その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は市原義文さんの『 いつも結果を出す管理職が必ずやっている80のこと 』です。
【はじめに】
この本を手にしてくださったあなた、初めまして。
私はシャイン&コーという会社を経営している市原義文といいます。
この本を読んでくださっているということは、あなたは「管理職になった」、もしくは「管理職だけれど自信を持てない」「管理職の仕事に興味がある」のいずれかに当てはまるのだと思います。
管理職の仕事が難しく思える理由の一つに、「ほかの管理職がいったい何をしているのかがいまいち分からない」というものがあります。管理職がどんなときに、何をどうすればいいのか、実は誰も分かりやすく系統立てて教えてはくれません。「自分で何をすべきか考えなさい」「あなたの管理職スタイルを自力で模索しましょう」「私の背中を見なさい」など、さまざまな助言はあるのですが。
でも、この忙しい時代に「そんな悠長なことは言っていられない」と思いませんか? この本には、これまで複数の会社に勤めて管理職や役員を何年もやってきた私が、世の管理職のみなさんを代表して「とりあえずこれをやっておけば大丈夫」という、管理職ならではのToDo80個をシーン別にまとめました。
ぜひすべてに目を通してほしいですが、「え、80もあるの? そんなにできない!!」と思った方は28~34ページの「管理職が最低限すべき3つのこと」をまず頭に入れてください。
もう少し頑張れそうだという人は、目次ページで☆マークの付いた項目から優先して読むことをおすすめします。
そして「できるようになった」と思った項目は、数字の上にある四角にチェックを入れていってみてください。チェックの数が増えれば増えるほど、管理職としての自信がついていくはずです。
さて、私のことを少し知ってもらうために自己紹介をさせてください。私は1990年に新卒で日産自動車に入社したあと、2000年1月には米国系大手コンサルティング企業に転職して約4年勤務。ローソンにヘッドハンティングされて約6年勤めて、合弁会社をつくり、その会社の代表取締役に就任しました。
東日本大震災の影響で会社を畳み、約8年間、プライベートエクイティファンドの投資先にマネジメントとして参画。3社で事業再生を手掛け、2020年4月に現在の会社を立ち上げました。
私が初めて課長職に就いたのは米国系大手コンサルティング企業に転職して2年目、33歳のときのこと。
そのあとも複数回の転職経験を重ねながら、次長、部長、本部長、執行役員、取締役などを経験して、一番多いときで約1100人の部下を持っていました。
現在の私の会社の事業内容を一言でいうと「マネジメント代行」です。あまり聞き慣れないかもしれませんね。
いわゆる経営コンサルタントは提案書を出すまでを仕事にしていますが、マネジメント代行は提案書の内容を実現するためにクライアント企業で役職をもらい、ある期間の中で成果を出していく仕事です。求められる成果を出し、クライアント企業が自ら課題を解決できるようになれば契約は終了。私は次のクライアント企業に移って新たな場所でマネジメントを代行する、という流れです。
私がこれまで携わってきたすべてのプロジェクトを通して言えることがあります。
それは、「その仕事に関わった社員が輝いたプロジェクトは間違いなく成功する」ということ。
社名の「シャイン&コー」は、社員(シャイン)を輝かせる(shine(シャイン))ために命を注ぎたいという思いで付けました。
実は、大きな失敗も経験しています。
私が携わった合弁会社はローソンを含めて大手企業3社からの出資を受け、ローソン店舗に設置されたデジタルサイネージを使って広告事業を運営する会社でした。
事業開始後、約1年が経過し、苦しいながらも単月黒字化が見えてきた2011年3月に東日本大震災が起きました。
この会社の主な収益源は広告料でしたが、節電や自粛の影響でデジタルサイネージに電源を入れることができず、収益を上げることができなくなってしまいました。
