その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日はアクセンチュア株式会社 山川美佐代、福垣内孝造、紙谷淳、藤田哲朗、浅輪和哉、澤田拓也、市川雅也、淺枝薫、土田翔一(著)の『 Azureクラウド設計完全ガイド 最適なサービスを選定して組み合わせる 』です。
【はじめに】
本書は、オンプレミスやクラウドでシステム構築に携わってきたエンジニアの方々が、Microsoft Azureを使って設計、構築を進める上で知っておくべき「アーキテクチャ設計の考え方」を体系的に整理したものです。クラウドでは、ネットワーク、コンピューティング、ストレージ、セキュリティ、運用監視といった要素が密接に関わり合い、オンプレミスとは異なる設計判断が求められます。本書では、こうしたクラウドサービスであるAzureならではのアーキテクチャのポイントを、実践の場で役立つ「設計書」という形でまとめました。Azureに触れはじめた若手エンジニアの方でも、徐々に全体像がつかめるように、基本概念からアーキテクチャの原則、サービス選定の理由、運用設計のポイントまで、順を追って解説していきます。
近年、クラウドは企業ITの“特別な選択肢”ではなく、もっとも標準的な基盤として定着しました。各クラウドベンダーが多彩なサービスを提供する中、Azureもまた、あらゆる規模のシステムを支えるプラットフォームとして進化を続けています。
多くの企業では、これまで長年運用してきたモノリシックなシステムを見直し、クラウドを前提とした「モダンアーキテクチャ」への転換を進めています。マイクロサービス化、コンテナ化、イベントドリブン設計、SRE(サイト信頼性エンジニアリング)による信頼性向上など、求められる技術と判断軸はこれまで以上に広範囲になりました。さらに近年は、AI技術の急速な発展により、アプリケーション開発や運用自動化、業務効率化の全ての領域で、AI活用が現実的な選択肢になりつつあります。従来のクラウド活用に加え、AIを前提にしたアーキテクチャ設計やデータ活用基盤の構築も視野に入れなければなりません。
現在、Azureでは数百を超えるサービスが提供されており、その数は今も増え続けています。特にAI分野の進化はめざましく、最新サービスが日々強化されています。また、既に提供済みのサービスも継続的にアップデートされているため、「どのサービスを選べば要件に最も適合するのか」「どれとどれを組み合わせるべきか」と迷う場面は少なくありません。筆者自身もアーキテクチャ設計の際には、多くの事例や構成図を比較しながら、システム全体の構成を考え、各機能に最適なAzureサービスを選び、組み合わせることで最適解を作り上げてきました。Azureは柔軟で強力なサービス群を提供していますが、その分“選択と組み合わせ”の判断力が設計の質を大きく左右します。
本書では、アーキテクチャを考える際の視点を明確にするため、ITシステムを「インフラストラクチャ」「実行」「データ連携」「開発」「運用・監視」の領域に分け、それぞれの領域でどのAzureサービスを選択すべきか、どのように組み合わせればよいかを、具体例と共に解説します。さらに、急速に利用が広がるAIの領域についても、主要サービスの特徴や、AIを組み込んだシステム構成例を取り上げています。また、本書では、主要なAzureサービスの一覧と概要をまとめています。アーキテクチャ設計で利用するサービスはその一部にすぎませんが、Azureが提供する膨大なサービスの中から必要な機能を素早く理解し、比較検討する際の“辞書”としても活用いただけるはずです。
本書が、Azureの設計スキルを高めたい方、そしてITアーキテクトを目指す読者の皆様にとって、Azureのアーキテクチャ設計・構築の実践的な道標となれば幸いです。
2025年12月 執筆者一同
【目次】








