その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は水田哲郎さんの『 対立・抵抗を解消し合意に導く 改革リーダーのコミュニケーション術 』です。

【はじめに】

 事業のグローバル化、顧客ニーズの多様化、働き方改革の要請など、企業を取り巻く環境が劇的に変化し、さらなる生産性の向上や新しい付加価値の提供が求められています。一方で、AI(人工知能)、クラウド、ロボティクスなど、情報技術が急速に進み、これまでにない新しいサービスや業務の仕組みが実現できるようになりました。
 このような背景を受け、業務改革やIT改革に取り組む企業が急増しています。業務改革とは、業務のプロセスや制度、組織、職場環境を大きく見直すこと。IT改革とは、情報システムの機能や基盤(インフラストラクチャー)を大きく見直すことです。
 一般に、業務やITの改革は、プロジェクトを編成して進めます。その際、発起人となる経営層は、改革の狙いや範囲と関係する事業部門やスタッフ部門からプロジェクトメンバーを選びます。そして、プロジェクトでの検討や準備、実行をけん引するメンバーを推進事務局に任命します。本書では、プロジェクトの要(かなめ)となる、推進事務局の中心メンバーを「改革リーダー」と呼ぶことにします。

 改革リーダーは、プロジェクトを成功に導くため、経営層や事業部門やスタッフ部門などの関係者から協力を取り付ける必要があります。そのためには、プロジェクトの趣旨や進め方、検討内容などを、関係者が理解、納得できるように伝えなければなりません。また、改革内容の検討や準備で必要な、関係者の持つ情報や意見をしっかり受け取ることも大切です。そして、プロジェクトでの検討内容に対して、関係者全員から十分な合意を得ることは特に重要です。
 改革プロジェクトでは、所属する部署や立場が異なる関係者の間での意見対立や、現行業務およびITに思い入れのある関係者からの抵抗が頻繁に発生するものです。それをそのままにしておくと、関係者から協力を得られず、改革は思うように進みません。改革リーダーには、対立や抵抗を解消して、関係者全員の合意を取り付けることが求められるのです。

 本書は、改革リーダーが持つべき3つのコミュニケーションスキル──改革推進側の持つ情報や意見を関係者に「伝える」、相手の持つ情報や意見を「受け取る」、プロジェクトの関係者の間で意見が食い違ったときに双方が納得する形で「合意に導く」──の豊富な実践ワザを、ストーリー仕立てで理解できるようにした解説書です。
 筆者は、30年以上の間、数多くの業務改革やIT改革のプロジェクトを支援してきました。担当した顧客企業の業種や業務、導入してきたITは多種多様です。しかし、すべてのプロジェクトに共通している点があります。それは、関係者とのコミュニケーションが成功の鍵になるということです。
 改革プロジェクトを支援する中で、筆者は、「伝える」「受け取る」「合意に導く」という3つのコミュニケーションスキルを合わせた「コミュニケーション術」を知識として習得して実践し、自分なりにノウハウを蓄積してきました。本書では、改革を進める上で、筆者が特に有効だと考えるコミュニケーションスキルの考え方と方法を具体的に解説します。改革プロジェクトに付き物の「対立」「抵抗」をいかに解消して合意に導けるのかの視点でコミュニケーション術を汎用的・実践的にまとめた内容は、他では学べないのではないかと考えています。

 本書の構成は以下になります。
 第1章「コミュニケーションの基本」では、コミュニケーションの定義や分類、改革リーダーがプロジェクトを成功させるためのコミュニケーションのポイントを解説します。
 第2章「伝わらないと始まらない」では、こちらの持つ情報や意見を、関係者が理解、納得してもらえるように伝えるスキルを紹介します。改革プロジェクトで伝えるべき情報や準備すべき情報、効果的にプレゼンテーションする方法を解説します。
 第3章「相手の言いたいことを正しく聞き出す」では、関係者が持つ情報や意見を受け取るスキルを紹介します。改革プロジェクトで集めるべき情報と集め方、欲しい情報や意見を抜け漏れなく効率良く集めるための質問法と聞き方の2つを解説します。
 第4章「合意はコミュニケーションの最高峰」では、改革プロジェクトでの検討内容に対して、関係者全員から合意を得るスキルを紹介します。会議の運営方法や議論の進行方法、対立や抵抗が発生した際に意見の相違点を明らかにして双方が納得する形で擦り合わせる方法を詳説します。
 第5章「コミュニケーション能力を発揮するために」では、コミュニケーションで留意すべきポイントを紹介します。対面とオンラインを使った非対面のコミュニケーションを使い分ける方法のほか、コミュニケーションを円滑に進める上で有効な日常の行為について触れます。

 興味を持って読んでいただけるように、全章にわたって架空の改革事例を使いました。3つのスキルを紹介する第2~4章では、それぞれの章で取り扱うスキルの理解を深めるための演習を出題しています。そして、第2~5章では、筆者が実際に経験した、各章と関係するコミュニケーションにまつわる経験談をコラムとして紹介しています。
 改革プロジェクトを推進するリーダーは、社内業務改革から基幹システム刷新、DX(デジタル変革)プロジェクトなど、企業のあらゆる取り組みの現場で、今このときにも奮闘しているのではないでしょうか。コミュニケーション術の中から気に入ったポイントやワザを、今日からぜひ実践していただければと思います。
 本書で紹介する内容が、少しでも皆さんのお役に立つことができれば、これ以上の喜びはありません。

水田 哲郎


【目次】

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