それでもなんとか事業再開を目指し、東京都の石原都知事(当時)と災害時の情報発信などで協業する協定を締結し、社会に役立つメディアになる段取りを付けたり、コンテンツ制作の受託をしたりと、事業の付加価値を高める取り組みを積極的に進めました。
そうやって手は尽くしたものの、最も大きな収益を望める広告営業再開にはまだ時間が必要でした。会社としてはその後数年間分の事業資金はありましたが、何度も株主と協議を重ねた結果、残念ながら事業を清算して解散することになりました。
この会社をつくるまでのローソンでの私のキャリアは、自分で言うのも何ですが、それなりに輝かしいものだったと思います。
でも、合弁会社を解散して社員としてローソンに戻ったとき、社内での私への風当たりは相当きついものでした。
それまでの私は若かったこともあり、また、苦労して経験を積んできたという自負もあり、ほかのメンバーにも自分と同じような努力をして結果を出すことを求めていました。
周りに対する要求レベルも高く、自分のやり方に付いてこられない部下を「結果が出せないのはやる気がないのか、それともやり方が分からないのか」と人前で叱責したことも……。
信頼できるどころか関わりたくもないリーダーだったと思います。
しかも「仕事はお互いにプロ意識を発揮してやるものだ」と思っていたので、そういう自分の振る舞いや考え方の何が悪いのかもまったく理解していませんでした。
そうして散々恨みと反感を買っていたであろうところに起こったのが先ほどの事業からの撤退でした。
「手のひら返しというのはまさにこのことか……」と思うほど、潮が引くように周りから人がいなくなりました。変な噂を立てられたり、社内の協力を得るのにも一苦労するようになったり――と、想像もしていなかったことが次々に起きました。
こうして手のひら返しを受ける立場になってみて、これまでの自分を振り返り「一人で成果を出してきた」と思うことがいかに傲慢だったか、また人からの協力や支援がどれだけありがたく不可欠なものかを痛感しました。
そんなときですら、それまでと変わらず「仲間」であり続けてくれた何人かとは、今でもつながっています。
こうした苦い経験から、人を大事にすることの大切さを理解したのです。
ローソン退職後もいくつかの会社の一員となり、アイデアを絞りながら新しい事業を立ち上げ、一定の成果を上げてきました。
確かに仕事ではアイデアや実行力が重要です。でも、それだけではダメです。成果を上げられる仕事の共通項は、その仕事が人(社員)を輝かせることができるか。それに尽きます。
この本は、そうした私のリアルな経験やさまざまな失敗から得た学びをベースに書きました。
この本に書かれていることを自分が新任課長のとき、もしくは課長に就任して数年以内に知っていれば、もっと違うキャリアを描けたかもしれないとも思います。
さて、今、日本では人材不足が加速し、育児や介護、リスキリングなどのさまざまな時間制約を抱えながら働く社員が増える中、その社員を管理する立場である管理職のあり方も大きな節目を迎えています。
多くの会社における経営層はいまだ古い固定観念に縛られている人が多く、長時間労働を前提とし、トップダウンで仕事を進める「管理職像」を捨てきれないでいますが、現場のリアリティーは目まぐるしいスピードで変化しています。
顧客や部下の価値観が多様化する中、日々の仕事を正確にこなしながらイノベーションを生み出していかなければならない管理職の肩には、これまで以上に大きな負荷がのしかかっています。
これから管理職になる人も、もう管理職になっている人も、ひとまずこの本を開いて必要な項目や気になるところから読んでみてください。
そうすることで部下にストレスなく働いてもらえ、上司にも喜ばれながら、自信を持って生産性高い毎日を送ることができるはずです。
私はこれまでのキャリア33年のうち、23年間を管理職または経営陣として過ごしてきました。
この本を執筆している今も、複数の企業のマネジメントとして従事し、さらにある小売業の取締役COO(最高執行責任者)として働くことが決まっています。
企業の現場で働きながら、役員以上の目線を持ちつつ、さまざまな管理職をつぶさに見ているからこそ書けるノウハウをすべて詰め込みました。
