA)といった「市場ベースの資産」の概念を学びます。また混同されがちなロイヤルティと習慣の違いを解説し、購入意向が必ずしも実際の行動に結びつかない理由を提示します。

 第4章では、競合が築いた習慣をかく乱し、「未顧客の思考停止を解除する技術」を学びます。ライフイベントや季節性といった習慣の不連続性に着目して他社の習慣に介入するためのアプローチや、購入されたのに使われない「ハビットスリップ」の問題を防ぐ方法など、心理的な抵抗を和らげながら自社ブランドを生活文脈に組み込むための実践的な戦術を解説します。

 第5章では、「マーケティングの時間軸」について理解を深めます。例えばマーケティング4Pは消費者の時間軸で見ると作用点が違いますし、任意の施策に反応する潜在顧客には上限があります。また、ブランド選択の大半はカスタマージャーニーの大部分を占める「未顧客期間」で決まってしまうにも関わらず、短期成果だけを刈り取ろうとROIの高い施策ばかり繰り返し、現場を疲弊させる管理職が後を絶ちません。この章では「95:5ルール」や「ベースレートの誤謬(ごびゅう)」といった概念を学ぶ中で、そうした時間感覚のズレを直していきます。

 第6章では、「習慣や記憶のKPI」について学びます。伝統的なマーケティングでは「第一想起こそ正義」という通説が深く根付いており、ゴールとKPIがミスマッチを起こしているケースが少なくありません。そこでこの章では、人間の記憶構造や習慣特性を無視したKPI設定の問題点を浮き彫りにしつつ、助成想起と純粋想起の使い分け、第一想起の指標としての致命的な欠陥を指摘します。章の後半では、「何がブランド成長の先行指標なのか」も提示します。

 付録では、本書で学んだ理論を実務に落とし込み、“未”顧客戦略を組み立てる1つの解として、筆者らが所属するコレクシアの「カテゴリーエントリーポイント(CEP)を軸としたブランド管理手法と分析方法」を紹介します。一部、生成AIを消費者調査に活用する方法や、データやエビデンスをもとに自社ブランド専用の「育成・虎の巻」を構築し、AIアシスタントとして部内に整備するための取り組みなど、いくつか発展的な話題にも触れます。

お勧めの読み方

 本書はざっくり前半と後半に分かれています。前半では認知科学や定性分析を専門とする村山※1が習慣形成や記憶構造の基礎を解説します。後半は確率統計やデータサイエンスが専門の芹澤※2がエビデンスベーストマーケティング(EBM)の最前線へお連れします。構成としては入門的な内容から発展的な内容へ、徐々に難易度が上がるようにしています。特に第5章・第6章は、最新の実証研究をベースとして発展的な議論に踏み込んでいるので、EBMの専門書であるバイロン・シャープ教授の『ブランディングの科学』『マーケティングの科学』(共に朝日新聞出版)の読者でも読み応えを感じていただけると思います。そのうえで、以下のような読み方を推奨します。

「未顧客」や「エビデンスベーストマーケティング」に初めて触れる方
 カバーtoカバーで第1章から順番に読むことをお勧めします。

実務に関わる所だけ読みたい方/「理論はいいから打ち手を知りたい」という方
 第1章と第2章は先行研究や理論背景、自己分析的なワーク中心なので、前作『“未”顧客理解』『戦略ごっこ』の読者など、前提知識のある方は第3章から読み始めても構いません。

CEPの分析方法・活用方法を知りたい方
 “未”顧客戦略の中核を担うCEP の調査や分析、活用方法を知りたいという方は、第6章および付録を読んでから残りを読むという進め方でもOKです。

※1 株式会社コレクシア 代表取締役
※2 一般社団法人日本エビデンスベーストマーケティング研究機構(EBMI)研究主幹

【目次】

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