その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は小泉武夫さん、真藤舞衣子さんの『 サバの味噌煮は、ワインがすすむ 小泉武夫の「わが季節の食卓」 』。小泉さんの「はじめに」と真藤さん「おわりに」に加え、美味しそうな「口絵」の一部もお届けします。

【はじめに】

 日本経済新聞に「食あれば楽あり」を連載した最初は1994年4月であった。当初は3カ月の連載ということで始まったのだが、幸い読者からの反響もあって、それが6カ月となり、1年となり、気づいてみると30年が過ぎ、ついに31年目に入り、この間、一度の休載もなくまだ連載は続いている。これもひとえに日本経済新聞社のご理解と、読者の熱い支持によるものと感謝している。

 これまで連載してきた中で、著者として最も嬉しいことは何と言っても読者からの励ましの手紙やファックスなどである。連載が始まってから、優に2000通は超したがそれらの中には、この連載をまとめた本がいつ出るのか、という問合せが大変に多かったことである。実はすでに第1集『食に知恵あり』(1996年9月)、第2集『食あれば楽あり』(1999年6月)、第3集『小泉武夫の食に幸あり』(2002年10月)、第4集『小泉武夫の料理道 楽食い道楽』(2005年11月)、第5集『小泉武夫の美味いもの歳時記』(2008年12月)、第6集『小泉武夫の快食日記』(2011年2月)、と過去6冊が出版されている。しかし、その第6集以降から今年の2024年までの13年間はまったく出版されておらず、著者としてとても痛恨の思いであった。

 そこで本書は、30年の連載終了と31年目に突入という節目に、その記念としてこれまでの連載の中から67編を選び抜き、料理写真を添えたデラックス版を出すことになったのである。

 さて新聞の連載タイトル「食あれば楽あり」だが、多くの読者は「食(しょく)あれば楽(らく)あり」と読むことであろう。ところが著者の意図するところは「食(く)あれば楽(らく)あり」と読んでいただくことにある。格言の「苦あれば楽あり」(本意は「現在の苦労は後日の安楽のもとである」)に掛けたものであるが、その心は「食うこと」は生きることの最も基本的な行為であり、苦労してその行為を為すことは、それが「楽」(心が安らかで楽しいこと)に結び付くことにある。「一生懸命」を「一食懸命」に掛け、一食を得ることの尊さを懸命に苦労することで悟る心と同じである。

 そのような境地で、この連載はこれからも一食懸命になって、続く限りがんばる覚悟であるので、今後とも読者諸姉諸兄のご愛読を切望する次第である。本書の料理を担当いただいた料理研究家の真藤舞衣子氏と写真担当の竹内章雄氏、さらに本書出版のために尽力いただいた日経BP日経BOOKSユニットの長澤香絵氏に心から感謝するものである。

 2024年2月

小泉武夫


【おわりに】

 「まずはワインを一口コピリンコ、箸でムシャリンコ、そしてまたグビリンコ」とテンポの良い小泉先生ならではの表現が大好きで文章を読んでいると、口いっぱいによだれが広がり、お腹がグウグウとなり、さあ、これからつまみを作って呑もうかー! なんて気分に。

 発酵研究・料理家として普段から作っているのはもちろん発酵食を使った料理が多いのですが、どうしても「映え」を意識してしまったり、割と女性に受ける料理を作ってしまいがちです。
 小泉先生とは、山梨県の農政部の6次産業化事業プロジェクトでアドバイザーとしてご一緒させていただいたところからのご縁です。その後、発酵の学校に講師として呼んでいただくなど、先生のいちファンである私にとって「ああ、今まで頑張ってきてよかった」と思えるような関係が続き、自分の運の良さに「これからも日頃の行いは良くしようと思っております(笑)」と常々感じておりました。

 今回の出版のお話をいただいた時、涙が出るほど嬉しくて、その半面、おこがましくも私で良いのだろうかと、内心不安だったものです。
 ただ、その文章を拝読すれば、読めば読むほど作りたくなる料理の数々、小泉先生の豪快さの中に潜んでいる細やかな味覚のセンスには改めて驚くばかりでした。
 なんといってもサバの味噌煮は、普通なら赤ワインを合わせてしまうところ、合わせるのは白ワイン。なんと味付けにはケチャップを使うというところが、なるほど! 白ワインと合うポイントなんだなと。
 実際に作ってみて、これは本当にご飯を先に合わせるのはもったいない! なんならバゲットやカンパーニュと一緒にワインを楽しみたくなりました。

 小泉先生の厨房「食魔亭」から生まれる思い出の味を楽しめるのがこの本の醍醐味であり、昭和の懐かしい記憶に小泉先生ならではのエッセンスが入った料理と一緒に楽しむお酒は「楽しい!」の一言しかないのです。
 そして先生が食と酒のお話をされる時の笑顔ったら、本当に素敵で可愛くて、思い出しながらつられて自分も満面の笑みを浮かべてしまっています。

 美味しい話って幸せですね。

 今回写真を掲載している料理は近くのスーパーでも売られている材料で作れるものから選びました。レシピは小泉先生のエッセイを元に、1人や2人分の量としています。
 今回本書冒頭で取り上げた他にも、読みながら作れる料理ばかりなので、ぜひ挑戦していただきたいです。

 一緒に小泉ワールドを堪能しましょう!

 2024年2月

発酵研究・料理家 真藤舞衣子

【口絵】

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【目次】

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