この本では、管理職の1つ目の階段である「課長」にフォーカスして話を進めていきます。
さて、あなたが既に課長ならば、課長に昇進することが決まった瞬間、どんな心持ちがしたでしょうか? 日本企業であれば、いろいろなしがらみの中、ようやく昇進にたどり着いたという人もいるでしょうし、外資系企業であれば、課長(=マネジャー)は待遇面などが大きく変わる憧れのポジションである場合もあるでしょう。
「管理職なんてつらいだけ……」という声もちらほら聞こえますが、そんなことはないと私は声を大にして言いたい。その理由は追々話していきます。
とにかく、課長になるというのは誰もが上れる階段ではないのです。だからこそ、引き受けることを決めたら素直に喜び、自分を大いに褒めてあげてください。
しかしながら、褒めるのは一瞬です。
そのあと考えてほしいのは、課長という立場になってからの自分を想像して、今までとは何が変わるのか、これから何をすべきかについてです。今までは上司を批判していればよかった立場でしたが、これからは部下に批判される上司の立場になります。ゲームのルールが180度変わるのです。
部下と課長の一番の大きな違いは「指示される側」か「会社側として指示する側」か、です。この違いを本当の意味で実感できるのは課長になってからなのですが、まずは自分が会社側に立ったことを理解しましょう。
課長になってからのあなたは、入ってくるさまざまな情報を会社側の立場で受け取り、会社側として意思決定をしていかなくてはならないのです。
こんなことをいわれて、急に不安になってきたかもしれません。
しかし、あなたを課長として昇進を決めた会社側の人たちは、あなたが課長としての役割を担える人材であると判断したのです。ですから自信を持ってください。課長としてしっかりと結果を出すことができれば、次の昇進への意欲も湧いてくるかもしれません。
「課長になったばかりなのに、もう次の昇進の話?」と思いますか?
でも、よく考えてみてください。
会社側に立ったことで、これまでは遠い存在であった部長や本部長、さらにその上の人たちの仕事ぶりが見えるようになってきます。「自分もあの立場になって仕事をしてみたい」「会社のかじ取りに大きく貢献したい」と思うようになったとしても不思議ではありません。
組織の中では昇進すればするほど、仕事は楽しくなります。当然、責任が増え、プレッシャーに押しつぶされそうにもなることもありますが、要はそれをいかに楽しめるかです。
部長の楽しさも、本部長の楽しさも、実際にその立場になってみないと分かりません。だからこそあなたには昇進の意欲を持ち続けてほしいと思います。
課長になると部下ができます(部下を持たない場合もあります)。部下を持つこともこれまでとの大きな違いの一つです。部下を持つことで確かに仕事は増えますが、部下の存在によって、一人ではできなかった仕事を組織で動かす面白さを知ることになるでしょう。
課長になってすぐには上司としての役割を十分に果たせなくても、上司の立場を理解し、その役割を果たそうと努力し続ければ、必ず素晴らしい上司になれるはずです。
また、部下がいない課長であっても、課長であることに変わりはありません。求められるミッションに対し、課長として結果を出すことです。きっといつか部下がやってくる日が来ます。そのときにすべきことは、今からでも準備できます。同僚や上司、他部署の人々とどのように関わり、どう振る舞うべきかを考えておいてほしいのです。
さて、次ページからは、私の手の内を全部明かしたこの本の目次をご覧ください。1つ目のToDoから順番に取り掛かるもよし、「今、私はまさにこのシーンに直面している!」という方はそのシーンのページから目を通すもよし。必要に応じてどんどんご活用ください。
また、私がよく聞く管理職の4つの壁「部下のやる気を引き出すのが難しい」「上からのプレッシャーがつらい」「責任は重いが給料は上がらない」「仕事が終わらない」に応えるページも目次に示しました。
あなたがこれから管理職として歩む旅路のお守りとして、この本を役立ててください。応援しています。
【目次】






