その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は元榮太一郎さん、上阪徹さんの『 世界は法律でできている 弁護士ドットコムの奮闘とこれから 』です。
【はじめに】
法律によって励まされ、勇気づけられ、
法律によって世の中を良くしようと奮闘する人たちがいる。
しかも、ベンチャー企業である。
その名を、弁護士ドットコムという――。
「困っている人を救いたい」。そんな思いからスタートした会社、弁護士ドットコムは、2025年に設立から20年を迎えました。
僕は弁護士ドットコムの創業者で代表取締役社長を務めている元榮太一郎です。
2014年に東京証券取引所マザーズ市場(現グロース市場)、2025年に同プライム市場に上場しました。弁護士の資格を持つ人がベンチャーを創業し、株式上場を果たすのは、日本で初めてのことでした。
僕が弁護士になろうと思ったのも、起業しようと思ったのも、元をたどれば、自分自身が大学生のときに法律に関するトラブルに巻き込まれたことが原体験としてあります。
それは交通事故でした。そして、困り果てた僕を救ってくれたのは、弁護士でした。
法律はなんてすごいんだ。弁護士はなんてすごい職業なんだ――。
こうして僕は、法律によって困っている人たちを救い、世の中を良くしていくことを自分の使命だと思うようになりました。
そして、僕の立ち上げた弁護士ドットコムには、かつて同じように法律トラブルに巻き込まれた経験があったり、学生のときに法律を学んでそのすごさに気づいたり、弁護士を目指して司法試験を受けたりしたことのある人たちが集まってきました。
弁護士ドットコムは、同じ使命を共有している人たちの会社なのです。
弁護士と困っている人をインターネットでつなぐ法律相談ポータルサイト「弁護士ドットコム」には、今や日本国内の弁護士の6割を超える約2万9000人が登録。無料で法律相談ができるQ&Aサービス「みんなの法律相談」の相談実績は累計147万件を超え、月間1717万人が訪れる国内有数のサイトになっています。
株式を公開した2014年の翌年にローンチした事業が「クラウドサイン」。紙と印鑑をクラウドに置き換え、契約作業をオンラインだけで完結させることができる日本初の電子契約サービスです。今や導入実績が250万社、累計送信件数が4000万件を超える国内トップシェアのサービスに成長しています。
他にもさまざまな事業を展開している弁護士ドットコムは、おかげさまで多くの方にご利用いただき、多くの方に知られる企業となりました。
しかし、2005年の創業時、今のような状況になるとは、誰も考えていませんでした。大きな法律事務所を辞め、「起業」という道に踏み出そうとしたときは、心配や引き止めの声ばかりでした。
そもそも弁護士が起業しようとすること自体が前代未聞でした。
それゆえ、実際に苦しい時期が長く続きました。実に8年にわたって会社は赤字が続きました。有償で弁護士と依頼者をインターネットでつなぐサービスは、「弁護士法第72条」に抵触するため、サービスをすべて無料でユーザーに提供し、赤字にじっと耐える時間が長く続いたのです。
しかし、困っている人はたくさんいました。「みんなの法律相談」には毎日多くの相談が寄せられ、それに対する弁護士の回答自体がコンテンツとなり、さらに多くの困っている人を引き寄せていきます。のちにこの蓄積された「みんなの法律相談」のコンテンツにより、弁護士ドットコムは収益の機会を得ていくことになります。
また、多くの困っている人が訪れるサイトとなれば、弁護士にとって潜在的な依頼者を見つける貴重な場となり得ます。ここをマーケティング活動の場として使っていただくために、弁護士の有料登録サービスもスタートしました。
弁護士ドットコムが順調に歩みを始めると、僕は自らの視野を広げ、社会変革を進めるための新たな挑戦として、2016年7月の参議院議員選挙に千葉選挙区から出馬しました。そして2022年までの6年間、参議院議員を務めたのです。僕は弁護士、上場起業家、国会議員という三足のわらじを履くことになりました。
創業以来、本当にいろいろことがありました。
「そんな事業がうまくいくはずがない。悪いことは言わないから、やめたほうがいい」と言われた中で、いかにして新しいマーケットを切り開いていったのか。
起業や会社経営の経験がない弁護士が、20年の月日をかけて、いかにして会社を大きくしていったのか。
いかにして人を集め、人を育て、みんなで成長していったのか。
国会議員の経験は、何をもたらしたのか。
これからさまざまな挑戦をする人のためにも、それを記録として形に残しておきたい。そう考え、生まれたのが本書です。
僕自身、語りたいこと、語るべきことがたくさんあるのも事実ですが、弁護士ドットコムが今あるのは、何より関わってくださった多くの方々のおかげです。それも、間違いのない事実です。
弁護士ドットコムに惹かれて集まってくれた社員をはじめ、さまざまなアドバイスをくださった先輩弁護士の皆さん、出資をしてくださった皆さん、僕たちのサービスを活用してくださっている皆さん、そして弁護士ドットコムを支えてくださっている、多くの方々に感謝をしています。
だからこそ、多くの方々から話を聞き、記録に残したいと思いました。
上場を果たした直後の2015年に、僕は『弁護士ドットコム 困っている人を救う僕たちの挑戦』(日経BP)を出版しました。このときの共著者であるブックライターの上阪徹さんに、僕をはじめ、弁護士ドットコムに関わるたくさんの人の話を聞いてもらい、それを一冊にまとめることにしました。
こうして前著から約10年ぶりに完成したのが本書です。
できればすべての関係者から話を聞きたかったのですが、取材時間が無限にあるわけではなく、残念ながら割愛せざるを得なかったエピソードもあります。
ただ、この本づくりを通して、僕自身にもたくさんの新たな発見や学びがありました。
上阪徹さんは、こちらの意図を本人以上に汲み取り、天才的な文章力でまとめてくださいました。また、日経BPの竹内靖朗さんは、約10年ぶりの出版企画に快く賛同してくださり、社内外の調整に心を砕いてくださりました。お二人には感謝しています。
そして、取材に協力してくださった多くの皆さまにも、貴重な時間をいただいたことに、改めて感謝いたします。
そして何より、弁護士ドットコムを応援し、支えて下さるユーザーの皆さま、取引先、株主の皆さま、役員、社員とその家族にも、感謝を申し上げます。
僕たちの経験が、少しでもこれからの日本に役立ててもらえたら幸いです。
弁護士ドットコム株式会社 代表取締役社長兼CEO 元榮太一郎
【目次】




