その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は株式会社SHIFTの『 SHIFT流 AI時代のソフトウエアテスト 』です。
【はじめに】
AI駆動開発が進展するなど開発現場でのAI活用が進む中で、その波はソフトウエアテストにも及びつつあります。AIによって今後、テストはますます自動化・自律化が進みます。
テストケースの実行や単純な網羅性チェックは、AIやツールが得意とする領域に移っていくでしょう。そうなったとき、テストエンジニアに問われるのは「テストの設計」と「品質の意思決定」に踏み込んだ思考です。具体的には以下のようなことです。
- どこにリスクが潜んでいるのか
- 何を確かめれば、プロダクトの価値と安全性を担保できるのか
- そのために、どのような観点でテストを設計して、どこまでを自動化し、どこからを人間が判断するのか
AIや自動化の技術が広がるほど、テストエンジニアの役割は「作業量」から「設計と意思決定」へとシフトせざるを得なくなります。本書はこの前提に立っています。
これは今に始まった話ではありません。テストエンジニアの中には以前から、テストや品質保証を軸にシステム開発やビジネスを確実に進めている人がいます。そうしたテストエンジニアの仕事ぶりを丁寧に見ていくと、「テストケースを何本こなしたか」より「どんな設計でテストを考えるか」に重心を置く、という1つの方向性が見えてきます。AIはその流れを加速させるというわけです。
株式会社SHIFTは、テスト専業で事業を展開してきました。本書はテストのエキスパートという立場から、AIによるテストの変革を見据えつつ、テストエンジニアがこれからのキャリアを形づくっていく足場の提示を目的としています。
本書は2019年9月に上梓した前書『駄目パターンに学ぶ 失敗しないソフトウエアテスト実践ノウハウ』(日経BP)をベースとしていますが、AIの進化に合わせて大幅に加筆修正しました。本書の柱となるテーマは、次の4つです。
1. ソフトウエアテスト・品質保証
テストの基本概念やプロセス、品質モデルを整理し、「バグ取り」ではなくプロダクトの価値を守る機能としてのテストを捉え直します。
2. ソフトウエアテスト・品質保証のナレッジ
個人の経験に閉じがちな知見を、組織としてどのように整理し、再利用可能なナレッジとして蓄積していくか。その考え方とパターンを提示します。
3. AI時代のテストエンジニアのあり方
コード生成やテストケースの自動生成を含むAIツールが普及する中で、テストエンジニアがどの領域で価値を発揮できるのか。「作業者」から「品質を設計する役割」へとシフトしていくための視点を整理します。
4. AIシステムのテスト
生成AIやLLM(大規模言語モデル)を含むAIシステム特有の振る舞いと品質特性を踏まえ、どのような観点・技法でテストを組み立てるべきかを解説します。
テストエンジニアという職種は、「開発の裏方」でも「人手が足りないときの穴埋め」でもなく、プロダクトの価値とリスクを設計し、品質の意思決定を支える専門職として位置づけるべきだ―。SHIFTはこう考えています。
もちろん本書で示すのは、あくまで筆者らの経験に基づく一つの見取り図であり、唯一の正解ではありません。読者のみなさまがご自身の現場やキャリアと照らし合わせながら、この先、自分たちのテストをどの方向にどう伸ばしていくかを考える材料として使っていただくことを意図しています。
本書を読み終えたとき、「テストケースの本数」で評価されるキャリアだけでなく、「どんなテストを設計し、どのように品質をつくっていくか」で勝負する道筋もあり得る、と感じていただけると確信しています。
2026年2月
株式会社SHIFT
【目次】


